14 とんでもチートパート2と念願の演奏
二人同時に眠ったからかこちらの世界に戻ってきた。
まだ土曜日の昼間、仕事は明日も休み。宏樹はホッとした。
羽奈は、まだダルいと言いつつもフラフラと歩いて次にあちらに行くときは絶対にもっていくものとして、意識を込めて持っていきたいものに触れていった。
もうチートも過ぎるな!なのだが、こっちの世界で思いを込めて料理の下ごしらえをしたものを冷蔵庫に入れて、あちらの世界でモニターでボタンひとつで出し入れ出来る理由が暫くは謎だったのだが、ある時羽奈は思ったのだ。
「まさか、あっちで仕上げて食べるんだ〜とか思いながら作ってるから出し入れ出来るってこと?寝室に持っていきたいものを持ち込まなくてもあちらのモニターで表示なのはまさかの思い?念じたから?」
と、推理した羽奈は、ずっと結婚してからはなかなか弾くことが出来なかったエレクトーンを試しにあちらに持っていけるか試してみようと思ったのだ。
何せあちらなら騒音問題が解消されるし、なんなら羽奈は楽譜がなくても聞いたことのある曲は、特に弾きたい!と思うほど気に入った曲は、あらかた弾くことが出来るのだ。
今回のようにやたらストレスが溜まった時など、あちらの家なら、城だから!お城だから!大音量大爆音でこっちの世界の羽奈世代の懐かしい曲を弾き倒してやろう!昔はなんで今ほどストレスが溜まらなかったのか?実家では自由に弾けたのだ。
もちろん、ヘッドフォンをして階下に迷惑にならないように吸音マット等対策をしてだ。
なのに、結婚をしてからはもっと弾ける住居環境が恵まれていたはずなのに、いつの間にか宏樹の部屋と化し、宏樹のモノだらけになり、エレクトーンの上までご丁寧に色んな物資が所狭しと…エレクトーンと傾斜部分がなにか作業する上で丁度いい具合らしく、すでに撤去不可能な状態。
羽奈が入社から1年間コツコツ貯めて購入した100万超えの宝物が弾けない状態なのだ。
それについては、羽奈は物凄くモヤモヤしていて、寝室や家の中を一念発起して片付けて異世界用寝室と日常寝室を作った時に、エレクトーンの上も片付けさせなかったのか!?と物凄く後悔した。
物が残っていても「私が持っていきたいのはエレクトーンとエレクトーン関連のもの全て!楽譜やデータや保護カバーやヘッドフォン等、演奏するに必要なもの全て持って行く!」と念じて触れば、こちらではただタッチしただけでも、あちらに行けばエレクトーン関連一式として取り出せるのではないか!?
すぐに持っていきたいが、とりあえずタッチだけして、気疲れなのかなんなのか、もう少しこちらでゆっくりしてからと眠ってしまった。本当は日常寝室で寝ないといけなかったのに、つい寝ぼけてフラフラと従来の寝室…つまり異世界寝室で寝てしまった。
そこにはうっかり二度寝をしてる宏樹もいた。
ここの夫婦…しっかりものではなくうっかり夫婦だった…。
そして、ぐっすり寝て起きた羽奈…いやアン。
何気に隣の部屋から後光のような光が差していた。
なので、隣の部屋に移動はしたけど何もない。
でもなぜか、そこだけぽっかり何かが足らないような…いかにもここに設置しなさいと言われているような…。
ハッ!としたアン。モニターを開き、格納表示を開くと…
うわぁ〜持ってこれちゃったよ…エレクトーン…。一切合切持ってこれたよ…。
取り出すボタンを押すと、こんなチートある!?という具合に関連一式が収納出来るゴージャス棚に収納された状態で取り出すことが出来て、エレクトーンも定位置と思われる光の場所に設置されると光がおさまった。
そして、不思議なことに異世界仕様に自動的に変わっていて、現代では普通に黒色のエレクトーンが、外観がゴージャスで少し金色めいた深紅のエレクトーンで、コンセントが無くとも電源が入り、さらなるチートとして、耳コピーは出来ても脳内でこんな風に弾きたいと思ってもそれが現実的に叶わなかったことが、演奏技術だけでなく、音色やリズム等も自分で作ったものや市販のものでも「こうじゃないから本当は作り替えたいのに機能的にも技量的にも出来ないのが残念」と思っていたそれが叶うチートパート2が備わっていた!!!!!
なぜ、それが解ったのか?
目の前にエレクトーンが出現したときに、引き寄せられるように電源を入れ、こんな風に弾きたい、こんな風に本物の楽曲と見間違う(聴き間違う?)程の演奏がしたいと思っていた脳内演奏を、鍵盤に触った途端にリズム音色等のバックの自動演奏がかかり、それに合わせて自分の指が、足が自動的に動き出す。
羽奈がずっと弾きたかった完全なる羽奈のイメージする楽曲。超有名大御所シンガーソングライターであり、そのご主人の見事な編曲&プロデュースの大ヒットナンバー♪この頃に恐らく結婚後の改名で出した最初の曲。初登場ランキング1位取りまくってた方を初めて認識した楽曲。
前奏のアカペラの歌い出しから始め、続くコーラス部分から鍵盤を押さえただけで正確な和音にドラムにギター音。ベースの足をずっと押さえたままでリズムを刻み、徐々にボリュームを上げていく…。
ゆーどんはーふとぅうぉ〜りーうぉり〜♪こーずあいら〜ぶゅ〜♪
英語がわからない小さい頃に聞こえてきたまま歌ってたあの曲…。
これこれこれこれこれ!もうこっちなら誰に文句を言われようが知るもんか!弾いてやる!弾きまくってやる!
滂沱の涙を流しながら、弾きながら歌う羽奈。
しかし、羽奈=アンは知る由もない。この演奏がどんなインパクトを与えるのか。
そのみごとな楽曲は羽奈のものではない。だが、こっちの人は当然現世を知らない、こんな音楽も初耳でこんな楽器も知らない。
ストレス満タンで限界値と念願の演奏に酔いしれてる羽奈は全く気づかず、何度も同じ曲を弾いたら今度は今時の楽曲を弾き始め、何曲も没頭し演奏し続けた。




