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憩う老婆の想い

作者: 中谷工場

大きな家で息子や孫達と暮らしている老婆がいた。その老婆はもう、まともに会話出来ないほど老化し、いつも大きな椅子に座りながら、寝言をたて暮らしていた。


そんな老婆だったため、息子や孫達は老婆を煙たがり、ろくに老婆の世話もせずに暮らしていた。そんな老婆は毎日、午後1時頃大きな椅子に座り、昼寝を始めるのである。毎日、老婆が昼寝を始める行為に対して、息子や孫達は迷惑がっていた。


何故なら、老婆が昼寝を始めると同時に、老婆の寝言が聞こえてくるのである。その寝言は明らかに夢を見ているような寝言だった。時には老婆が寝言を言っていると、老婆の目から涙がうっすらと流れるような光景もあり、その事で孫達は不気味がっていた。 


そんな孫達を見て、老婆の息子は 

『あんなボケ老人、相手にするな。』と言っていた。

そんな日々が毎日、続けていた。

午後1時になると、老婆の寝言が家の中をかすかに響かせ、そして、そのうち、老婆の寝言は習慣になっていた。


珍しく虹が架かった午後1時に老婆の息子は孫達に

『ボケ老人が寝言をたてるが気になるな。』

と言って話しているが、中々、寝言が聞こえてこないのである。

おかしいなと思った老婆の息子が老婆がいつも眠りながら、座っている椅子を見にいくと、老婆の息子は驚いてしまった。

何故なら、老婆が眠りながら笑顔で息をひきとっているからである。延命処置など出来ない、老衰による自然死だった。


葬式がしめやかに行われ、老婆の息子は老婆の寝言の事を身内に話し『あのボケ老人、どんな夢を見ていたのかな~。』と言い、談笑していた。


そして、その夜、息子が眠りにつくと、息子の夢のなかで老婆が出てきた。

老婆は笑みを浮かべながら、息子に

『お母さんは午後1時から、どんな夢を見ていたか分かるかい?』と息子が夢のなかで呆然と聞いていると

『お母さんは夢のなかでお前の未来を見ていたんだよ、、。お母さんが話せなくなった時からずっとね。』と言うと、息子が

『嘘だろ。ただ、ボケていただけだろ!!』と言うと、老婆は

『いや~。違うよ。ずっとお前の未来を見ていたんだよ、、。お母さんを馬鹿にしていたのも知っていたよ。でも、お前の未来を見ていると、面白くてね~。悪口よりもそっちの方が楽しくなってな~。』と言い、怒った息子は

『じゃあ~。俺の未来はどんな未来なんだ!!』と聞くと

『それはお前のお楽しみにしときな。きっと孫達に笑われるよ。』

と言われたところで夢は終わった。

夢から覚めた息子は発汗し、奇妙を感じた。

しかし、息子はただの馬鹿な夢だと片付け『あのボケ老人め!!』と叫んだ。


それから、80年後の午後1時。ギシギシと歯軋りの音を鳴らせ、大きな椅子に座りながら、ずっと眠っている老人がいた。

その老人の孫達は凄く不気味がっていた。

その老人はあの老婆の息子だった。歯軋りの音を鳴らせ眠っている老人に息子(老婆の孫)は

『ギシギシ、うるさいんだよ。あのボケ老人。』

と言っていた。


歯軋りの音が聞こえなくなった午後1時、老人は静かに息をひきとっていた。老衰による自然死だった。


葬儀の式場で息子(老婆の孫)は

『ギシギシ、うるさかったんだよ~。あのボケ老人。何をしてたんだろうね?』と身内に話していた。


老婆の息子が息をひきとったのは珍しく虹が架かった午後1時だった、、(終)  



  




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