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93 今後を見据えて・・・

 俺は着替えを済ませ、父上の居る執務室へとやって来た。

 俺たちの覚悟はもう決まっている。

 他の二人にはまだ言っていないが、きっと賛成してくれると思っている。

 文句を言われるか、ビンタをされるかわからないけどな。


「父上。アレスです」


「かまわないよ。入りなさい」


 兄上は不在だったが、代わりにガドール公爵が肩を落として座っていた。

 二人共あまり寝ていないのだろうか?

 かなり疲れた顔をしている。

 俺と目が合っても、いつものように口角を上げることもなかった。


「お二人に頼みがあります」


「アレスにしては珍しいね。いいよ、聞かせて」


「できれば無条件で、了承してくれると助かります」


 ガドール公爵は、目を細め、じっと見てくる。ニッと笑い、席を立ち父上の隣に立った。

 真剣に受け止めてくれるようだな。さっきとは表情が全然違って見える。

 無条件というのは少し言い過ぎたか?


「まずは、ガドール公爵から。ハルトとレフリアを巻き込むことを許して欲しい」


「巻き込む? それは何に対してだ?」


「俺は、魔人討伐に出ます。そのために、あの二人の力をお借りしたい。いや、必要だから欲しいのです」


 二人は俺達のパーティーであり、俺のことを知らない人を入れるよりも、気軽な二人がいてくれる方が心強い。

 相手が俺なのだから、誰でもいいというわけにもいかない。


 ゲームであれば、四人という枠組みの中で構成しているためレフリアは外してしまったが、使えないというわけではない。

 五人も居ればかなり楽に行動できると思っている。


「魔人討伐にあの二人が役に立つと? そこの二人はどうなんだ?」


「二人も納得してくれています。後は、この場に居ない二人から話を進めたいと思います」


 ガドール公爵は腕を組み何やら考えを巡らせている。

 どう考えてもあの二人が強者の相手になるはずもない。

 ミーア達と行動させることで、ダンジョンに入ったとしても危険はかなり抑えられる。


「正直にいえば、魔人はお前にしか頼めないことでもある。ハルト等が決めたのなら、俺が口を出すことではない。バセルトン公爵家としてもお前に協力をする義理もあるのだからな」


「ありがとうございます」


 義理か……そんなつもりはないのだけど。

 ロンダリア伯爵のことと、ベルフェゴルのことを言っているのだろう。

 でもまあ、そういうことで納得してくれるのならありがたい話だ。


「メアルーン嬢は、俺の婚約者であることを認め、魔人討伐の参加を許してもらいたい」


「そうか。大事にしてやってくれるのなら構わん。メアルーン、異論はない、でいいんだな?」


「はい、異論など有りません。お父様」


 ガドール公爵は、あんな事があったにもかかわらず、メアリを本当の娘のように思っているんだな。

 いつもの調子が出てきたのか、ニヤッと笑い何とも悪い面構えをしている。

 次の問題は、二人の承諾と協力が必要になってくる。


「次に、学園の休学を申請します。復学の予定は当然ながら未定です。俺だけであれば最悪退学でも構いません。ハルト、レフリア、メアリの休学を申請します」


「なるほど、自由に動くために休学ということだね。ガドール、君はどうするつもりなんだい?」


「ミーアは、後日クーバルさんのところへ直接伺います」


 学園の卒業は、格式を重んじる貴族にとっては当たり前の話で、療養でもない限り休学の話になることはまず無い。

 俺の場合そんな体面は今となっては必要もないので、いまさら学園に在籍している意味はない。


「私としても、一応は卒業ぐらいは視野に入れて欲しいのだけどね。こちらの方から手を打とう。クーバルの方は私に任せて、承諾を取れるように話をつけておくよ」


「ありがとうございます。お父様」


 後で伺う予定だったのだが、父上に任せてもいいものだろうか?

 ミーアは父上に頭を下げているのだが、本当にこれで良いのか?


 ここまでは納得してくれる可能性は高かった。

 二人にとって、いやこの国にとって強者の存在は、驚異でしか無い。

 それに対抗しようとするのであれば、公爵家としても見過ごすことは出来ない話だろう。

 何より対抗策のない現段階において、俺という戦力に期待しているのは間違いない。

 だが……次がどうなるかが少し心配だ。


「最後に父上に個人的な頼みがあります」


「個人的? それは何かな?」


「パメラ・ストラーデとの婚約についてです。ストラーデ家に対して縁談を持ちかけてください」


「え? アレスさん?」


 パメラがこの事を気にしているのは分かっている。

 これが俺なりのけじめだ。俺はミーアだけじゃなくこの二人も守りたい。

 しかし、婚約者として名乗れないことをメアリの事があってかなり気にしていたのを知っていた。

 だけど、婚約者になるには俺たちの間の話で済む問題ではない。たとえ相手が平民であったとしても、親や保護者に了承して貰う必要がある。


「パメラ。受け入れてくれるな?」


「でも、私……私は」


 パメラは一歩二歩と下がり、首を横に振った。

 しかし、メアリが後ろから抱きしめ、逃げるパメラを抑えていた。


「パメラ。アレス様のお気持ちから逃げないでください。私と喧嘩までしておいて、この期に及んでそんな事、許せません」


「ミーア。だって……私。ストラーデ家の正式な人間じゃないから。そんな事言われても」


 正式な人間じゃない?

 それはどういうことだろうか? メアリのように養子ということなのか?

 それでも、もとから平民だったとしても養子に入った段階で、貴族の娘として扱われるのは当たり前のことだ。

 何か理由があるのだろうな。恐らくパメラに関わるシナリオに何かが……関係しているんだな。


「なら、君は何でストラーデの家名を名乗っているのかな?」


「それは……」


「私としては、アレスがようやく二人だけではなく三人を認めてくれたことが嬉しいよ。だから受け入れてくれないかな?」


「父上からは進めないでください。俺はパメラ自身から返事を貰いたい」


「わかったよ。私は書類をまとめることにするよ」


 普段兄上がいる場所にガドール公爵が座り、文字を連ねている。

 パメラは何度も首を振って拒んでいる。今まで、さんざん俺に付きまとって居ながらどういうことなんだ?


「それにしても、婚約者が三人とは随分と贅沢な話だね」


「俺なんてまだまだ可愛い方ですよ。何処かの誰かは、母上を事ある毎に連れ回して、勢いのままとある……」


 父上は、俺の胸ぐらを掴みあげ、そのまま壁まで押し当てて必死で隠そうとしていた。


「アレス? 余計なことは今は必要ないよね。大方セドラから聞いたようだけど、そんな事は口にするものではなくて、胸に納めておくものだよ」


「冗談です。ムキになれば自分から認めているようなもの。そして、その時にあにうぇばあっ!!」


 鋭い膝が、肉壁を越え内蔵を刺激していた。

 ほんとすみませんでした。

 お腹を抑え、蹲る俺を誰も心配している様子がない。


 ミーア、お願いだから溜息をつかないで。

 メアリ、額に手を当てて首を振らないでくれよ。

 パメラ……ドン引きしすぎだから、お前。

 少しぐらい助けようって気がないのかよ。


「大事な話を余計なことで折らないで欲しいものだね。ストラーデ家は、確かヘーバイン領にある所だね。うちのバカ息子が良いというのなら書状を書くけど……」


 バカ息子呼ばわりされたの初めてなんだけど……そもそも父上の行動が問題なだけだろ?

 言葉の暴力は反対です。物理暴力も!


「パメラ。実家に戻るまでに決めて欲しい。俺達と来るか、離れるかを」


「今のままじゃ駄目かな?」


「無理に決まっている。ミーアの説得もあったが、お前達の存在もあってのことだ。今更、手放すつもりはないからな」


「でも……」


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