表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淑女魔王とお呼びなさい  作者: 新道ほびっと
第一章 魔王国建国編
27/110

27 シャンデリア・ワルツ

日曜に更新するはずだった分のお話です。おまたせしました。

 あぁ、ひまだ。スライムであるオレにはてもあしもついていない。はなすこともできないから、いっしょにいるコリウスがバカなことをしないように、みていることくらいしかできない。

 オレもスライムじゃなくてニンゲンだったらなぁとむかしのオレをおもいうかべようとしたが、どうもうまくおもいだせない。スライムになってからは、こういうことがたまにある。

 オレのことがきらいらしいクレマチスにいろいろきかれてから、すこしはじぶんのことがわかってきた。どうやらオレは、ほかのみんなとちがって、おぼえていることとおぼえてないことがある。そして、ちのう?がすこしひくくなっているらしい。ひどいはなしだが、ふくざつなことをかんがえようとすると、あたまがいたくなるのでほんとうのようだ。

 おそらく5さいくらいのちのうだろう、とクレマチスにはわらわれたが、5さいのときにはあにうえよりもあたまがいい、しんどうだとよばれたオレをなめないでほしい。


 ほんとうは、オレはべつにしんどうなんかではなかったのだけど。はらちがいのあにであるクラウンは、オレがものごころつくころには、じぶんがおういをつぐのだとふんぞりかえっていた。

 そのため、おろかなあにをあやつってせいじにかかわろうとするもの、どうにかあにをこうせいさせようとするもの、オレをおだててかつぎあげようとするもの、さまざまなきぞくにかこまれて、オレはこどもながらにとてもつかれていた。

 そしてみんな、オレたちにきかれないようにこっそりとこういった。あねうえがおとこにうまれていればと。

 あねうえは、おさないころからなんでもできた。あたまがいいのはもちろんだが、あねうえはたくさんべんきょうをして、どりょくをしていた。もしおとこにうまれていれば、まようことなくあねうえが、おうたいしにえらばれていたはずだ。

 びじんではくしきなあねうえは、オレのじまんだった。しかしクラウンにとっては、めのうえのたんこぶだったらしい。

 うつくしいあねうえにひとめぼれをしたモンステラのおうじからえんだんがまいこむと、あっというまにユッカからおいだされてしまった。


 よめにいくまえに、あねうえはオレにいった。オレならかならず、おうになれる。おうになってユッカをただしくみちびいてほしいと。

 だからオレはあねうえにいわれたとおりに、なんでもやった。オレのことをこころからみとめてくれたのは、あねうえだけだったから。

 ミオがどうもオレのことをすきらしい。そうきづいたときは、そのきもちをりようするべきだとおもった。ひみつのまどうぐであねうえにきいてみると、へいわのためならばそうするべきだといわれた。オレのかんがえはまちがっていなかったのだと、あんしんした。

 それなのに、ミオがつくったけんじゃのいしをゆびにはめると、オレはじぶんのかんがえがほんとうにまちがっていないのかふあんになった。たいぎのためならば、たしょうのぎせいはひつようだと、あねうえはいっていた。でも、はたしてほんとうにそうだろうか。

 あねうえにもういちどきいてみると、ゆびわのせいでそうおもうのだ、そのゆびわはおそろしいまどうぐだからしょぶんしなさいといわれた。そんなときにミオにゆびわをわたすべきだといわれたので、それもそうだとおもってミオにとどけてもらうことにした。でも、ゆびわをはずしてもオレのこころのなかのもやもやはなくならなかった。

 いまになってわかる。オレは、あねうえはまちがっていた。あねうえのいうとおりにしたから、ユッカはほろんでしまった。ミオのせいじゃない、オレとあねうえのせいだ。

 もしあのとき、ミオがつくったけんじゃのいしを、ただしくつかうことができていたら。いまごろオレたちはどうなっていただろう。

 

 あねうえはいまごろユッカがほろんだことをしっただろうか。それをきいて、なにをおもうだろう。

 かぞくのなかで、あねうえのことをよくしっているのはオレだ。だから、あねうえがこれからいったいなにをしてくるのか、オレはかんがえなくちゃいけない。それはオレにしかできないことだから。

 ことばをはなせないから、いままでのじんせいのように、だれかにきくこともできない。あねうえのいうとおりにしてさえいればよかったオレにとって、それはとてもむずかしいことだ。でも、はじめてじぶんでかんがえてうごかなければいけないことに、ワクワクもしている。

 

 いろいろなことをかんがえたせいで、とてもつかれてしまった。はやくミオのひざにのりたい。あのやさしいてでなでてほしい。そういえばオレはちいさいころ、ははおやになでてもらったきおくがない。

 だからだろうか、ミオになでてもらうとすごくあんしんする。こころがぽかぽかとあたたかくなる。だから、ミオのことはだいすきだ。あんなにだいすきだった、あねうえよりもずっとずっと。だってあねうえは、オレをなでてはくれなかったから。

 それに、あねうえはスライムになってしまったオレのことはきっともういらないだろう。だから、オレももうあねうえはいらない。

 スライムになったオレのことも、かわらずそばにおいてくれるミオのために、これからはいきたいとおもう。ひどいことをしてしまった、つみほろぼしのきもちもあるけれど。


 たくさんかんがえるとつかれてしまうけど、あしたになればミオのひざのうえでねかせてもらおう。クレマチスがくやしがるかおをおもいうかべて、オレはえがおになる。じっさいは、スライムだからえがおもなにもないのだけど。

  ただのスライムになってしまったオレに、できることはすくない。だからこそ、オレにしかできないことをいっしょうけんめいがんばろう。

 そうけついして、オレはつきをみあげる。あさがちかづいたそらにうかぶつきは、もうずいぶんと、うすいいろになってしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ