能力持ちはイキリがち
「入学おめでとう。君たちは日本の未来を担う選ばれし若者たちだ!存分に学生生活を謳歌し、切磋琢磨してくれ!」
この世界に超能力が現れたのはおよそ半世紀前、世界で能力者たちの暴動が異能団体『エデン』によって引き起こされた時、人々は能力者の存在に気づいた。そして、それに対抗するべく隠れていた能力者たちが次々と現れもう超能力は創作のものではないと人々は理解した。
そうして、世界各国で能力者を抱き抱え自国の戦力を強化するために、日本では高校から異能科ができたらしい。まぁ、普通に考えて能力持ちと持ってない奴が一緒にいたらなんか事件とか起きそうだしな。安全面的にはいいんだろう。
しかしだ、入学式が終わってから教室に集まった訳だが。
「おい、ゴラァ!テメェ何ガン飛ばしてんじゃ!」
「あぁ?飛ばしてねぇーよ。お前こそ喧嘩あってんじゃねぇ!」
この光景を見て俺は一足先に教室からでた。ガイダンスまでの十分間トイレに逃げるため。
「……外はよくてもここは言うなら蠱毒じゃねぇか」
これからの学生生活に酷く不安を覚えた。けど思ったより、しょんべんが気持ちよく出たから気分は最高だ。
教室に戻るとまだあの二人が言い合いをしているようだ。それはどうでもいいのだが、実を言うと俺の席の真ん前で喧嘩しているもんだから、近づきにくい。しかし、俺はハンカチを机の中に入れてしまっていた。
背に腹は変えられん!いくっきゃないな。
そっと、俺は後ろから回り込んで自分の席に近づく。わざわざわかりやすく近づくなんてバカがすることだからな。バレないように目立たないようにするのが大事だ。
「おい」
よしあともうちょいだ。いけるぞー。
「おいって」
よしもう机の前に来た。ここまできたら安心だなぁ。さっさとハンカチとって手拭くかぁ。
「何コソコソしてんじゃって聞いてんだ!」
ボディに衝撃が走る。殴られたっぽい。
「何すんだよ」
俺を殴ったのは言い合いをしていた二人の金髪の方だった。俺の問いかけに機嫌を悪くしたのかさらに不機嫌そうだ。
「何すんだってなんだ?おい、お前が近づいてなんかしようとしたんだろ!」
おぉ……バカかこいつ、すぐ決めつけんなよ。はぁこうゆう問題児は問題児だけで集めて隔離しとけよな」
「お前誰に向かってバカって行ってんだ!」
やべ、口に出てたのか?そんなはずはないと思うけど。
「俺は相手の思考が読めんだよ!」
そう言って金髪は右腕を振りかぶった。
嘘だろ……金髪キャラが読心術持ってるのはナンセンスだわ。あー、クソ殴り返すにも俺は喧嘩に自信なんてないどころか、やったこともない。あっ、避けれん。
次は俺の左頬に拳が刺さる。
クッソ、イッテエ。あーもう、能力使えたらなぁ。いやちょっと待てよ。昨日読んだ説明書兼契約書には正当防衛に異能を使ってもペナルティの対象外にするって書いてなかったけ?いける、これだ!
俺は何発も殴られ、うめき声をあげながら考えついた。こうゆう時だけ能力に感謝だな。これがなかったらパニックだったわ。
俺は力を振り絞りなんとか金髪の肩に手をおいた。
「なんだぁ?命乞いかぁ?」
金髪はムカつく声で俺をあおるが、すぐさま何かに気づいたように慌て始めた。おそらく読心術的なやつで気づいだんだろう。
「――っ、やめっ」
静まり返っていた周囲がざわついた。目の前にいた問題児が糸が切れたみたいに倒れたからだ。
これが俺の異能、【魂の干渉者】自分もしくは相手の感覚を一時的に無くしたり、操ることができる。また、副作用がやばいが感覚の追加も可能だ。色々面倒な制約はあるが弱くはないと自負している。
それで自分で名付けた厨二病ネームがなければ完璧だった。なんで俺はこんな名前にしたんだ!ルビなんて振りやがって……そんな能力名誰もいないし、厨二病ぽいさえ全然いない。ましてやなんだソウルオブマスターってどうみたら魂の干渉者になんだよ!マジで恨んでる。一回しか改名できないこと決めた偉い人と、この俺を止めなかった役所の人と両親をな!
目の前に倒れている金髪の髪の毛を掴んで顔を上げさせる。こんなに理由もなく殴られた訳だから、俺だって殴っていいだろ。五発、いや3発だな。
そして、俺は空いている右腕を握りしめて慣れない動きをすることにした。すると、周りの生徒たちが俺が一発、一発殴るたびにまた静かになっていき、三発ちゃんと殴り終えた後には、教室には俺を被害者でなく、加害者だと言わんばかりの視線をするやつしかいなかった。
最悪だなぁ……これじゃ俺が悪いみたいじゃないか。
「ん?どうした。っておい何があった?」
気がつくと先生が俺を見ていた。いつのまにきたんだと思い時計を見ると、とっくにガイダンスの時間になっていた。
「とりあえず、能力を解除してもらおうか」
少しばかり威圧的に注意された。担任であろう教師は軍人だと言われても遜色ないほどに鍛えられた肉体を持っていた。おそらく生徒の暴走を止めるためにある程度強い能力者が教師をしているのだろう。
「はい、わかりました」
俺は大人しく地面に転がっている金髪から奪った身体操作の感覚を戻してあげた。
金髪は体を動かせるようになったことに気がつくと俺から後退りを始める。しかし、なぜか動きがおぼつかないためか、うまく下がっていかない。
「……とりあえず、そこの二人。榊圭吾と井戸正一は別室に来て話をしてもらうから。ついてこい」
マジかぁ、これからどうしよ……