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40 新ダンジョン

「今まで通り指示は私がするけど、アンタは後方から何かがあれば指示をして頂戴。それと、私達が危険だと思ったらアンタの判断で、討伐をお願い。それでいい?」


 妥当な判断だろう。

 俺は完全に後方支援をすればいいだけだな。

 皆にとっては、初めて扱う武器だから優位な戦闘にすればいいだけだな。


「了解だ。それで、今日は一階層に留まるか? 俺としては三階層なら多分人も居ないし有り難いんだが……もう少し頑張りたいのなら五階層がいいのかもしれないな」


「そうね、私達をちゃんと守ってくれるのなら、それもいいかもしれないわね。それにアンタを見られると後々面倒だし」


 面倒?

 レフリアは何を気にしているんだ?

 俺の行動がおかしいから秘匿にするということだろうか?


 ああ、なるほど。さっき言っていた有望というのは、他からの引き抜きを警戒しているのだろう。皆には離れるようには言ったが、今はそんな事もできない状態だから気にする必要はないのだけどな。

 例え離れていたとしても、定期的にミーアのことは見守るつもりだったし、今はこうして仲間として行動をしているから堂々と近くにいる。


「大丈夫だ、安心しろ。何があってもちゃんと守ってやるから」


「あ、アレス!? ちょっといいかな?」


「ん? どうしたハルト」


 俺はハルトに呼ばれ、近寄るが手を引かれ皆とは少し離れる。

 何の話をするつもりなんだ?


「おいおい、そんなに離れることはないだろ?」


「ああ、ご、ごめん」


「それでどうした?」


「あ、えっと……ぼ、僕は負けないから」


 ハルトはそれだけ言って、戻っていくが……残された俺はどうしろと?

 そんなハルトを見ていたが……二人からの視線が一瞬突き刺さるような気がした。


 魔物を倒しながら奥へと進むが、戦闘は四人に任せているので俺の出番はまったくない。

 風魔法を使って一体だけになるようにしているから、それ以外何もしていないのだ。


 それにしても、パメラとの連携はすごいな。魔法での援護もいい、けれどレフリアはハルトに任せすぎるな。同時攻撃も悪くはないが、攻撃はずらしたほうが相手も回避しづらい。

 万能型故の問題なのだろうか?


「ハルト。ちょっと体に負担はあるだろうけど、お前なら何とかなるだろうから体験してみろ。ブレイブオーラ」


「えっ? ちょっと」


 この魔法はハルトが得意とする魔法の一つ。得意というよりも特権に近い魔法、この魔法があるからゲーム中盤から授業パートで習得できるようになる。このおかげでハルトの強さが際立ってくる。

 自身の全能力を底上げすることで、物理攻撃最強の化け物になる。


 ブレイブオーラを使うことでどのキャラよりも最高のダメージを叩き出す。

 欠点は魔力量、つまりMPが少ない。ハルトには短期決戦での使用しか出来ない。この世界だと俺が使えてよかったのかもな。


「何でよたよたしているんだよ」


 ただし、現実に置いてこの魔法の致命的な欠点がある。ゲームであればただ数値が増えるが、能力が上がるということは、剣の重量感、鎧の重さ、自身の速度が今までとは全く違う物に感じてしまう。

 俺も慣れるまでは苦労したものだ。

 案の定、無理矢理に強化されたことで、ハルトは体の動きがかなりぎこちないものになっている。


「これはもしかして強化魔法? リア、危ない」


「大丈夫よこれぐらい。ハルト、アイツが魔法を使ったのはハルトが弱いからじゃない。ハルトならその魔法を使えると思っているからよ」


 お、レフリアにしてはいいこと言うな。

 この二人の立ち回りだけでも、戦力は確実に変わる可能性はある。

 補助魔法はレフリアが初めて使えるようになるが……その先のことまでは俺は知らない。


 この二人が一緒に居たほうがミーアとの連携にも役に立ってくるだろう。

 パメラは、しょうがないか……俺と一緒に居たことでハルバードを上手く扱えるはずもないか。


「そうだと良いんだけどね、全く相談もなしに、いきなり実践というのもどうかと思うけどね!」


「それは私も同感よ。アレスだからね、本当に何をするか分からないわ」


「そうだね」


「ハルト、いま使った程度の魔力だとせいぜい十分程度だ」


「分かった」


 お前は教えるよりも実践型のタイプだろ。あんな物を振り回すだけで脳筋確定済みだからな。

 教えるよりも実践を何度も積ませた方が良さそうだ。レフリアも馬鹿じゃないし、あの状況でも周りを見ているからそのうち慣れるだろう。


 見えないレベルを上げていくしか無いのだから、魔物をひたすら討伐するしかないか……だとしたら、アイツに任せるか。


「パメラ。バーストを使え」


「でも音が……あ、本気、なんですね。気にするだけ無駄ですね」


「アレス様がついておられますから。それにしても、学園の時とは違い、昔から頼もしいお方です」


 実践とゲームではまるで違い、武器の攻撃力が上がった所で致命的なダメージにはなっていない。

 加えて攻撃を食らったり、スタミナ切れを起こせば当然不利にもなる。

 HPが一桁であろうとも平然に動けるのがゲームだ。骨折でもすれば動けないのが現実。

 この段階で、リザードマンを相手にできているのだから、武器を新調しておいてよかったと思う。


「バースト!」


「お見事です」


 内部からの爆発にさすがのリザードマンも耐えられなかったか……まあ、そりゃあの音ならよってくるよな。前と後ろからか。

 さと、これをどうしたものか?


「すぐに前方から、三体。後方から二体がもう少しで来るぞ」


「来るぞ、じゃないわよ。どっちも倒しなさいよ」


「何言っているんだ、これぐらいでへこたれるんじゃねぇよ」


「分かりました。見ていてください」


 苦戦にはなるだろうけど、ミーアの意気込みに免じて後方だけは倒しておいた。

 ミーアが前に出られると、俺も無茶はさせられなくなってしまうな。

 つくづく甘いな、俺は。


「後方は排除した。防御魔法をかけてやるから、数回なら凌いでくれるはずだ」


「あとで覚えてなさいよ!」


「ごめん、私が魔法を使ったから」


「お気にすることはありません。アレス様の指示でしたから……ですが、お側に立てるのならこれぐらい。こなしてみせます!」


 ハルトを前にし、後ろにレフリア、後方にミーアとパメラ。

 大剣が薙ぎ払われ、その大きな反動を止めることなく、もう一歩踏み込んだ一撃を浴びせる。

 盾で防がれたがその衝撃により大きく吹き飛ばしていた。


 強化しているとは言え、馬鹿力にもほどがあるだろう。

 レフリアがライトニングを放ち、一体をおびき寄せるが二体向かってきている。


「行きます!」


 パメラとレフリアで二体に対して応戦する。

 こうなれば、ハルトのでかい剣を振るうのが難しくなってしまう。

 リザードマンが持っている武器を振り上げると、レフリアは後ろへと後退してハルトの隣に立つ。


「まだ行けるわよね?」


「もう一体残っているから、先に一体を仕留める必要があるよ」


「そうね」


 吹き飛ばされたことである程度ダメージを受けているのか、こちらへと向かってくる速度は遅い。

 それでも、ほんの数分程度だろう。


「ダメです。今使えばきっと多くの魔物が来ます」


「そ、そんな事はわかっているけど……」


 パメラにはまだあの武器は重すぎるな。

 突くなり薙ぎ払うなり、その動作一つ一つが遅い。そのため、ミーアが側面や背後からの攻撃ができなくなっている。


「危ない!」


 パメラがバランスを崩してしまい、代わりにミーアが攻撃を繰り出していくが、与えるダメージはどれも小さい。

 これだけ戦いが続くと、こうも簡単に崩れてしまうか。


「ハルト!?」


「くっ……リア、今だっ」


 強化が解けるが、武器と盾を使ってハルトの攻撃を防いでいる。

 しかし、レフリアが側面へと近づくと、その長い尻尾を器用に使い、ハルトを牽制すると後ろへと逃してしまう。


「さすがにここまでだな」


 氷の大剣を作り出し、リザードマンにとどめを刺していく。

 連戦の戦闘が終わり、皆はその場に座り込んでいた。


「あの馬鹿のせいで……」


「途中から強化が切れて……アレス、酷いよ。何でもう一度掛けてくれないのさ」


「ミーア大丈夫なの?」


「は、はい。私は大丈夫ですが、少し疲れました。パメラさんはお怪我、大丈夫ですか?」


 拍手をしながら近づく俺に、レフリアは睨みつけていた。

 そんな事はお構いなしにパメラにはポーションを渡して、ミーアにはハンカチを渡していた。


「上出来と言ってもいいのか分からないけどな」


「アンタどういうつもり……なの?」


「余裕そうだな。近くにまだいるけどどうする?」


 俺がそう言うと、二人からは助けてと目で訴えられ、少し奥にいる女性は鬼の形相をしている。


「あ、アレス様、流石に今の私達では……」


「少しだけ休ませてくださいよ」


「わかったよ。休憩するか」


 風魔法を飛ばすと二人はホッとした顔をしている。

 俺はそこまで鬼じゃない。あの戦いである程度の実力は図れた。

 課題も多いが、他の生徒達よりも多くの実戦ができるので問題を少しずつ減らしていくしか無いだろう。


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