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キミだけが知らない物語り  作者: shiyushiyu


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第13物語り エンジェルウォー

 セチアの中心部は涼しい場所だった。

 森の中でもひときわ大きくて高くそびえ立つ木の建物。

 敵とカーズローはその中に案内された。

「敵様。正直に申しまして、この街道が出来上がったとしても、世界の数十分の一程度行き来が自由になったくらいです」

 深々とお辞儀をしながらミアが言う。

「そ。そうなのですか?」

 その言葉に驚いたのはカーズローだ。

 カーズローは世界情勢には疎い。

 世界がどんな形をしていてどこに何があるのか。さっぱり分からないのだ。

「そうだな。例えば敵が100を超す人数がいたとしよう。その内の1人を倒した感じだとイメージしてくれ」

「それは……途方もないですね」

 カーズローが目をクラクラさせる。

「だがそれでもやらなければならない。人類種が世界中のどこへでも自由に行き来できるようにだ。そういう意味では、ポイン帝国に自由に出入りできるのはかなりでかいな」

 ポイン帝国は、セチアを首都に持つ大国であり、エルフ族が納めている。

 エルフの長であるミアが協力すると言っている以上、ポイン帝国に人類種が自由に出入りしても問題ないということになる。

「それに、人類種が自由に行き来できる場所が少しでもある。というのが世界の認識になることが重要だ」

「仰ることは理解できます。しかしそれでも人類種が生き残る道は残されていない。と言わざるを得ません」

 ミアが残念そうな顔をする。

 それ程に、他種族と人類種とでは力の差も、領土の差も大きいのだ。

「知ってるか? ミア」

 そんなミアに敵は微笑む。

 全く絶望していなければ諦めてもいなかった。

 ミアは顔を上げる。

「この世界ってな。とてつもないでかいんだぜ? 誰も見たこともない場所がたくさんあるんだ」

「未開の土地に人類種を根付かせるおつもりですか?」

「まぁ最終的にはそうなるかもしれないけど、俺が行ってみたいんだ。誰も見たことない景色だぜ?」

 敵が目を輝かせて言う。

 その姿はまるで少年そのものだった。

「分かりました。私は敵様に身を捧げました。どこまででもお供いたしますわ」

 ミアが深々とお辞儀をした。


 周囲に軽く小さなポンという音がしたかと思うと、ガブリーが現れた。

「すごいねキミは。エルフを仲間にして未開の土地へ行く約束までこぎつけてしまうなんて」

 まるで、さすがは自分が選んだ人類種と言いたげな顔をしている。

「天使族だと?」

 男エルフが驚く。

「こんにちは。長耳さん」

「ガブリー」

 ガブリーが蔑んだ言い方をするのを敵が咎める。

「キミは知らないのかな? 長耳さんはワタクシ達天使族に匹敵する実力の持ち主なんだよ?」

「天使族にエルフ族が匹敵?」

 カーズローが驚愕する。

 魔法力であれば、天使族の上をいく種族はいないはずだ。

 それに加えて、天使族は独自の魔法を研究して開発していると聞く。

「エルフ族は重ね魔法が得意だからな。低級魔法も何重にも重ねることで強大な魔法に打ち勝てるわけだ」

 敵がカーズローに説明する。

「事実、数千年前に勃発したエルフ族と天使族との抗争では痛み分けだったと聞く」

「伝説のエンジェルウォーの話しですか? あれはおとぎ話では?」

 敵の言葉にカーズローは首を横に振るが、それをミアが更に否定した。

「伝説やおとぎ話に語り継がれるお話しは、得てして事実に基づいていることが多いものです」

「では、エンジェルウォーは本当にあったのですか?」

 今度は男エルフだ。

「天使の殺し合いと呼ばれたかつての戦は、ドッグマン族の領土だったパキラ帝国を壊滅させるほどの規模でした。そしてついに神人種や恐竜種、魔獣種といった自らの種族こそが最強と呼称している種族をも巻き込んでの大戦争へと発展しました」

 ミアの表情は悲しそうな表現をしていた。

 本当なら戦争や争いなどなくなればいいのに。そう願っているようにも見える。

「あの時は楽しかったねぇ。何匹もの長耳の耳をそぎ落としてその耳を喰能族に食べさせて、どれだけその能力を得られるのかを確かめる実験をしたなぁ。耳狩りなんてあだ名までついたっけ」

「貴様がエルフ族に代々伝わる耳狩りか!」

 その言葉を聞いた瞬間に、男エルフが血相を変えたが、ミアの手前攻撃をすることはなかった。

「ワタクシもまだまだ若かったのでね。血気盛んで戦いに飢えていた時代があったのだよ。今ではもう大人しいから安心してよ」

 全く反省している様子を見せないガブリーに、敵が本当にめんどくさそうな視線を向けるが、ガブリーは知らん顔だ。



 一方のカーズローは、伝説の話しが本当にあったことに驚き、ガブリーの実力がかなり上であることに驚き、エルフ族が天使族並に強いことを知って驚いていた。

「敵様がなさろうとしていることは」

 静かにミアが言う。

「このような戦争を世界からなくすことなのですよね?」

「あぁ。もちろん、阻む奴がいれば戦うがな」

 全員が敵とミアを見る。

「だからこそ。我々エルフ族は敵様のお味方になることにいたしました」

 深々とミアが頭を下げる。

 こうして改めて、エルフ族が敵たちの仲間に加わり、未開の土地へミアがついてきてくれることが確定した。


 風が静かに森を抜けて木々を揺らした。

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