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69 どうしてこうなった・・・

 俺たちが部屋に取り残され、ミーアは右腕をパメラは左腕を掴みここでようやく立つことが許される。


「二人共。こんな所まで来てくれて悪かったな」


「いえ、アレス様がこちらにいらしているのですから、私達が居るのも当然のことかと」


「そうですよ。アレスさんの隣は私達がいますから」


 そう言って笑ってくれる、この二人を前にしているにも関わらず、安心する気持ちが全く感じられない。

 掴まれる腕に入る強い力が、そう感じさせるのか……何時もとは明らかに違う様子に何かしらの危機感を覚えているのか?


「二人共、今日は随分と……」


 二人はニコっと笑うだけで、より一層力を込めている。

 要するに喋るなということなのだろうか?

 二人との約束を破ったことで、内心は怒っているのだろうな。


 だけど、しょうがないだろ?

 ダンジョンを攻略するってことはかなり時間がかかる。

 何往復もしていたということは勿論伏せるが、それでも時間のかかるということだけを強調するべきだな。


 ミーア達に連れられ別の部屋へ案内される。

 そこまで待ち受けていたものに、俺は背筋が凍る思いがした。

 パタンと扉が閉まり、俺はその扉へ目を向けてしまった


「どうしました? アレスさん、そんなに食い入るように扉を見て」


「よもや、逃げられるなどとお考えではないですよね?」


 二人は先程の笑顔は消え、明らかに怒っている。

 それもそのはず……彼女は綺麗なドレスに包まれ、俺と目が合うと深く頭を下げていた。

 あの時とは違って綺麗だと思える。この二人を前に、そんな姿に見惚れてしまえば黙ってはいないだろう。


 背中を二人に押され、椅子へ座るように促される。

 正座をさせられることがないのだけど、両脇に挟まれ、正面にはメアリが座っている。

 俺にはそんなつもりはなかったし、二人はただ誤解をしているだけに過ぎない。


「メアリ、えっと、大丈夫だったか?」


「はい。本当に有難うございました」


「それでは、アレス様? ご説明頂けますか?」


「ダンジョンで襲われている所を助けたんだよ」


「それだけじゃないよね?」


 二人は、顔を突き出し俺に詰め寄ってきた。何で俺はこんなにも信用というものがないんだ?

 嫌われるためにと作り上げたワンパックのせいか?

 メアリをあのまま放り出したことが原因か?


 それとも女とあらば見境なく襲うとでも思われているのか?

 大体そんな奴だったら、二人にだって無事じゃないはずだろ。そんな事、一度もしていないのだから分かってくれよ。


「それ以外何があるというのだ? 皆に何でこんなに疑われているのかこっちが聞きたいぐらいだ」


 パメラはともかく、ミーアとは未だ婚約は継続をしている。

 そのため、俺が連れ出してきたことを気にしているのだろうけど……。


「アレス様。私は心よりアレス様をお慕いしております」


 そんなに面と向かって言うなよ。


「な……ごふっ」


 二人にワンパックを掴まれ、ぎりぎりと潰されていく。

 無駄なお肉は非常に痛いんだ……俺は二人の手を掴み引き剥がそうにも、決して離そうとはしない。

 確かにメアリから不意に言われた言葉で、自分でも赤面しているのだろう。耳ですら熱い。

 だからと言って、これは流石にやりすぎっ!


「アレス様? お父様に何の責任を取れと言われて婚約者の話になりましたか?」


「ええっと……ごふっ」


 いい加減離してくれ、結構痛いから。

 ミーアの言う責任? そういえば……。


「よもや忘れたなどと、仰っしゃりませんよね?」


「確か……い、いえ。ミーアさんと一緒に寝ていたからであります。未婚の女性と閨を共にしたのであります」


 ミーアは、「確か?」と満面の笑みで言うものだから、強張って変な言い方になってしまった。

 なんというか、父上に少し似た所があるな……余計な事を吹き込まれたりしているのだろうか?


「私との出会いは覚えていますよね」


「ああ、襲われていたのを助けた」


「そうですね。アレスさんはその後も色々と、私を助けてくださいました。本当に嬉しかったんですよ」


 この尋問に何があるというのだ?

 いや……メアリは俺のことを慕っていると?

 ミーアとの婚約。パメラとの出会い。


 メアリは、バセルトン公爵家の養女として……つまり、この二人は?

 そして、喋ったというのか? あの時にあったこと全てを?


「アレス様のことですから。その程度、些細なことだと思われているのでしょう」


「ま、まってくれ。そりゃあんな所で危険な目にあっていたのだから、助けるのは当たり前だろ? メアリとは……何にもなかった。そうだよなメアリ?」


 俺の問に、メアリは先程から何も言わない。

 それどころか、メアリと目が合うと頬を染め俯いている……つまりだ、この二人がご立腹なのは、あの日の一夜のことを言っているのだろう。


 俺が小さくなって俯いていると、ミーアに顎を上げられ、その笑顔は目以外が笑っていた。

 今の二人にどう繕っても、見破られている。間違いなくメアリは全てを話している。


「ご、ごめんなさい」


「どうしたのですか? アレス様はとても立派なことをなされましたよ?」


「そうです。メアリさんだけではなく、この辺りの街を救った英雄なんです」


「だけどさ、そういう気持ちっていうのが、全然伝わって来ないのだけど? いえ、何でもありません」


 やっぱり、間違いなくメアリのことに対して、二人は怒っている。

 ミーアとの婚約のきっかけ、パメラとの出会いと。その両方を彼女は経験をしている。

 二人は俺を慕っているので、ミーアからすれば完全に浮気者として見られているのだろう。

 そんなつもりは無いが……あのお体ですからね。パメラからすれば敵そのもののようだ。


「た、確かにお前達の嫌がるようなことはあったにせよ。こればっかりは仕方がないとは思わないか?」


「仕方がないですか……」


 まてまて、何でそこでお前が落ち込むと言うんだ?

 そして、俺を掴んでいた手が離れると、二人はメアリに寄り添い慰めている。何なんだこの状況は?


「ミーアの時は俺の失態だったが、メアリの場合ダンジョンにいたんだぞ? 学園とは違いすぐにも帰れないし、それに何か事情もあるみたいだったからさ」


 メアリは、渦中にいるロンダリア伯爵の娘だった。

 そんな令嬢がダンジョンなんかに居たなんて思わないだろ? 

 その元伯爵は、父上たちの介入によりとっくに断罪されている。


 だけど、メアリには何も関与がなかったらしく没落したところを、バセルトン公爵の好意によって養女となっている。

 それはともかくとして、これまでに俺が行った行為、その責任を取らされようとしているのだ。


「やっぱり、アレスさんには無理でしたか」


「やっぱりってなんだよ。一体何の話をしているんだ?」


「アレス様。バセルトン公爵家三女、メアルーン・バセルトンご令嬢は一昨日に、アレス・ローバン様のご婚約者となりました。誠におめでとう御座います」


 へ? 婚約者? ミーアが居るのに?

 ていうか……一昨日?

 本人の意志は、安定の無しということか?

 ダンジョンから出てくるまで待つとかそういう話には……父上が居るというだけで無理そうだな。


「アレス様。その、末永くよろしくお願い致しますわ」


「つまり、メアリが婚約者になったということは、ミーアは?」


「私が何か?」


「怒っていたりするとか……」


「御冗談を、怒っていないわけないじゃないですか?」


 そう言って、ミーアからは再び笑顔は消え、ネックレスにしている指輪を握り締めている。

 婚約者である俺が、ダンジョンのような閉鎖的な空間に他の女性といたというだけで、当たり前だけどいい気分にはならないだろう。


 よりにもよって、メアリが俺の新しい婚約者になるなんて……。このままだといつ日にかパメラも同じように婚約者にされる日が来るのか?

 ゲームとは違うシナリオを突き進むが、おそらくこれは……改変による俺に対しての妨害なのか?


 そうだよな。この世界はゲームなんだから、改変が付きまとうのは当然……か?


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