9 知らんがな!
システムキッチン完備になり、異世界に来てからすぐに持ち込んでいたリアルでのキッチン用品も上手く収納出来て、大変快適になった。
確かに、食材を洗うのにシンク用としてた洗面台に持っていって戻ったり、高さが微妙な台の上でアーサーに支えてもらいながらの作業がよりアンの体力の負担になっていたようで、システムキッチンが完備されてからは、よりスムーズに料理することが出来た。
身長の問題は、システムキッチン自体の上げ下げよりも、アンの乗る床の上げ下げのほうが改修しやすいとのことで、自動ボタンで丁度いい高さに床を上げて、そこに乗って作業をするスタイル。これも大人になり背が高くなれば料理をする上では不要になるが、キッチンの上の高い棚のものを取り出す時に脚立代わりになるので、大人になっても重宝しそうだ。
ただ、今現在の子供の身長では、上の棚に届く床の高さまでにすると安全上よろしくない。なので、大人が乗れば上の棚に届く程度の昇降が出来るようになっている。
そのため、今現在は棚には何もおかず、キッチン横に収納スペースを設置して、簡単に出し入れしたり、ちょっとしたキッチンカートも置いて、出来た料理や材料を運べるようにした。
別案で、最近よく見る棚自体を下にグイーンと下ろすスタイルのものを設置すれば…との考えもあったのだが、
アンが「なんか落ちてきそうで怖い。引っ張り出す仕掛けがついてたらあんまり収納出来なさそう」との思いと、背が小さいからキッチンにすら届かない問題解消の為に、床が昇降する案が採用された。
本来の床自体を工事するのではなく、別取り付けの床を昇降出来る用に細工したので、工事期間も短縮され予算もそこまで高額にはならなかったが、双方の両親は、本来の床からいじっていいと言っていたが、なんというか立派な大理石を削るなんて勿体ない!とリアル思想のアンとアーサーが止めたので、別取り付けの床になった。
まぁ、これが逆に安全性に問題ありとなれば、再工事となり余計に手間も金もかかることになるので、最初から両親の案に乗っておけば…とも過ったのだが、その時はその時、それに子供の成長は意外と早い。という考えから開き直り、そのまま推し進めることとなった。
そして、システムキッチンが完成しての最初のごはんが前回冒頭の炊き込みご飯と具沢山味噌汁、酢の物に卵焼き、リアル自宅からの持ち込みの黒豆。というメニューだった。
今回だけは、流石に出資者の両親達にも食べてもらいたいとちゃんと大人4人分と子供2人分として作った。
なので、いつもより時間がかかり遅めの昼食になったのだ。
さぁ、今からやっと頂ける!やっと出来た〜!と両親四人とアーサーとアンで「いっただきま〜す!」と食べようとしたところ、
侍従が困ったような顔をしてこちらに恐る恐る言い出した。
「クララ・ラーク伯爵令嬢がお越しになっています。」
アン「食事中だし、公爵家の皆様もいらしてるのよ。先触れも無しに突然は無礼だわ。出直してって言ってちょうだい。」
侍従「そうなんですが…昼食どきはとっくに済んでるはずだしと引き下がらず、公爵家の皆様もいらしてるのでと伝えたら泣き出してしまって…」
全員「えええ…。そんなもん知らんがな!」
アーサー父ギルバート「ラーク家と言えば…」
サリー「そうよ、この前のジャック辺境伯のご令嬢に無礼千万した子達のリーダー格でお茶会ホストよ」
アン父マシュウ「子供のちょっとしたいざこざだろ?」
マリラ「そうね。でも、防ぐことの出来たトラブルだとジャック辺境伯はご立腹で出席を勧めた王様と王妃にやんわりとだけど『どういうことですかな?出る必要のないお茶会にわざわざ出向いた挙句、格下貴族に傍若無人になぜうちの娘が振舞われる必要があったのでしょうか』って静かにでももんのすごい激怒だって。」
「あれよね、リナ様はアンちゃんのおかげで楽しかったってウキウキで帰ってきて悪気なく全報告したら、あらら?ってなって詳細を護衛や侍女に聞いたんでしょうよ」とサリー。
するとマリラが「王家も影からの報告にビビったんじゃない?ジャック辺境伯からうちにすごい丁重な御礼状とご領地の特産品の珍しい栗と高級菓子と織物が届いたわ。」
マシュウ「7歳の子にあんまりなことはなぁ、まだ小さいしうちの子も知らず知らず迷惑かけることもあるやもしれんから、とにかく応接間に通して何か飲み物とお菓子でも出してあげなさい。」
「お父様!最初からそんな甘いことすると、あのアホクララは次もまかり通るとやりかねませんよ!」
マシュウ「だから、アンとアーサーがそれをちゃんと伝えるんだ。本来なら先触れも無しでは無理なことをね。」
ため息をつきつつ、アンは侍従に伝えた。
「シン。クララ様に40分ほどかかるとお伝えして。それと先触れもなしに来た事情を聞いてきてちょうだい。」
「それなんですが…ラーク伯爵夫人に怒られたようで、アン様があそこで辺境伯が侯爵レベルだと庇わなければ、リナ様をイジメただけで終わってたのに、バレずに済んだのにと…」
全員「はあああ〜!!!!!!?????」
両家両親「はぁぁ〜!!!!流石ロッテの娘だわ。見当違いも甚だしい…。アンが止めなかったらもっと酷いことになってたのに…」
アン&アーサー「帰って頂きましょう!」
全員一致「そうしましょう!」
はてさて、流石ロッテの娘とは…?
大好きな赤毛のアンから拝借してるアンの両親の名前やアーサーの父親の名前ですが、
グリーン家はグリーン・ゲイブルズから、マリラとマシュウは赤毛のアンの中では兄妹です。
そして、アーサーの父親の名前ギルバートは赤毛のアンではアンの天敵ギルバート・ブライス。アンの将来の夫です。なので、本当はアーサーをギルバート、アーサーの家をブライス家、アンの家をグリーン家にしたほうがわかりやすかったかもしれませんが、思いついたのが後でしたw。尚、赤毛のアンの本名はアン・シャーリー。アンを引き取った兄妹は、マリラ・カスバート、マシュウ・カスバートで、グリーン・ゲイブルズは家の名前です。そして、マリラとマシュウに引き取られたアンをアン・カスバートにせずに、アン・シャーリーのままでいさせたことこそが、カスバート兄妹のアンとアンの他界した本当の両親への敬意にも思いながら読んでいました。マシュウが亡くなる前夜にひとり夜空を見ながらアンが男の子と間違えられて家に来たのは単なる偶然ではないどうやら神の思し召しのようだ。アンは神様からの授かりもの。1ダースの男の子よりアンがいい。とつぶやきます。最良で最高の幸せの後の翌朝の落差に衝撃を受け、絶望からのその後の立ち直り方は大人になった今でも考えさせられます。
アニメはここで終わりますがシリーズが何作も出来上がる程の名作。作者のモンゴメリーは、いつ書いたのか忘れていた赤毛のアンの原稿を屋根裏部屋で見つけ、パーティーの支度中に何かを取りに来たことも忘れ、そこで見つけた自分の作品を無我夢中で読み漁り、世の中に出すべきとそこから奔走が始まり、赤毛のアンが世に誕生したそうです。