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1 エピローグ 夫婦で異世界転生!?但し寝ている間だけで起きたら現世です〜中年夫婦は異世界でも仲良し婚約者です。

森野羽奈は43歳専業主婦。体調不良から長年勤務した会社を退職し、リハビリしながらのやっと人生初のほのぼの生活を満喫していたある日…


起きたら異世界転生し、7歳の貴族令嬢になっていた。


知らない豪華な部屋…

でも、そこにはやっと夫婦として絆が深まりつつあった

夫、宏樹がいない。


病気で死にかけて、やっと生還した私が消えたらひろくんはどうなるの?

こっちの異世界の人と知らないうちに入れ替わってて、

私もどきの人と毎日キスなんてしてたら

そんなの絶対にいや!


どうしたらいいかと号泣していると、侍女の声が。

「婚約者のアーサー様がお見舞いにいらしてます。」


「アーサー様って…え!?ひろくん!?」

「アン様って、羽奈さん!?」


夫婦で異世界に来てしまった!?しかも年の差夫婦が同級生婚約者!?

当初の心配は無くなったとはいえ

これからどうやって二人で乗り越えて行こうか?

しかも目が覚めたら現世で…。ますます訳がわかりません!


それでも、中年夫婦は清く正しくたくましく、

ちょっと腹黒でほのぼのと生きて参ります!

【第一話 エピローグ】


 なんだ?ここは…。これどうやら異世界転生ってやつ?

いやいやいやいや…別に死んでないし。何があってこうなった?


 昨日は普通に夫と寝室で寝たぞ。健やかに寝たぞ。

寝る前に漫画やラノベは多少読んだけど。


 ええ…ひとりでこんな知らない部屋で…。貴族?私は貴族なの?


 ヤダヤダヤダヤダ!ひろくんに会いたいよ〜(泣)

ひろくん…うぅ…やだぁ…ひろくん。


 ど〜も、7歳の女のコのようだ。






 私は森野羽奈。43歳。既婚者。夫は森野宏樹37歳。


 結婚して約10年。普通に会社に正社員として長年勤務してきたが、

体調を崩し意識不明からの長期入院。ほぼ一年間は歩行が出来ず、

外出時は車椅子が必須だったが、家では短時間なら歩行が出来ていた。

そんな日々を過ごし、少しずつ体調が戻り、復帰の目処が立ち始めた頃に、せっかく良くなってきたのに、これ以上無理をして、また激務な職場にいて取り返しのつかない状態になっては大変だからと、医者と夫の勧めもあり、長年勤めていた会社を昨年退職。


 元々あまり身体が強い方でもなかったのに、社内一の激務部署に新卒で配属されてから退職するまで、何とか頑張ったほうじゃないかと思ってる。


 人間関係では大いに悩まされたが、退職するときに思いの外残念がられて、おじちゃん達から

「本当にいつもよくやってくれてたのに、色々気付いてあげられずに、こんなにボロボロになるまで…。本当にごめんね。」

と言われ、ああ…自分のことを見ててくれる人がいたんだなと。

少し鼻がツンとなり胸が熱くなった。


 その労いの言葉に「何もわかってなかった小娘が、みなさんのおかげで、少しは人生を考えられるように成長出来ました(笑)」とお礼を言って、お気に入りのご当地黒豆入りおかきにメッセージをつけて、約300人に挨拶周りをする予定が、結局、声をかけられたりで、黒豆入りおかきが足らなくなり、帰りに追加200個分購入し、メッセージも印刷して、翌日も有休を取り挨拶周り。


 ただ、体調が完全では無く、休み休み各所へ出向いたので、普通なら一日半で終わるところ、丸々二日かかった。


 くたびれた。


 席に戻ったら謎の書類とメモがあった。


「総務からTELあり。メールに添付して送っておいたから、出力して署名と捺印の上、帰りか後日郵送にて提出をしてほしい。とのことです。」

と伝言メモがあった。


「マジか…。まぁ…自宅から徒歩圏内だから後日持ち届けるか…夫に頼んでもいいか。」


 おかげで、最後の出勤日なのに片付けやら総務に提出するらしい諸々の申請書類の出力やらで、なぜか残業になった。


「羽奈さんまだいるのぉ?退職の日に残業してる人、初めて見たわ(笑)」


「私も…。見てよぉ〜退職するのにこんなに署名捺印せなあかんのよー。」


「げー!知らなかった!何これ!?」


「いやぁ、私もざっと見だからわからないけど、多分失業保険とかの申請とか年金とかの社会保険とか、あと制服や社員証の返却とか…。」


「ええ!?むっちゃ面倒ですやん!もっと早く言ってくれたらいいのに!」


「総務都合かもしれんし…上司が連絡を故意に止めていたかもだしね。」


「故意なんですか?」

「単に失念していた可能性大だけども」


 彼女と笑いながら雑談。きっとわざと残ってくれてる。


「羽奈さんがいなくなるの、こうしてお話する機会が無くなるの…寂しくなります。」

と名残惜しそうに言ってくれた彼女に、おまけで黒豆入りおかきを2枚と、

いつも引き出しに忍ばせていたウェハースが挟んであるチョコをひと箱あげた。


 流石に大事な書類に署名捺印は熟読してからでないと怖いので、出力だけして、自宅に持ち帰り、総務に質問の電話をしまくって署名捺印をし、後日、夫に総務に持って行ってもらった。


 今となっては、ちょっと面白くて恥ずかしかったのも良い想い出だ(笑)



 故意とつい言ってしまったのには理由がある。


 退職時に思ったこと。苦手な人も殆ど最後の日には優しく労ってくれて

お礼を言ってくれたけど、最後までクソな奴はいてクソなんだなと(笑)


 退職三日前の出来事。


上司「挨拶周りは有給休暇取ってやってよ。」


あ!?


 そんな話、聞いたことない。

言われたあとに先に退職していた子に聞いてみたが、


「本当はそうだとしても、そんな野暮なことを言った人はいないよ。」

とのこと。

 

実際は、勤怠に有休申請を上司が代わりに気を利かせて申請してくれていたのかもしれないにせよ、わざわざそんなことは言わないとのこと。


 そして、最後の一日、二日ぐらい自由にさせてやったらいいと、勤怠をつける時に何の仕事をしたか?を示す勤怠記号も上手い具合にしてくれていたとのこと。


 それを当たり前と思う訳でなくても、長年の功労なら、それは尚の事、暗黙の了解なのにとのことらしく、ご親切にその理由も何人かの他部署の退職者にも確認した話だと教えてくれた。


 あいつ…やっぱりクソだな。

働いてるときも全く気にかけず仕事も私等のことも放ったらかしにして、仕事だけは押し付けていたくせに。


 まぁ…有能社員だったからいいけど。

寧ろ、ミスを指摘しまくり「直しておきました。違うようでしたらご自身で修正ください。」といつも伝えてたし。


「ええ…ついでだからやっておいてよ〜。」


「かまいませんけど、急ぎの仕事があるので、課長に言って頂けますか?

 課長の仕事よりこっちの仕事を優先させたいと許可が降りたらやります。」


「ええわ。ほんならオレやるわ。いや…直すとこないわ。これで提出しとく」


 ほんならなんやったんや?今の会話。中味確認してから指示しろや…。


 不意に思い出した。その仕返しか?いや、ちゃうやろ。


 なので、どーせ最後だから有休無視して挨拶周りしてやろうかとも思ったが

どのみち有休消化せなならんし、いっか…と。


 小心者なので、ここで下手にゴタゴタを起こして、立つ鳥跡を濁した!は

なんか…品行方正でやってきたのに悔しい。


 今後の大事な局面にケチがついて運気を落とすようなことは嫌だなと思って、一昨日、素直に勤怠ソフトに有休申請をしておいた。


 因果応報を意識すること、コレ大事。


【有給休暇申請理由:20年お世話になった各所皆様方へ退職報告の挨拶周りのため。】


 ポチッ。

 退職の挨拶周りの為。と書くところ、あえて詳しく書いてやった。


 沢山有休があったわけではない。

 身体が元々強くない私は殆ど毎年病欠と療養に有休も使い切って、

4月にまた有休が発生するのだが、退職したのが7月末だったため、まだ余っていただけだw


 そして、今は、のんびり遅起きの専業主婦。

 専業主婦と言っても、まだまだ満足に家事など出来るはずもなく

体調不安定ゆえの遅起き。


 とにかく、しんどくてずっとうとうと。

退職する為とはいえ、よくぞここ数日出勤出来たものだ。

まだまだリハビリ要素が多いので、本格復帰してたら

本当にヤバかっかもしれん。


 退職後は無理をせず家事もあまりせずに、ゆっくり過ごす日々を送っている。



 そして、6歳年下の夫、森野宏樹。37歳。

親会社の正社員。とても優しく大事にしてくれる。


 前々から優しかったが、私が倒れてからのほうが優しくなった。


 ただ、思い返せば、前から優しいとは思っていたものの、以前はどこか冷めてるというか、私にさほど執着してない気がした。


 結婚式も羽奈さんの好きにすれば?と一見尊重してるように見えて、

私との結婚式を大切な儀式との考えがあまり無いのではないか?と結婚前にケンカしたことがある。


「これならやりたい事が双方にあって、ぶつかって引く引かないとかで大喧嘩するほうがマシだ!

私との結婚式なのに二人の結婚式なのになんでそんな他人事で、私任せで、興味ないみたいな反応なの!?」

とブチ切れたことがあった。


謝れども、それでもどこか他人事な気持ちが入っていない気がして、私のモヤモヤは晴れなかった。


 そんなある日、決定的な事件が起こった。


 結婚式準備の最中、彼は友人達と旅行に行ってしまった。

普通なら別に構わないことでも、色々節約しもって様々な準備に優先順位を付けて、

時間のかかるものから手配していく時間の必要や、その為の資金や新居の頭金も必要な時期で、


頭も身体もフル回転で、さらに披露宴のときに演奏する曲作りのために、エレクトーンの期間限定で再レッスンに通っているほどだ。


 曲を弾くためだけならレッスンは不要だったが、

有名アイドルグループのダブルミリオンの大ヒットナンバーを演奏するに辺り、

原曲さながらの演奏をする為の音色作りやリズム入力、シーケンサーを組む等、所謂耳コピーをする為には、そこはどうしてもプロの技術が必要だった。


 私のやりたい事ではあったが、決して内輪盛り上がりにならず、

老若男女問わず、出席者全員が満足して楽しんで頂けるよう、

これまでの感謝とこれからもよろしくお願いしますの気持ちが伝わる為のおもてなしをコンセントとして、二人で決めた中で、私が出来ることを私なりに取り組んでいた。


 彼は一体何を頑張っているんだろう?

そう思うくらい真剣な私と彼とには熱量差や温度差があった。


 私のほうが社歴が長く、当時は彼より私の収入も貯蓄額も上だったため、

私が殆ど費用負担をしていたから、彼は、自分が何かを言う権利はないと思って、私の好きにしていいと言ったのかもだが、


 時間もお金もカツカツの中で、自分は友達といつの間にか旅行に行く計画はちゃっかり立てていて、そんな他ごとに回すお金があるのか?そんな計画を立てる余裕があったのか?と愕然とした。


 しかも、旅行中に私達の結婚式の打ち合わせもあり、さらにさらに最重要のひとつ。


 私達の披露宴会場での模擬披露宴が開催される。

 

 私達にとっては、文字通り本当の意味での模擬披露宴で、照明や動線、進行具合や時間配分、お花やドレス等々、生で確認出来る数少ない機会で、

自分達の結婚式当日までに同じ会場での模擬披露宴は今回がラストだと聞いていた。


 つまり、絶対に外せない最重要日なのだ。


 ここでの確認からの披露宴内容の追加取り消し変更による修正案が、ほぼ最終料金として確定される近似値となるので、後に残るものとは違うため、ローンなどは当然なく一括払いの

支払い準備にも関わる。


 あとは、もっと小さい会場か、一番デカイ何百人と入る、それこそオリンピック選手の壮行会や偉い人が叙勲パーティーを行うような会場での模擬披露宴しかないと。


 そんな大事な日に旅行に行くということは、これまでの打ち合わせや準備に身が入っていない表れで、プランナーの説明も聞いていなければ、スケジュール表の確認もせずに旅行の予定を独身気分で入れたわけで。(まだ独身だけれども…)


 それは、私ほど結婚式よりも結婚に対して真剣ではなくて、

だから結婚式に向き合っていないと思ってしまった上に、私はとても孤独を感じて、悲しくて、ムカついて、


 この結婚を止めようと本気で思った。


 携帯が鳴った。


 まだ婚約者だった夫から

「旅行に来てて今、ついてん〜♪富士山がさーすごくきれいでさー。」


このほのぼの調子に絆されてしまい、いつもつい許してしまうのだが、


言った。言ってやった。


「明日、何の日か覚えてる?言ったよね、模擬披露宴だって。

しかも私らの会場での模擬は今回ラストで、現実に確認出来る唯一の機会だって言ってたよね。

 そんな大事な日に旅行に行ったの?事前連絡もなしに?


 明日、来なかったら結婚取りやめてここキャンセルするから。

あなたとも別れる。前から結婚準備を他人事みたいな姿勢に散々文句言ってたけど、意識ほんとにあったらこんな大事な日に旅行とか入れへんよな。私は社員旅行すら断ったのに。


 他事を楽しむことを考える余裕も金銭的余裕もあるなら、式場や指輪のキャンセル料や慰謝料請求しても払えるんやな。


 時間までに来なかったら式場キャンセルするってプランナーさんに今から連絡して、

キャンセル準備もしてもらっておくから。


 戻ってくるかどうかは、あなたの判断に任すけど、取りやめるなら式場まで行って待たされるのも嫌やから、今どっちにするか決めて。」


「い、今すぐ帰ります!!!!!」


 翌日、ボロボロの姿の彼が式場にいた。半泣きだった。

半泣きのくせにちょっとムカついてる態度に、


「あ?何?やっぱり止めるん?」と言うと、態度も含め全力で謝ってきた。


 模擬披露宴に参加させてもいいのか悩んだほど、彼はズタボロだった。


 母にはそんなことくらいで…と言われたが、

父からは「羽奈が言うことは尤もだ。結婚前からそういうケジメは大事だ。

流していいこととあかんことは、これからの夫婦の形成に必要なことだ」

と言ってくれた。


 父の肯定はとても有り難かった。


 その日以降、結婚準備に彼なりに真剣になった。


 披露宴のとき

「宿屋についたばかりなのに、彼女に言われて彼はトンボ帰りしたんですよぉ〜」と友人スピーチでいじられたが、


今となっては…今でも良い想い出ではない。


 でも、それから無事にそれなりに楽しく今までやってきたけれど、

私が本当に死にかけるまでは、どこか、私がいなくなっても平気ってな雰囲気があった。

実際、そんなことを言われたこともある。


 それを思い出すと、彼は全然優しくなかった。

 一見優しそうだが、私に興味も執着もないから、彼にとって私は必要では無いのかもしれない。


 ふとした、寂しさが過ることがあった。


 ただ、別れるほどの何かもない。そして、彼との生活は楽しい。

彼も家では自由にゲーム等して、のんびりゴロゴロほのぼの過ごしている。


 きっと私は妻として都合が良かったんだ。


 でも、私が、倒れて死にかけたあの日。

この病院ではもうダメだ…と病院から病院へ救急搬送され、

転院先の救命で今夜が山です。お心をしっかり持ってください。

と医者から告げられたあの日、


 夫は初めて私が本当に消えていなくなる現実に直面した。


 ようやく、私のことに執着し興味を持ち、号泣し、後悔と猛省をし

 そして、視界から色が無くなった世界を見て絶望した。


 夫はどうも土壇場にならないと気付けない人のようだ


 そして、私は生還し、長期入院をした。

 重病患者のため、面会謝絶ではあったが、個室で付添用のソファーベッドもあったため、夫の寝泊まりの許可は降り、退院するまで毎日病室で寝泊まりしてくれて、世話をしてくれて、病室から出勤し、退勤後は一旦自宅に戻り、洗濯と入浴と植木の水やりを済ませて、

コンビニで夕飯と夜食とおやつを買って、病室に戻ってくる。


 因みに、夜食を食べなかった日は朝食になっていた。


 そんな生活を夫は一日も欠かさずにやってくれた。


 ちゃんと深く愛情を感じた。大切にされている実感があった。


 おかげで、ナースと女医さん達から夫は理想の旦那様と大人気になったw


 そこからの夫は本当に優しく溺愛してくれるようになった。


 そんな夫から私が異世界に転生してしまって、目の前からいなくなったら…

私が現世にいたとしても、こっちの人と入れ替わってて、

私じゃない私がそこに居たら、気づかずに毎日私もどきにキスをしていたら…。


 そんなのいやだ…。知らない人にキスしないで。

でも、私がいなくなって、また色の無い世界を夫に見せるのもいやだ…。


 どうすれば…どうすれば…いいんだろう?



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