負けられない戦い
なんやかんやで柏木さんと勝負することになったけど、いい感じにボコられて降参したら大丈夫だろ。幸い俺の能力で痛覚を取り除けば待ってるだけで終了だ。たしか、ここには治療系の能力者が保健室にいるらしいし、よっしゃあ、さっさと負けて家にかえるぞー。
「もしかして負けようとしてないか?」
急に相田が近づいてきた。
小声で囁くのきもいからやめて欲しい。
「そんな訳ないですよ。やるからには全力で望ませてもらいます」
くくっ、これに負けるだけで対策委員会に入らなくてよくなるし、三ヶ月の停学もなくなる。勝つ理由が見当たらへんわぁ!
「ちなみに負けたら停学な」
「は?」
何ほざいてるんだ。こいつ。
「当たり前だろ?負けるってことは委員会入れないってことだろ。委員会に入れなくなるイコール取引は破綻だ。じゃあ停学免除の話はなしになるよな」
「……でも、柏木さんの能力は【加速】なんですよ。普通に考えて負ける可能性が高いじゃないですか」
「大丈夫、大丈夫。お前ならなんとかなるって」
「えっ……ちょっ…」
言いたいことだけ言い終わって相田はそさくさと進んで行った。
あいつ、マジでふざけんなよ。なんとかってなんだよ!クソ、やばいってこれじゃあ俺の平凡な学園生活が終わる。やるしかないのか……
そうして、第三訓練室に無事到着してしまった。何かの手違いで使えないオチを期待したが、そんな都合のいいことはなく決闘が行われることになった。
「よし、柏木と榊は武器を選びにこい」
「はい」
武器?これ武器使うのか?おいおい、武器なんて使ったことないぞ。武道の経験とかもないし。マジで負けるって。
相田に言われるまま武器庫に着くと、そこには映画とかでしかみたことない中国の武器っぽいのとか、有名なAK47みたいな銃が壁を覆っていた。
「安心しろ。ここにある剣はなまくらだし、銃はゴム弾専用だ。当たっても最悪骨折だから保健室で直せるぞ」
いや、どこが安心できるところあるんだよ。痛覚切っても後々の生活に影響出るから怪我はしたくないんだけどなぁ。
柏木は武器を選ぶことを知っていたのか、悩む動作もなくナイフとハンドガンをひとつずつとり、腰に疲れるようにホルスターと鞘をつけマガジンを2個とりそのまま出て行った。
早すぎだろ。なんなんだよ、もう戦闘スタイル固まってるやつじゃないとあのスピードはないって。それよりだ。あいつはハンドガンを持っていったな。なんだっけグロックだったか、そんな名前の銃と同じような会場のやつだったな。マガジン内の弾はっと、十発か。まあまあ入ってんだな。俺もなんか銃持って行くか?いや、俺が銃持っても使えないしな。どうしたもんか。
「榊、まだか?」
うっせ、急かしてくんな相田。
「うし、これでいくか。準備できました」
俺は相棒を携えて武器庫を出る。
「お?それでいいのか?もっといいやつあるだろ?」
「いや、自分に合ってるのはコレっすよ。そう言えば勝ったらなんか賞品ってあります?」
「自信ありそうだな。んー、そうだな。もし勝てたら飯奢ってやるよ」
「マジっすか。頑張ります」
よっしゃあ。柏木に勝って焼肉奢らせたるわ!今日でお前の財布をスカスカにしてやるぜ!