3 異世界と現世を行き来して
さて、異世界と現世と行き来することになってしまった二人は…
二人の家名変更しました。わかりやすく色分けの家名にしました。
バリボリ食べまくって、紅茶を飲んで「アールグレイだね」というアーサー。いや、宏樹…。
「ひろくん、アールグレイしかしらないやん!んで、アールグレイが好きってそればっかやん!wここでは色々な紅茶やコーヒーを嗜まないといけないかも。
だから、何でもアールグレイって言っちゃだめたよ。知ったかは恥かくよ!」
「大丈夫。俺、元々味覚は鋭敏だから、アールグレイじゃないのはわかる。
アールグレイ以外の銘柄やら味を覚えれば、ちゃんと言える。」
「本当かねぇ。あ〜でも、確かに味覚は鋭敏だったよね。変に濃い味を美味いとは謂わなかったよね。薄味でも出汁が効いてるのか好きだったよね。」
「あ〜・・もうお出汁の鍋が食べられないとわかったら食べたいよなー。」
「・・・ねぇ、寝たら異世界に来たじゃない。もう一度寝たら現世に戻れないかな?」
「そんな上手い話…いや、なんかこれだって非常識なことだし、
この際、どんなことも全部可能性があるって思ってるほうがいいかもしれん。」
そんな上手い話あるわけない…そう思っていたのに、
実際にもう一眠りして起きたら、そこは現世の寝室だった。
「んじゃあさ、寝室以外で寝てみたらどうなるだろう?」
夫の興味本位で、リビングで寝てみると異世界には行かなかった。
何度か繰り返して、なんとなくわかったことは、
異世界で時間や月日が進んでも、現世はこちらが意図してることが反映される傾向にあるということ。
つまり、夫ならば「会社は休めない」「ちゃんと休息したい」という気持ちが根底にあるので、異世界から起きたら出勤までにかなり余裕がある時間帯で日数が進んでなかったりするのだ。
ちょっと喉が乾いて夜中に起きた感じ。という具合だ。
なので、私も目が覚めたら、あれ私昼寝してた?というような程度で、日数がとんでもなく過ぎていたりはしていないのだ。
おそらく私の根底に「何日も日数が過ぎていて、その間に誰か連絡があってずっと音沙汰なかったら心配をかけてしまう、下手すりゃ既読にもならないからブロックしてると勘違いさせてしまう。言い訳も毎回効かなくなって、そのうち本当に呆れられて嫌われてしまうのは困る」
という、困るわぁ〜という本音があるので、そうはならないようになってると思われる。
だとしても、身体的な疲労はなくとも、あちらとこちらとで二重生活を送ってる感覚が強く、精神的、感覚的、脳的に疲労があって、
「そんな毎夜毎夜異世界に行ってられんわ!」と二人の考えは一致。
それまでは、リビングのソファで寝ていたり、二人が寝るスペースがないので、夫は自分の部屋のリクライニングチェアで寝ていたりしていたが、それも腰痛になるし、身体も疲れるので、休日に一念発起して、
引っ越し業者の手を借りて、部屋中の不要なものを片付けて、そこにリビングに置いていたものを移動させて、リビングには必要最低限のものだけにして、そこにフローリングゆえの底冷えがしないように高反発マットレスを敷き、その上に新規購入した布団を敷いた。
ベッドだと片付けられなくなるので、また異世界に移動出来なくなる日の為に、そして、元々布団で寝ていたので布団にした。
異世界だと自動的に豪華なベッドで寝ているから、布団の心地良さも味わいたい気持ちもあった
そんな対策を講じてまで異世界に行きたいのか?と言われれば微妙だが、
異世界にいると、現世では叶わなかった人生を送れるかもしれない。
例えば、子供。私達は子供が授からなかった。だが、あちらの世界で
もし、順調に成長したら、婚約者の夫宏樹=アーサーと異世界でも結婚することになる。そうなれば、ひょっとすればとも考えられる。
夫婦にとって子供は絶対ではない。そして、子供がいないならばいないで快適に暮らす為の別の選択肢もある。そのひとつが私達にとっては、異世界という選択肢も増えたのだ。しからみがないゆえに、こちらとは違う生き方をしてみたい。それとは別に純粋に毎回VIPな扱いを無料で受けられて、健康を気にすることなく好き放題食べても太らなくて美形なのだから、毎回バカンスに無料旅行に来てる気分になるので、気分転換でやっぱり異世界に来ちゃうのだw
それでも、しょっちゅう行き来してるので、現世の食事に未練が出ることはないと思っていたのだが、不思議なことに異世界では何日も豪華な料理が出てくるので、ちょっと食傷気味になってしまった。
そうなると、こっちに戻って食べたいものを食べればすむのだが、
都合よく寝れるわけではない。それにちょっと興味もあったので
こちらに戻ってきたときに、鍋道具と材料一式を異世界用に買い込んだ。
万一、異世界に持っていけたとしても、持って帰れない場合も考えての別途新規購入だ。
試しに寝室の枕元に一式置いてみた。カセットコンロも忘れずに。そして寝た。
ビバ!鍋!異世界に一緒に持ってこれた!やったぜ!
私と夫は狂喜乱舞して、早速カセットコンロを持ち出して、夫宏樹=アーサーの大好物のほんだし&めんつゆ鍋を作った。
最後は天かすとねぎたっぷりの半熟たまごの雑炊を作った。
なんと、格別か!同じ鍋でも異世界で作ると何故にこんなに美味なのだろう!?
その日以降、アーサーと私アンの家を互いに行き来して、鍋やらたこ焼きやら作りまくって食べまくったw
当然の如く、周りからは仲睦まじい可愛いラブラブな婚約者同士で、互いに溺愛が凄まじいと評判になった。
当たり前だ、中身は中年夫婦だ。
異世界に来たからと言って、中身や感性が変わったりはせん。
きっとそのはずだ。少なくとも私はそうだが、宏樹はどうなんだろうか?
その容姿に、異世界のことは後腐れないからと年相応になったら、
アーサーとしての自我が目覚め、女性奔放になりはしないだろうか?
アーサーはこの国の筆頭貴族である公爵家嫡男。
アーサー・フォン・グリーン。泣く子も黙る王家も一目置くグリーン家という位置づけらしい。それでイケメンならば、愛人でも第二夫人でもいいから、お近付きになりたいと考えるもんらしい。こっちのお貴族は。
なんじゃそれ?
そして、私は公爵家の次の位である侯爵家令嬢
アン・フォン・レッド。レッド家の長女。
父親同士がアカデミー時代からの親友で、さらに母親同士も親友で、母親同士がアカデミー時代に街中に出かけた際に、厄介なナンパにあい、困っているところに、同じく二人で遊びに来ていた父親同士が颯爽と助けたことをキッカケに、お礼にと改めて食事に誘ったところ、
お互い異性の趣味がきちんと住み分けされていたこともあり、面倒な三角四角関係になることなく、両思いになり、グループデートをしたりと、
それはそれはとても楽しい青春な初恋アカデミー生活を満喫し、卒業と同時に結婚し、妊娠した年も同じだった為に、生まれる前から互いの子供が男女なら、例え同性でも第二子第三子に異性が生まれたら婚約しようと決めていたらしい。
ややこしい派閥争いとか、腹を探り合うような関係にならずに、安心の信頼信用で縁を結びたいとのことからもだが、こんなに仲良しこよしな両親だから、女の子ならやはり子供も安心の親御さんに任せたいと言う親心もあり、双方の手掛ける事業が被らないことも大きかったらしい。
とにかく、恵まれ過ぎてる環境な私達。
心配などないはずなのだが、とにかくアーサーのスペックは高く、国内一優良株な男性になることが約束されているという存在。
普通なら心配にならないのだが、異世界の人間性に染まっていかないか…
それゆえ…と心配にもなるのだった。
宏樹は濃い味も好きですが、あっさり味も好きで、ほんだしの味付けが好物なのです。羽奈は健康のために減塩や糖質制限を心がけていますが、宏樹がほんだし好きなので、下手にアレコレ味付けするよりもシンプルのほうが美味しくて楽チンなので、鍋は殆どほんだしとめんつゆの鍋です。