表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Twinkle Summer   あたしが千紗だ、文句あるか5  作者: たてのつくし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/57

姉と弟 4

 さて、夏休みも残り少なくなってきたある晩のこと、家族三人で夕食を囲んでいた時に、母親がしきりに、最近千紗が痩せたようだと言い出した。


「ええっ、それほんと?」

痩せた、と言われただけで、顔がにやけてしまう千紗だ。

「嘘だあ。だってあたし、全然、ダイエットなんてしてないよ。本能のままに、食べたいだけ食べているよ」

てんこ盛りのご飯茶碗を掲げながら千紗が言っても、

「でも、痩せたわ、お姉ちゃん。そうは思わない、伸ちゃん」

と、母は譲らない。


「う~ん、確かにそう言われれば、姉ちゃんの顔、前より小さくなったかも」

「マジで?!」 

千紗は、喜びのあまり、ぴしゃっと音を立てて、口を押さえた。

「本当に、あたし、痩せて見える? 信じられないんだけど」

千紗は、うれしくて、そわそわする気持ちを抑えられない。

「痩せたわよ。試しに体重をはかってご覧なさい。減っているはずだから」

「まさかあ。でも、ちょっと計ってこようかしら」


 食事の途中だというのに、箸を置いて、いそいそと立ち上がった。洗面所で体重計を出しながら、夕食を半分くらい食べてしまったことに気がついたが、まあいいか、試しだからと体重計に乗ってみた。


「ええっ、うそでしょう」

驚いたことに、千紗の体重は、前回量った時より三キロも減っていたのだ。服を着て、夕食中なのにこれだけ減っているってことは、これは、どう考えたって痩せたってことだ。そうやって改めて鏡を見てみると、確かに頬のあたりの肉が少し減って、首がすっきりしたように見える。腕も細くなったような気がする。


「ぃやった~い!!!」

千紗は、鏡の向こうの自分に向かって、拳を突き上げて見せた。そして、ものすごい勢いでダイニングに戻ると、

「痩せてた! お母さん、あたし痩せてたよ!!」

と、ぴょんぴょん飛び跳ねながら言った。


「やった~、でもどうして? ダイエットなんて、すっかり忘れてたのに!」

頬に手を当て、手が付けられないほど浮かれかえっている千紗に、伸行があきれて

「ばっかじゃないの」

と言うと、それを耳にした姉が、小躍りしながらも間髪入れずにぺしっと弟の頭をはたきつけた。

「あんたにはわかんないの。お姉様の気持ちなんて」


 しかし、浮かれる千紗とは裏腹に、母は心配そうだ。

「考えてみれば、お姉ちゃん、お母さんが病気してから、勉強もお手伝いも、ずっと頑張っていたものね。だから痩せたのよ。でも、大事な時期に、体でもこわしたら大変だわ」

「なぁーに言ってんの」

千紗は、小躍りしながら言った。

「あたし、こんなに元気じゃないの。それにあたし、今までにないほど充実しているんだから。だから、心配いらないって。それにしても、こんなに食べているのにどうして? っていうか、うれしい。やったあ! 神様、ありがとう!」


千紗のあまりに陽気な喜びように、とうとう母も伸行も釣られて笑い出してしまった。

「もう、千紗ったら」

「うるっせーなぁ。ねーちゃんはほんと、アホだよ」

しかし、ひとしきり笑った後、母は真顔になって言った。

「まあ、お姉ちゃんが元気なら、それでいいけど。でも、絶対に無理はしないで。あと、食事はしっかり食べてね」

「オッケー。任せて」

千紗は、勢いよく箸を手に取ると、大好物のポテトサラダを、口いっぱいに頬張った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ