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淑女魔王とお呼びなさい  作者: 新道ほびっと
第一章 魔王国建国編
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36 閑話 四天王の休日【蝋燭を灯して】

シオンの話です。

 オレは、はらがたっている。

 ミオのめいれいで、してんのうがやすみをとることになったのはわかる。なぜかオレまでやすみをとらされてしまったので、おこっているのだ。

 オレはつかれたらミオのひざでやすんでいるから、やすみなどいらないというのに。

 じぶんたちだけミオのそばにいられないのはふこうへいだから、とクレマチスたちにむりやりやすまされることになってしまった。


「シオン様?おひとりで珍しいですね」


 ひまでひまでしかたがないので、オレはちゅうぼうへとやってきた。りょうりちょうのオークはコリウスにからまれているようで、ふくりょうりちょうのブラウニーがオレのたいおうをする。

 ブラウニーはこびとのようせいだから、オレにめせんをあわせるためにわざわざかがまなくていいのでらくだ。そのせいか、オレのあいてはからだのおおきなオークよりブラウニーがしてくれることがおおい。


「お待たせしました」


 オレがなにもいわずとも――というよりそもそもオレははなせないのだが、ブラウニーはオレにいつものメニューをさしだす。

 それをきょうみぶかそうによこめでながめていたゴブリンが、ぎょろりとしためを、さらにおおきくみひらいてギョッとした。


「副料理長、そのサラダって……」


 オレがむしゃむしゃとほおばっているサラダをゆびさして、ゴブリンがくちをもごもごさせる。

 たぶん、どうしてサラダをつくれたのかききたいのだろう。このくにのくさはぜんぶかれているはずなのに。


「あぁ、マンドラゴラとアルラウネの花とドライアドの葉のサラダだよ。お前も食べるか?」


 ブラウニーのせつめいをきいたゴブリンは、かおをあおくしてブンブンとよこにふった。どうやらオレのサラダがとられるしんぱいはなさそうだ。


「あの……毒草を食べても平気ってことは、シオン様ってポイズンスライムなんですか?」


「うーん、そもそもスライムの生態が謎に包まれているからなぁ」


 オレがスライムだというのはひとめでわかることだが、どういうしゅるいのスライムなのかはいまだにわかっていない。

 まもののことをよくしるミオたちがはなしあってもわからなかったのだから、こいつらにもわからないだろう。

 どういうわけか、オレはどくのあるものをたべてもへいきらしい。それどころか、ほどよいしげきのあるほうがまんぞくできる。

 だから、いつもどくのあるしょくざいをつかってりょうりしてもらっているのだ。

 おなかもいっぱいになり、オレがあいさつがわりにぴょんぴょんはねるとブラウニーがさらをかたづけてくれたので、じぶんのへやへとかえることにした。

 

 オレはべつにミオとおなじへやでもいいのだが、クレマチスたちにもうはんたいされてしまった。

 しかたがないので、ミオのへやのちかくのかべにあるしゅうのうスペースをかいぞうして、オレのへやにしてもらった。

 ちゃんとカギがかかるようになっていて、オレのからだがとおれるサイズのちいさなドアがついている。

 オレはスライムなのでからだをとかせばすきまからもはいれるのだが、めんどうくさいのでこのドアはありがたかった。ペットようのぶひんだというのが、しゃくではあるが。


 へやへもどると、オレはまどうランタンのあかりをつける。このランタンは、ミオがつくってくれたものだ。

 まどうランタンのガラスはとくしゅなかこうがされていて、とってをまわすとあさひ、ゆうひ、よぞらをイメージしたひかりがへやをてらす。

 きょうはよぞらのきぶんなのでくるくるととってをまわすと、ランタンのガラスがゆっくりとまわっててんきゅうぎのようなほしぞらがへやのなかにひろがった。


 ミオはほんとうにすばらしいれんきんじゅつしだとおもう。スライムになったオレのこころもゆさぶるような、まどうぐをつくってしまうんだから。

 ためいきがわりにぺしゃりとからだをくずしたオレは、ニンゲンだったころのじぶんをおもいだす。

 そうだ。ニンゲンだったころも、オレはミオのつくるまどうぐがすきだった。

 ほんとうはべつのものをつくってほしかったのに、ミオがだしてくるアイデアがどれもすばらしくて。

 これならほんとうに――をめざせるかもと……そこまでおもいだしてみたが、どうしてももやがかかったようになってしまう。

 

 まただ。スライムになったオレはきおくがとぎれとぎれなので、なにをおぼえていてなにをわすれているのかはっきりさせたいのだが。かんじんなところがおもいだせないので、いつもけっきょくなにもわからないのだ。

 オレはしんだときにからだがぐちゃぐちゃだったので、そのこういしょうだろうとピオニーたちはいっていたが、どうもちがうようなきがする。

 なぜなら、おもいだせないきおくのことをかんがえると、なにかのかおりもいっしょにおもいだされるのだ。

 あまい、こうすいというより、おこうのようなかぐわしいかおり。あれはいったいなんなのだろう。たぶん、オレがきおくをおもいだせないこととかんけいがあるとおもうのだが。


 たくさんかんがえごとをしたら、なんだかねむくなってしまった。スライムになってから、かんがえごとをするとすぐねむくなってしまうせいで、なかなかかくしんにせまれない。だれかにてつだってもらえればいいのだが、しゃべれないのでそれもむずかしい。

 このままひとりでかんがえてもキリがなさそうだし、しばらくはどうにかして、しゃべることができるようなほうほうをさがしたほうがよさそうだ。

 オレはそうはんだんして、ミオのつくってくれたランタンのやわらかいひかりにつつまれながらまどろみはじめる。

 ゆめのなかのオレは、ピカピカのふくをきたニンゲンのすがただった。そしてなにかをミオにあやまっていたのだが、ゆめのなかでももやがかかってききとれない。

 ただ、たぶんとてもひどいことをしたはずのオレをゆるすといってくれた、ミオのやさしいえがおだけは、めがさめたあともはっきりとおもいだせたのだった。

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