野生猫娘と“増幅”の力
薄暗い訓練場。
俺はまだ現実を受け止めきれていなかった。
――俺が共鳴者?
そんな馬鹿な。
昨日までただの無職、社会に弾かれた人間だったのに。
目の前では、猫耳の少女が尻尾を揺らし、鋭い瞳で俺を睨んでいた。
「人間、あんた……ただの雑魚に見えたけど」
彼女は牙を覗かせ、唇を吊り上げた。
「もしかして、面白いかもね」
◆
試験と称して彼女が跳びかかってきたとき――俺の胸の奥から、あの熱が走った。
光が弾け、彼女の動きが一瞬で速くなる。
「なっ……!? 身体が軽い……力が溢れてくる……!」
彼女は驚きに目を見開き、笑った。
野生の獣が狩りを見つけたときのように。
「ふふ……わかった。あんた、ただの人間じゃない。
――“増幅者”だ」
◆
スーツの女が腕を組みながら頷いた。
「そう。通常の共鳴者よりも強力。触れるだけで相手の潜在力を爆発的に引き出す……。珍しいわね」
俺は震える声で問う。
「それって……本当に“仕事”になるんですか?」
猫娘がニヤリと笑う。
「なるわよ。あたしを最強にしてくれるなら、あんたの価値は保証する」
俺はただの無職だ。
でももし、この力が“職”になるなら――。
逃げ続けていた俺にも、生きる意味があるのかもしれない。
こうして俺と猫耳の少女との、奇妙な訓練の日々が始まった。
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