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Twinkle Summer   あたしが千紗だ、文句あるか5  作者: たてのつくし


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姉と弟 1

 翌日、千紗は、自分で決めた時間に目覚ましをかけて起きた。そして、祖母の用意してくれた朝食を食べると、後片付けは自分たちでやると祖母に言った。

「お祖母ちゃんがいる間は、お祖母ちゃんがやるわよ」

と言う祖母に、千紗はきっぱりと言った。

「大丈夫。あたしと伸行とで、毎日交代で片付けるから」


「え~、なんだよ、いつそんなの決めたんだよ」

のんびりパンを頬張っていた伸行が、抗議の声を上げた。

「何、言ってんの。あんた、昨日、手伝うって言ったでしょうが」

「言ったよ。言ったけどさ、何を手伝うかを、姉ちゃんに勝手に決められんのは嫌だ」

「お~ま~え~なあ」


「喧嘩するなら、お祖母ちゃんがやりますよ」

すかさず祖母が言い放つと、千紗が慌てて言った。

「それはだめ。だって、今、楽を覚えると、お祖母ちゃんが帰った後が大変だもん。だからやるの。ね、伸行」

「やるのはいいよ。やるのは。姉ちゃんに勝手に決められるのが、嫌なんだよ」

「わかったわよ。なら、朝ご飯の片付けはあたしがやる。で、あんたは何をやるわけ。言ってみ」


「そんな・・・、急に言われても・・・」

伸行は困ったように頭を掻いていたが、

「買い物係やる」

「それ毎日じゃないじゃん。ずるいじゃん」

「じゃあ、掃除」

「それだって、汚れが目立つときだけなんだから、毎日やる必要ないじゃん」

「じゃあ・・・じゃあ・・・」

と言った後、観念したように伸行が言った。

「やっぱり俺、姉ちゃんと交代で後片付けすることにする」


「わかったわ。じゃ、そう言うことにしましょう。お祖母ちゃんも助かるわ」

千紗と伸行の言い争いを遮るように、祖母が言った。そして、

「二人の言い争いを減らすのが、一番のお手伝いになるんじゃないの」

と一言付け加えると、さすがにばつの悪くなった姉弟は、顔を見合わせた後、俯いた。


 朝食の片付けを終えると、千紗は支度をして自転車で家を出た。

 あの日以来、朝食を食べ終えると、千紗も伸行のように、図書館に行くことにしていた。一つは、母の体がしゃんとするまで、こちらに留まることにしてくれた祖母の手前、かっこ悪いところを見せられなかったからだが、最初の日の午前中、図書館で勉強してみたら、自分でもびっくりするほど、集中して出来たからというのもあった。


 図書館の自習スペースは、いつも三割程度の机が埋まっており、それぞれが脇目もふらず真剣に机に向かっていた。その頑張っている後ろ姿と、千紗の気を散らすものが何もないこの環境が、千紗をまっすぐに勉強に向かわせるようなのだ。


 ここで、午前中の数時間をしっかり過ごすと、不思議に午後や夜もきりっと暮らせた。そのことに気がついた千紗は、一日を三分割してスケジュールを立てることにした。

 午前中は、とにかく図書館に来て、家にいたらやる気がでない英語や国語の長文読解、静かな環境が向いている数学の文章題などを解く時間に充てる。すると午後は、午前中にわからなかった部分を勉強し直したり、足りない知識を参考書で調べたりする作業に自然となった。


 夜は、英単語や漢字、歴史をはじめとする暗記物に当てる。合間に、買い物や洗い物などの手伝いも、気分転換になるので、積極的にやった。

 母の体調が回復して、祖母が帰った後も、千紗はこの良い習慣を続けた。これを続ければ、夏中、塾に通っているクラスメートたちに劣らない学力がつくはずだ、という確信に近い思いが、いまや千紗をしっかりと支え始めていた。




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