78 閑話 夢からさめてしまわぬように
短めです。
ここはどこだろう。オレはだれだろう。
ここはどろどろ、ここはゆらゆら。オレは――
オレは、シオン。オレはスライム。スライムってなんだっけ。
スライムはどろどろ、ここはどろどろ、ここはスライム?
なんかいもおなじことをかんがえてぐるぐるしている。
ぐるぐるしすぎて、きぶんがわるくなって、そうするといつもみみをすませるんだ。
とくんとくん、とおとがする。
そのおとをきいているとほっとして、でもなみだがとまらなくなる。
いまのオレには、なみだなんてながせないはずなのに。
オレは、オレのことをスライムだとおもっていた。きみがそうだといったから。
でもたぶん、ほんとうはちがう。まざってしまったいまならわかる。
きみがあのひあつめてくれたオレのかけらは、バラバラすぎてけんじゃのいしのちからをつかってもオレになれなかった。
だから、じかんをかけることにしたんだ。ほんとうのオレになるために。
オレにあしがあれば、きみのところへはしってゆけるのに。
オレにてがあれば、きみのなみだをぬぐえるのに。
オレにくちがあれば、もっときみとおはなしできるのに。
ほんとうのすがたになれたら、なにをしようかな。ほんとうのオレはどんなすがたかな。
いつもまもられてばかりだから、きみをまもれるようなつよいすがたがいいな。
あのひ、しろへやってきたおおきなドラゴンみたいなすがたなら、きみをまもれるのかな。
せなかにはおおきなつばさ、てにはするどいつめ、あらゆるものをかみくだくギザギザのは。
もしスライムではなく、そんなすがただったなら。
かなわぬゆめをいだきながら、オレはふたたびまどろみのなかへとけこんでゆく。
そう。スライムがドラゴンになりたいなんて、そんなありえないゆめをいだきながら――
今年の投稿はこれで終わりです。
来年から第三章に入りますのでよろしくお願い致します!




