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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

都市伝説系イマジナリー≠天使メル子様!

作者: 鳥路

『いいですか。思い描くのです。みつる殿が望むメスガキを!望めば彼女は現れてくれるですぞ!』


貴重な性癖を暴露できるオタク友達が俺へ界隈で語り継がれる都市伝説を教えてくれた


「イマジナリーメスガキ・・・本当に罵られたいと思うだけで、理想のメスガキがでてくるもんなのかね・・・」


イマジナリーメスガキ

これは、俺が愛してやまないメスガキを愛してやまない豚共が集う界隈に伝わる都市伝説だ

「メスガキに「ざぁこ♡」と言われたい」と思うだけで、理想のメスガキが現れてお望み通り罵ってくれるという夢みたいな都市伝説


ちなみにこの都市伝説、ガチらしい


試した豚は多い。界隈に所属している99%の豚が試している

試していない人間は界隈に足をつけ始めた子豚ぐらいだ

大半はそのイマジナリーメスガキとエンカウントしているらしい


「できる。できるぞ俺・・・!必ずイマジナリーメスガキとエンカウントしてみせる!」

『創造力全然足りないんだけどぉ〜』

「えっ・・・」


ふと、どこかから幼さが残る声がする

ご近所さんにそんな年齢の女性はいない。いるのは六十歳のお婆ちゃんだけだ

小学生なんて住んでいないのに・・・どこから


『ざぁこ、ざーこ♡創造力なし男♡それであたしに会いたいとか高望みしすぎ〜』

「ま、まさか・・・!」


目を開けると、そこには半透明の存在が立っていた

光で輝く長い金髪。小学生みたいな体型に・・・なぜか翼が生えている

これだ。まさしくこの子だ

イマジナリーメスガキ。俺は会えたらしい・・・!


『だからぁ〜創造力足りないって言ってんじゃん。言われたことすらできないなんて、学習能力もなさすぎ〜仕事できないでしょ〜?』

「いや、俺はまだ学生だ」

『え・・・きっしょ・・・』

「ストレートに罵らないでくれ。傷つく」


みるみるうちに彼女は半透明からきちんと形を覚えて。その御神体を顕にしてくれる

まさしく理想。金髪、ツインテール、幼さが強いロリボイス

翼があるのが本当に謎だけど!

とにかく理想が目の前に現れてくれた。都市伝説は本当らしい!


『また厄介な変態が出たわね・・・』

「褒め言葉どうも。で、君は?」

『あたしはメル子。あんた達の欲を叶える為に生まれたの!』

「その翼は?」

『あたし、天使なの。心優しい天使。だからあんたたちの気持ち悪いお願いも叶えてあげるの。感謝してよね?』


なるほど。天使だから翼が

・・・最高だな

息を飲む姿に、メル子はフフンと不敵な笑みを浮かべてくる


「そういえばメル子」

『ざこの癖に馴れ馴れしいんだけど♡』

「さーせん」

『ちゃんと謝れないとか、人間としてダメすぎだと思うなぁ〜』

「ありがとうございまぁす!」


頭を全力で下げて、床に思いっきりぶつける

頭蓋が揺れる感覚と、頭が床にぶつかる心地いい音が部屋の中に響き渡った


『こ、これまであんたの同類共と何回も遭遇してきたわ。けど、あんたみたいに色々と終わった人間とは初めて遭遇した・・・』

「褒め言葉として受け取っていい?」

『なにこいつ怖いんだけど・・・』

「へ?」

『あ、ありがたく受け取りなさい!』

「感謝!」


なんか引かれていたような気がする。気のせいだよな。うん


『で、あんたはあたしを呼び出して何をしてほしいわけ?罵られたいの?』

「いや、別に俺は・・・イマジナリーメスガキの都市伝説を試してみただけで・・・どうしたいとかそういうのは」


全く考えていない

なんというか、会うことだけを考えていたから・・・その後のことはさっぱりだ


『ちゃんと考えてから呼び出しなさいよね〜。あたしだって、あんたばっかりに構っているほど暇じゃないんだから』

「怒った?」

『ふん。ざこの癖に怒られたいとか図々しいんだけど。あたし、こうみえても寛大だから、今回だけは許してあげるけど、次はちゃんと考えておきなさいよ?』

「了解!じゃあまた明日!」

『だからぁ、あんたみたいなざこに毎日構ってるほど、あたしは暇じゃないんだから!』


そう言ってメル子は姿を消す

彼女がいなくなってから、俺の部屋はいつもと変わらない殺風景な部屋に様変わり


現実的な光景を見つめ続けて、しばらく

やっと今まで起きていた異常な現象が記憶の中に落とし込まれた


この噂を教えてくれたオタク友達のはじめ氏に、急いで連絡を取る

イマジナリーメスガキ・・・メル子様と遭遇したでござるぅ〜!・・・と


・・


私は待機空間に戻って一息つく


『はぁ・・・』


今日もまた、変態共の間で私の噂が語られているらしい

お陰で今日一日だけで、何度も変態の元に呼び出された


ほんっっっっとぉぉぉぉぉぉにっ・・・勘弁して欲しい


私、一応天使だよ?慈愛を授ける存在だよ?

何が楽しくて変態共に悦びを授けているのかな?意味がわからない


『疲れたなぁ・・・』


でも、その変態たちが私を生かしている存在である

私達天使は人の「願い」の集合体だ

私は・・・あの変態共の小中学生ぐらいの女の子に「ざぁこ」?と罵られたい欲から出来た存在らしい

見た目だって、欲望に合わせてこんな子供っぽい見た目

同期の子たちは、普通に天使らしい見た目なのに・・・私はずっと見習い天使みたいな姿


『もうやだよぉ・・・』


人を罵ることなんて苦手。バカにするのも嫌

皆みたいに大人で綺麗な天使になりたい

どうせなら、そんなことじゃなくて疲れた人々に優しくて甘い言葉をかけて、頭をよしよしする願いで生まれたかった


ふとした瞬間、頭に光が灯される

またお呼び出しらしい・・・変態共の欲は四六時中尽きることがない

たまには休ませてほしいけど、呼ばれたら答えないといけない

それが天使「メル子=ザガキス」の仕事なのだから

今日も呼ばれて、欲を抱いた人間の願いを叶えに行く

いつかこの仕事に意味を見出す日を、夢見ながらーーーー


「こんにちは、メル子様!」

『出たわね人間!』


今日、呼び出した相手は昨日何も考えずに呼び出してきた・・・ええっと、皇満すめらぎみつるのようだ

二日連続で呼び出してきた人間は初めて

・・・一体何をご所望なのかな。私、何をしないといけないのかな

不安で胃がキリキリしてきた。もう消えてしまいたい・・・


「メル子様」

『な、なによざこ』

「メル子様って、人間界で食事とかしていいの?」

『ま、まあ多少は構わないけど、何を・・・』

「それはよかった。これは無駄にならなさそう」


そう言って皇満が差し出して来たのは、少し高そうなロゴが入った箱

その中から、ホールのショートケーキを取り出した


『な、何よ・・・』

「基氏から聞いたんだけど、メル子様は一人で俺たちの欲を叶えてくれているんでしょ?」

『基・・・ああ、あの喋り方が「ですぞ!」なざこね。あいつからあたしのこと聞いたんだ。そうね、あいつの言う通りよ』

「うん。で、ふと思ったんだけど、休憩とか殆どないんじゃないかなって。呼び出しで体力使うなら、もう呼び出さないけど・・・」


呼び出しだけでも体力を使う。けど、微量だ

そこまで気にする量じゃない。疲れるのは、罵ることだから


『・・・おやつで餌付けしてご機嫌取り?考えてるわね』

「うん。そういうこと」


そうね。私、タダ働きしてたからこれぐらいの報酬は貰ってもいいよね

・・・まさか、何かを人間から貰うなんて思ってなかった

嬉しさを隠すのが大変だ


『今日は食べてあげる。次、呼び出す時は別のスイーツを用意しなさいよね。できなかった時は、わかってるわね、人間?』

「踏んでいただけるんですかね・・・」

『ざこの分際で、お仕置きでご褒美を欲しがるとか図々し〜』


ショートケーキを頬張る

・・・これ、有名パティシエが経営している店のショートケーキじゃない

予約の段階で瞬殺されると噂のショートケーキだ・・・ネットで見たことある

伝説だと思ってたのに、まさかこんなところで会えるだなんて


「へへ、よかったや。メル子様喜んでくれてるっぽい」

『一応聞いておいてあげるけど、あたしを在庫処分に使ってる?』

「ううん。メル子様甘いもの好きだといいなって思って、昨日帰った後に一番美味いケーキを調べて、これを見つけて・・・予約争奪戦に参加して、今朝買いに行ったものだよ」

『あたしが甘いものが嫌いだったらどうするのよ』

「その時は五千円のケーキを顔面で受け止めようかと」

『あたし、一応天使よ。食べ物を無駄にするような真似なんかしないんだから』


本当に私の為に買ってきたんだ

人間から初めて貰ったケーキを味わいながら食べていく

嬉しい気持ちは必死に隠せているかな

バレたら、仕事じゃなくなるから


『ごちそうさま〜』

「お口にあった?」

『め!』

「め?」


危ない危ない。うっかり心のままに「めちゃくちゃ美味しかった!」って言おうとした

そういう反応、普通なら喜ばれると思うけど・・・こいつらにはウケが悪いんだよね

・・・本当は素直にお礼をいいたいけど、そういう生き物としてのお礼を言わなきゃ


『め、目障りで鬱陶しいと思っていたあんたの評価を変えるほどには、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ美味かったわ!』

「そんな風に思われていたの!?ありがとう!」

『ひっ!きもっ!ま、まあ視界に入れたくないから、ナメクジに昇格しただけなんだから!』

「ナメクジ・・・」

『次はカタツムリになれるよう努力と供物と殻を積みなさい!ざこナメクジ!』

「了解であります!」


『ま、まあ今日は予定が立て込んでいるから、帰るわね』

「またね、メル子様」

『じゃあね、ナメクジ。あと、昨日も言おうと思ってたんだけどさ、あんたの部屋超汚いんだけど〜。掃除出来ないタイプ?あ、もしかしてお母さんにしてもらってた感じ?ざぁこ。ナメクジの分際で誰かにしてもらおうとか考えないでよね。ざこナメクジなら自分で部屋の掃除ぐらいしなさいよ』

「ありがとうございます!引っ越し当初並みに綺麗にしてお待ちします!」

『ふんっ、ざこだからどこまでできるか察しが付くけど、期待しないで待っておいてあげる』


そう言い放った後、私は天界に戻る

今日は、いつもより少し楽しかったかも

スイーツを食べさせてもらったのは初めてだし、普通の会話らしいこともしたのも初めて


でも、これは使い方さえ間違わなければ・・・あの人間の生活を矯正できたりするのかな?

小馬鹿にして掃除させたり、まともになるようさり気なく罵りながら私が軌道修正していったら・・・

あの人間は、真人間にならないだろうか

性癖はあれだけど、それ以外はまともになれるかもしれない


『わ、私・・・この仕事で何をすればいいかやっとわかったかも!』


そうと決まれば後は実行するのみ

また呼ばれたいな、と思えたのは初めてだ

ワクワクしながら待っていると、お呼ばれの光が上に現れる

急いでそれの中に入り込むと・・・


目の前は、真っ白な空間が広がっていた


・・・なにこれ

テーブルも、家具も何もかも白

え、これ皇満の部屋よね?一日で何が起きたの?


「メル子様。いらっしゃい」

『ざこナメクジ・・・あんたこれどうしたのよ』

「掃除しろって言われたから、掃除しただけだよ。あと、今後も定期的に掃除しようと思えるよう、汚れが目立つように全部真っ白にしてみました!」

『やりすぎ〜・・・気が狂うんですけど〜・・・わ、あたしの目がざこになっちゃうんだけど〜・・・さっさと元に戻してくんない・・・?』

「えぇ!?」


なぜこれで怒られるの?みたいな声を上げた皇満を足蹴にしつつ、部屋を元通りに戻させる


変な人間に、噂話を聞かれたのかもしれない

自分の決意は間違っていたのかもしれない


そう後悔するのは、これっきりではない

悔しいことに、この頭のおかしい人間こと皇満との長い長い間柄は、これからも続いてしまうのだから

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