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41 ハルトには仕返しを・・・

 連戦ということもあり、さっき色々と買っておいて正解だったな。

 以前のように、物を取り出し二人の前には小さなテーブルを置いて、とある物を並べるとじっと見ていた。


「はわわ。アレスさん、これ本当にいいんですか?」


「頑張った二人のご褒美だ。遠慮なく食べろ」


「はい、いただきます。ですが……」


 その物体を凝視する目があるからか、ミーアは食べるのを躊躇していた。

 女の子の大好きなプリンが、目の前にある。しかし、こんな事もあろうかとレフリアには既に食べ物を手渡している。まあ、小さなパン一つだけ。


 とはいえだ、最初に渡してあげる俺の優しさに感謝するんだな。

 レフリアはパンを咥えたまま、恨めしそうに二人ではなく俺の方を見ている。


「そりゃ分かるよ。二人はアンタにとっては特別だよ。でも、これはあんまりじゃないの?」


「まあまあ、僕の分も上げるからさ」


「ハルトはブレイブオーラはどうだ、やっぱり扱いにくいか?」


 いきなり使ったことでかなり戸惑っていたが、それでもかなり動けていたほうだ。

 さすがの俺でも、始めての魔法を実戦から使おうとは思わないけど。


「そうだね。いきなり感覚が変わるとついていけなくなるね。でも、使える魔法だと思ったよ。僕は魔法が使えないから……」


「それほど難しくはないぞ。お前なら三ヵ月もあれば習得できるんじゃないのか? けど、魔力消費はかなりなものだ、多用が効く魔法じゃない。さっきのような場合だと力で押し切れる可能性も出てくるからな」


 使いこなせるかは実戦が重要だろうな。俺が何度もかけることで、覚えやすくなるのなら良いんだけどな。これが使えるようになるのが、二年生あたりだっけか?


「一方レフリアには、特別強みがない」


「わかってる。剣術も魔法も弱いのは知っている」


「だから丁度いいんだよ。ハルトは大剣を振り回すしかできない。スキを突いた攻撃、そしてハルトが距離を取れば魔法でスキを作ることだって出来るだろ。一人で倒すんじゃなくて常に二対一を優先しろ」


「そんな都合よく行くわけ……」


 確かに都合のいい話だ。俺のようになるか、複数で戦うが必須になってくる。

 王子のように数を揃える、この世界では十分必要なことだ。

 ゲームのように、複数の魔物が出現した場合、範囲魔法を使うことで有利な戦い方ができる。


 それが現実だとどうなるか……パメラの使ったバーストは単体魔法であり、上位からは範囲魔法になりにバーストロンド、最上位にエクスプロードがある。

 ゲームなら当然使えた。現実では使えない……こんな狭い空間でこの魔法を使えば仲間に危険が及ぶ。

 そのため、学園でも単体魔法のみ教えているようだ。


「仲間なんだろ? お前らは各個撃破。ミーアとパメラはその速度で回避を優先する」


「なるほど、って言いたいけどそんな簡単に行くかしら?」


「レフリア。ほれ、機嫌を治せ」


 そう言ってプリンを差し出したのだが……ハルト、お前はどうしたんだ? その剣をどうするつもりだ?

 そもそも、大剣を片手で持つとか、本気で頭おかしいんじゃないのか?


「アレス? リアにどうして?」


「まて、話を聞け。ちがう、違うから別に口説いてないから。落ち着け!」


 当てるつもりは多分ない、無いよな? その状態で近寄ってくるんじゃない。

 確かに軽率な行動だったのは認めるが、前にも上げていたときには何は言わなかっただろ?

 何を考えているんだ、こいつは……?


「僕の……プリンは?」


「は? ぷりん? いや、もうねぇよ」


「アレス! 僕は、甘いものが好きなんだ!!」


 座っていたハルトは大剣を振り上げていた。

 ハルトの目つきが、獣を狩るかのように凶暴な目つきへと変わっている。


「レフリア、こいつをどうにかしろ!」


「うん、美味しい」


「呑気に食うな。いいから止めろ!」


 つ、疲れた。何でこんな所まできて走っていたんだ?

 それでいて、あのバーサーカーは何で呑気にドーナツを食っているんだよ。

 前回出したことのあるドーナツを、何個か放り投げたことでハルトの暴走は止まり、ようやく開放された。

 一応俺達はパーティーであり友達なんだよな?


 その友達に対して、あんなバカでかい剣を振り回して脅すものか?

 だいたい、甘いものが好きだったら最初から言ってくれよ。

 次からは人数分用意しておこう。特に甘いものに関しては、何個でもあったほうがいいな。


 慌ただしい休憩も終わり、パメラやミーアの爆裂を使って敵を呼び寄せ、ハルトには強化魔法をかけて俺はサポートに徹していた。

 魔物との戦闘も順調に進み、五階層へと辿り着いた頃には皆の顔には疲れが出ていた。


「そろそろ夕方だよ?」


「今から宿屋は空いているかしら?」


「戻るつもりだったのか? 五階層まで来たから俺はてっきりここに泊まるのかと思っていたぞ?」


 まさか、こんな所まで来て引き返すことを考えていたなんて驚きだった。


「アレス様はダンジョンで寝泊まりをしていたのですよね?」


「ああ、戻るのが面倒だからな。冒険者たちもそうやっているだろ?」


 冒険者たちもテントなどを使って、ダンジョンで野営することもある。

 俺はダンジョンで寝泊まりをしていたから当たり前だったが、父上やセドラからはダンジョンは一人で寝るものじゃないと何度も言われたことがある。


「子供の頃と違って、今は魔晶石で結界を張って寝てる。スォークランに居たオーガに踏まれようがびくともしない。だから、ここだと問題はないだろう」


「ま、魔晶石? そのような物を一体どこで?」


 魔晶石は鉱山で稀に採れる、とても希少価値の高いものだ。火魔法を溜めれば、石に込められた魔力が尽きるまで発動することも可能だ。

 空になれば、別の魔法に変えることも出来る。実践にはあまり実用性もないので、結界の魔法を入れているので外部からの侵入は不可能にしている。


 この魔晶石はダンジョンを攻略したことで、無理やり父上から貰ったものだ。

 間違っても色々と貴重な物を置いてあった倉庫に夜な夜な忍び込み物色して、探し当てていたということは一切ない。

 好きなものを持っていくと良いと言ったのは父上だから何の問題もない。


「とりあえず、見てみるのがいいだろ。ハルト動くなよ。四隅に魔晶石をおいて、この水晶から魔法を発動させる」


「光の壁みたい……触った感じ何というか不思議な感じがします」


「それじゃあ燃やすからな」


 俺の両手には、大きめの火球を作り出す。

 俺が今から何をするのか、中にいるやつが一番理解しているようだった。


「アレス? それは大丈夫じゃないと思う。さっき追いかけたのは謝るから、ここから出してよ!」


 ハルトは身振り手振りで何かを言っている。お前には説明してなかったけど、音も遮断しているから何言ってるか全く聞こえないんだよ。

 俺が口角を上げると、ハルトの顔を引き攣っていた。


「ははは。その中で逃げようとしても無駄だ。あーーはははっ」


 燃えさかる炎を結界へと投げつけるが、一瞬にしてかき消える。

 それを何度も繰り返し、ハルトは中で暴れまわっている。


「という感じだ。中からも外からも同じようにここで消える。パメラも触っているから分かると思うけど、物がないのに進まないようなそんな変な感じがしただろ?」


「うん。攻撃をしても止まるみたい。すごい魔法だよ」


「あのさ、それは分かったけど。ハルトをそろそろ開放してあげたら?」


 結界を解くと、ハルトからの抗議を受けつつレフリアが宥めていた。

 さっきの仕返しだと、言った所で俺はレフリアから放たれた強烈な拳が、腹部へとめり込んでいた……パメラからは自業自得と言われ、ミーアはただ困った顔をしているだけだった。

 仲間で友達なんだよな?


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