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42 ダンジョンでお泊り

 あの二人は何をしているんだ?


「宿代も浮くし私はいいと思うけど……」


「はい、そのようですね……」


「何か気になることでもあるの? 大丈夫よ、いくらアイツでも変なことはしないって」


 レフリアは本当に失礼なやつだな、俺はまだ何もしてない。

 余計なことを言うな、変な空気になっているだろ?


「それだと、その、いろいろ困ります」


 そんな必要ないんだから、全くこいつは……パメラの頭の中がおかしいだけだ。


「また僕を閉じ込めるつもり?」


「ハルトが結界が嫌だというのなら、一人だけ外でも俺は別に構わないけどな。俺達はこれ使うから」


 冒険者ご用足しのコテージ。かなり大きいが、収納のおかげで問題なく仕えるのが便利だよな。

 ゲームだと消耗品でかなり高いが、こっちだと数十倍の値段には驚いた。

 ギルド長に頼んで一つ融通してくれて助かった。

 中は普通の一軒家位あるらしい。


 冒険者達は見張りをしながら休む。俺の場合は、結界があるので全員が休むことが出来る。

 終盤にもなれば殆どの時間ダンジョンにいることになるから、ここぞという時に使えるアイテムだからな、持っていて損はない。

 

「なるほど、こんな風になっているのか」


「アレス様は初めてなのですか?」


「ああ。俺の場合はアースウォールで覆って、寝袋で寝てたから。子供の頃からそうしていたからもう慣れているけどな。」


「どんな神経しているのよ。アンタを一人にしておくとろくな事にならないわね」


 随分と酷い言われようだな……ダンジョンで寝るぐらい、他の冒険者もやっていることだぞ?

 ここだって、まだ五階層なのにこんな時間になっている。疲れたまま俺だって戦うことが出来ないのだから寝るに決まっている。


「ねぇ、ミーア。こういう場合って、普通テントよね」


「お前たちはテントが良かったのか?」


「あのね、アレス・ローバン。コテージってどういう時に使うと思う?」


「こういうときだろ?」


「これを使う冒険者は、普通にダンジョンの外よ。外!」


 そと? そとって外か?

 いやいや、そんなことをしていたら意味がないだろう?

 レフリアは何を馬鹿なことを言っている。


「こんな邪魔で重たい物は、アンタのように空間魔法が使える人ぐらいなものよ?」


「確かにレフリア様の言うとおりですね。アレス様でしたらと考えてましたが……空間魔法を使える方は稀ですから」


 確かにコテージを運ぶのなら、荷車は必要になってくるな。

 重さもある程度軽減されているとは言え、収納ならともかく運びたいとは全く思わないな。

 運ぶのだとしたら、馬車を使うということか?

 ダンジョンの中でもか?


「なあ、レフリア嬢よ……」


「どうしたのかしら? 今更ながら、自分がどれだけ規格外な事をしているのか理解できたの?」


「それは本当なのか? 俺としてはそのほうが信じられないんだが……」


「そういう事を言っているから規格外なのよ。空間魔法は簡単に使えるようなものではないのよ?」


 そうは言うが、セドラもこの魔法を使っているのだから、それほど特別な魔法とは思えない。

 レフリアの言う簡単に使えないとはどういうことだ?


「それを使っている俺が、頭のおかしい言われ方に聞こえるが?」


「少しは自覚したら?」


 俺が頭のおかしいということを一切否定する気がないようだな。

 お前たちだってやろうと思えばできることを、そんな言い方をされると少し腹も立ってくる。


「追い出すぞ」


「アレス様。そのような事は嘘でも冗談でも言わないようにしてください。いいですね?」


 ミーアに軽く怒られるが、それもちょっと可愛いとか、本当に反則だよな。

 人差し指を立てて、胸にとんとんと押し当てているのだが……なんかこう言うのもいいな。って、俺は何を考えているんだ。


 コテージの中はリビングと、部屋も二つあって中にはベッドが二つ備えられていた。

 それほど質がいいとは言えないが、これだけの物が収められているのだから、多少高いのも頷けるな。

 問題は四人は寝られる。俺達は五人だから……誰かが溢れるということになるな。


「じゃあ俺はここの床でいいよ。ダンジョンの時と変わらないからな。ハルトとレフリアは別に一緒の部屋でも問題はないだろ?」


「なっ!?」


 以前から使っていた寝袋を取り出した。ついでに、夕食の食材を取り出し始めた。お金は結構余っていたので、次から次へとテーブルに置いていた。


「だ、だめです、床でだなんて……わ、私なら、一緒にでも良いですから!」


「私を選んでください。アレス様」


 待て待て、いくら二人が良いとはいえ俺がその状況で寝れると? 

 この俺に悟りでも開けとでも言うのか?

 本当に分かっていないな……賢者という者はだな事後に現れるんだぞ?


「逆に聞くが、お前たちはそんな状況でまともに寝られると思っているのか?」


 前世でも、魔法使いに成りかけていた俺に何を求めているんだよ。

 大体そんな事で真っ赤になるぐらいなら言わないでくれ。

 かわいいだろうが……じゃなくてだ!


「二人共、勘弁してくれ。俺は大丈夫というか慣れているから気にするな」


「アンタはベッド使いなさいよ。私はミーア達と一緒に寝るから。ベッドを繋げれば三人ぐらい大丈夫よ」


「それはそうですが……」


 ああ……なるほど。しかし、お前はそれで良いのか?

 別にハルトと二人で一緒に寝るという状況ではないのだし、ハルトも俺が毎日味わっている苦しみを分かち合って欲しいと思ったんだがな。

 しかし、レフリアの方に抵抗があるのか。

 二人には、少しハードルが高かったか……ハルトもだいぶ気にしているようだけど。


「それで良いのなら、俺は別にいいぞ」


 ミーアと目が会うと、頬を染め恥ずかしそうに俯いていた。

 パメラは俺の側へと近寄り後ろから服の裾を引っ張っていた。

 ポンポンと頭を撫でると、気が済んだのかキッチンの方へと向かっていた。


「レフリアの提案でいいとするか」


「あ、アレスは本当に色々持っているよね」


 こっちも、色々と想像していたみたいだな。話を変えようとしているがバレバレだぞ。

 ハルトは二人きりを気にしているが、レフリアは何か思う所があるようだな。

 二人共婚約者も居ないし、だけど二人は互いに惹かれているのは、ヒロインからして当然そうなる。


 とはいえ、それに見ているだけ鬱陶しいから、さっさとハルトが告白でもして付き合えばいいだろと思う。

 この考えはミーアも同意見らしい、俺達が余計なお節介をしても結果すぐに良い関係になるということもなさそうだ。


 この世界は例え平民だろうと王族を除き貴族との結婚はよくある。

 もちろん、それなりに作法や魔物との訓練も必要にはなる。

 レフリアの家のことまでは分からないが、相手が公爵家のハルトなのだから反対されるようなこともないと思うのだけどな。


「ちょっといい?」


「なんだ……?」


 淡々と食材や調味料を取り出していたのだが腕を掴まれていた。


「何時まで出しているのよ。どう考えてもこんなに要らないでしょ」 


「出せと言ったり出すなと言ったり、全く面倒なやつだ」


 文句を言いつつも、出していた色んな食材を収納に中に収めていく。

 


「アンタにはせめて中間というものがないの? 五人分なのだからそれぐらい分かるでしょ? というか、私は出せとは一言も言ってないわよ。アンタが勝手に並べ始めたんでしょう!?」


「それはいいとしてだ。料理をしない奴に言っても、分かるわけ無いだろ? よって、お前が悪い」


 すかさずレフリアのビンタが俺の頬に直撃する。

 何でこいつはこんなにも手が早いんだ?


「アレス様。いくら何でもそのような発言は……」


「全くなんなのよ、そんなことで威張らない。ミーア、やっぱり考え直したほうが良いわよ?」


「い、いえ……私がアレス様のお食事を作りますので、別に」


「聞いた私が馬鹿だったわ。ほら、アンタ達はやることがないのだから、そっちで座ってて」


 ハルトは「アレスもその辺で」と言い、食材を俺に手渡していた。

 テーブルが片付くとレフリアに突き飛ばされるように押され、俺は不貞腐れたまま床に座った。


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