12 クララ役割分担を知る
クララはシャインマスカットも炊き込みご飯や具沢山味噌汁も改めてしげしげと眺めた。
アンは追い詰めないように、でもこの機を逃してはクララが素直に学べる機会を逸すると思い話し続けた。
「クララ様、食物だけの話ではありませんわ。私達が来ている絹や綿等の布地も、糸も、家具もその材料も都会の王都では作れません。勿論最終段階の縫製や家具やそれこそ家を作ると言った工程や工事等の最終段階に至る商売は王都でも行われていますが、それらの原材料は植物なのでやはり田舎の栽培や伐採、そして伐採ばかりでは災害も起こるのでどこまで伐採していいかの判断や植林は職人さんの技術になりますし、縫製も職人さんの技術ですし、とにかく王都で我々が使うものは全て田舎での農産業や林業がないと成り立たないのです。」
「そうなのですね…。難しいです。」
「貴族はそんな民間人を守らなければなりません。何故なら民間人が一生懸命に働いて得たお金から税を納め、そのお金で貴族は裕福な生活を送っているからです。本来はそんな大事なお金でこんな贅沢をすること事態、私はおかしいと思っています。」
アン、中身がアラフォーだし現代人なので、異世界の母親たちと考えが違ったりもするかもだけど、いい機会だから本音を言った。
「でも、そこは私達みたいな子供ではわからない歴史もあるからこういった暮らしを貴族は出来ていると思ってるから、それを忘れないように大事に無駄遣いをしないようにと私自身はそう考えてるので、そんな田舎を守ってくださる辺境伯やその領地を治めているうちやアーサーのお家がいるから、領民は安心して暮らせているから、私たちも暮らせているのです。
だから、田舎者と馬鹿にしてはならないのです。もし田舎の方々が働くのを止めて税も納めなくなったら、いくらお金があっても食べることも出来ず、着るものがないと暮らしていけない。牛乳もチーズも酪農があるから得られている。だから、もし食糧難が発生したら本当は貴族なんて大した力なんてないかもしれないんです。」
「これも…これも?」とクララは自分の服やアクセサリーや食べてるものや食器を指差した。
「そうですよ。みんな役割があって繋がっていて、国を良くするために、みんなが力を合わせて頑張ってる。決して王都の人間が偉い訳じゃないです。」
このアンの発言にマリラとサリー、ロッテが神妙な顔をしていた。
「アンちゃんの言う通りね…。解っていたつもりだけど改めてこんな小さい子供に言われると、お茶会だの夜会だのとすぐにドレスを仕立てるのはどうしてもそれも貴族がお金を使うから経済を回すことになるから仕方ない。過分な節約は不要だけど…自分達の仕事で得たお金だとしても税や下々の働きによることを忘れてはダメね。」
「我が子ながら私も刺さりましたわ。サリーの言う通りね。」
そんな中、ロッテがまた天然なのかとんでもないことをクララに話す。人はすぐには変われないw
「クララ…なぜ全く知らなかったみたいな顔してるの?家庭教師から教わってた部分もあるはずよ。アン様ほど年齢の割に博識なところまで追いつけないのは当然だけど、田舎の領地のおかげで私達の生活が成り立ってることは知ってるでしょう?」
「私、習ったのかもしれませんが…覚えてないです。ごめんなさいお母様。」
ここでずっと食べまくってて、話聞いてる?ってなアーサーが突如話しだした。
「教わっても分からなかった、知らなかったことを素直に知らないと言うのは、悪いことじゃないです。まずいのは間違って解釈したままだったり、知ったかぶりすることです。ロッテ様は、悪気ないと思います。お母上なので心配してのことだと思いますが、その話し方だとクララ様には問い詰められてると感じてるように見えます。
知らない解らないと示したことが悪いことなんだと勘違いから萎縮しまうと、ますます学ぶ機会が減る。お言葉ですがロッテ様ももう少しクララ様の目線に立っていただけませんか?」
「アーサー!あなたのその言い方もロッテを追い詰めてるわ!」
「子供が大人に遠慮してどうします?この場は膿出し作業とすり合わせの場なんでしょ。今明確にしないとまた再発します。母上は大切な後輩のロッテ様の成長を止めるおつもりか?」
中身は宏樹でこちらもアラフォーの大の大人だからなー。しかし満腹になった途端に喋り始めたなーwとニコニコしてるアン。
さて、どう決着つけようか。アンは全員を見て話しだした。
「あの、それぞれ理解しやすい方法があるんじゃないでしょうか?私もですが、クララ様もきっと座学が苦手なんだと思います。私は、料理を通してシェフや侍女達の実際の話を聞くほうが理解しやすいし、地方の領地に行く機会もあるので王都や田舎の成り立ちや役割分担を理解していただけで、クララ様はその機会がなかったから、今炊き込みご飯等の珍しい食べ物に触れて、楽しい体験をしたからお話を理解出来たのではないでしょうか?
家庭教師から座学で習うだけが勉強じゃないと思います。
実際に体験するほうが身につく人もいるってことです。」
「わ、わたし!難しいこと解らないけど、アン様が一生懸命に私に教えてくれようとしたお話は解りました。田舎とバカにしてはいけない、田舎がないと私達の暮らし、食べ物を得ることは出来ないってことですよね!」
「ロッテ…クララちゃん一発で理解してるわよw地頭は悪くないのよ。あなたの子供ですもの。問い詰めてしまう物言いになるのは、ロッテが自分のせいだと思ってのことね。ちゃんとあなたが心配しなくてもクララちゃんはやれば出来る子だわ。自信持って!」
マリラが励ますと今度はロッテが号泣し始めた。堰を切ったように泣き出した。天然に見えるロッテだが、実際天然なとこもあるロッテだが、かなり今回のクララの騒動や自分の育て方や家庭教師の選出、何よりクララときちんと向き合っていなかった点など、かなり思うところがあったのだろう。暫くロッテの涙は止まらず、またクララまで泣き出してしまい、二人とも泣きながらシャインマスカットを食べていた。
アンはそれでも食べるんだ…と思った。
ラーク家は田舎に領地がなく王都だけだったこともクララにはイメージしがたかったのだろう。体験に勝るものはない。
イメージ力の無さはこれから鍛えればどんどん成長する。
果物や畑等、ラーク家の庭でも栽培してるものもあるし、縫製係もいるので、まずはそれらを見学や体験をして、なんならアンと一緒に日帰りでレッド家領地見学をすることも提案したマリラ。
それになぜか面白そう!とサリーも便乗した。アーサーはどこでもアンと一緒にいたいのだが、女2男1の構成は良くないと判断し、「アンさんと二人きりの旅行なら行く」と発言した。
クララ…突然ロッテ的天然発言をする。
「アーサー様!私!アーサー様の婚約者になりとうございます!だから一緒に参りませんか!?」
「ダメです!アーサーは私の婚約者で夫です!」
アンの即答にサリーとマリラが泣きながら爆笑をした。
だって…アーサー(宏樹)は夫だもん!




