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30 装備品はまともに買える気がしない

 皆と分かれてから数時間が経った頃、一人で別の街に来ていた。

 ロロソカの街。王都からはそれ程離れてはいないが、馬車を使ってでも丸一日はかかる。

 ゲームと同じように移動に時間がかかるのは当たり前だが、風魔法を応用して浮遊魔法を使える俺には二時間もあれば辿り着くことが出来る。

 遅めの出発ということもあって、夕暮れの飲食店が立ち並ぶ街は活気に満ちていた。


「それにしても、久しぶりの一人だな」


 元々一人でいる時間が長すぎたからか、誰も居ない一人の時間が気楽になっている気がしていた。

 この街はゲームだと、最初に来る街であり新しい装備を買える所でもある。

 王都にももちろんあるがどれもが兵士のためだ。たとえ近くにダンジョンが出現したとしても、兵士が毎日巡回もしているので王都は平和そのものだった。

 そのため、王都には冒険者が滞在している数は少ない。


 あえてここまで来たのは、ハルトが言っていた物価を確認するためでもある。

 俺と同じように制服を着ている人は一学年上の生徒なんだろうな。

 しかし、周りからはジロジロ見られるのはこの体型のせいなのだろうが一々気にもならない。


 喧嘩を売ってくるのなら話は別だが……ここは学園の外だ。その制服を着て暴れでもしたら即刻退学を言い渡されるから、そんな事は早々に起こるものじゃない。

 目的の武器屋を探して街を歩きだした。ただ歩き回っただけでは、見つけることも出来ず、街の人に聞いてみた。


 当たり前かもしれないが、武具屋は三店舗あるらしい。

 王都に比べればそこまで大きくはないが、ここもそれなりに大きい。よくよく考えれば街だとしても、ゲームのように一店舗しかないのも逆におかしな話だよな。

 外観が良さそうな所の武器屋へ入ると、これも当たり前だが数多くの武器が並んでいる。


「何だお前は」


「見ての通りこれでも一応、ラカトリア高等部の生徒だよ。少し見せて欲しい」


 胸についていた刺繍を見せる。

 ワンパックボディのおかげで前を閉じていない為、制服だと分かりづらかったのかも知れないな。


「ちっ、好きにしな」


 なるほど、そりゃそうだよな。冒険者達もいる街で、低レベル装備ばかり置いているはずはない。ハルトが言うように、俺が知っていた物とは違いかなり高い。

 もちろん質の悪い物もあるが、宿代やポーションよりも安いなんてことはない。


 大剣だとしても一番安くて十五万。それを買うぐらいなら、こっちのグレートソード二十五万? 上位なのかクレイモアが四十万。

 ボッタクリなのかここは……と、つい思ってしまう。


 学園のダンジョンでも一体あたり一から四程度のお金が手に入るのだが、この世界だとギルドを通じてお金を手に入れるしかない。

 冒険者達が重宝されているのだから、もしかするとギルドから貰える報酬はゲームよりももっと多いかもしれないな。


「大剣か、お前がそれを持てるのか?」


「俺が使うわけじゃないんだけど……友人というか知り合いだよ」


「お前みたいなのが友人ね……学生ならここにあるものは到底手が出ないだろうよ。最近じゃ、鉱山にもダンジョンが出たらしいからな」


「鉱山に? もしかして、材料が少ないからこの値段なのか?」


「今はまだいいが、今後は値が上がるだろうよ。それでも、ガーランやミスリルは問題はないようだが」


 ガーラン鋼。軽くて硬い金属という設定だったか? ミスリルはその上位に位置するゲームでも最高級品の一つだ。

 それでも、この価格はゲームの軽く十倍以上になっているな。

 この町で手に入れる装備はどれも数百程度だった。高くてもせいぜい三千程度で買える毒耐性がついた装飾品のはず。


 そもそも、大剣はこの次の街にあるはずなんだが……現実世界だとこれが当たり前なんだろうな。程度の低い武器だけを売っているのはゲームの仕様であって、現実的に考えれば即廃業になるよな。


 振り下ろすのなら、腕の力だけじゃなくて武器の重さも重要だよな。

 ハルトが強化魔法を使えるようにもなれば、防御すら無意味な一撃をアイツならやってのけるかもしれない。


「重さに慣れていないかもしれな……クレイモアでも大丈夫だな」


 そんな事を考えるまでもないか、アイツが大剣に惹かれているのは見ていれば十分わかる。

 魔法が切れる度に呼ばれるし、解除されると気落ちすらしていた。

 あいつは屈指の脳筋だから、剣の重さなんてものは力づくで使いこなそうとするに違いない。

 どうせなら、他の三人の武器も一応見ておくか。


「あと、長剣とレイピアの良いものはないか? 後ついでに槍も普通ので、使うのは俺より少し背の低い女の子だ」


「女物か……槍なら、これを試してみると良い。多少重いが薙ぎ払いにも使える。長剣ならロングソードだろうな。こんなのもあるぜ?」


「刀? 刀がある!」


「なんだ、知っているのか。今はこれ一本しか無いがよ、グルーザイドではよくある武器らしいぞ」


 グルーザイド……確かその地名は公爵領だよな。設定だけで行くことはなかった場所だった気がする。

 シナリオと関係がない所も今は行こうと思えばいけるんだよな。


 しかし、レフリアに刀か……それなりに似合うとは思うけど、技量が必要になる武器よりも、今は無難な長剣が良いだろう。

 パメラ用の槍はハルバードを勧めてきたか。パメラの力もそれなりにあるし、まあなんとかなるだろう。例え使いこなせなかったとしても、パメラが悪い、でなんとかなる。


「刀は多分使いこなせないと思うから、他の長剣はないか? 片手でも両手でも扱えるもので」


「そうだな、片手と両手で……ちょいと値は張るがガーランソードはどうだ? 学生のお前には土台無理だがな」


 あまり思いたくもないが、あのパーティーの中でレフリアは重要な立ち位置にいる。

 リーダーということは無視しても、レフリアは二人よりも今は十分に強い。

 爆裂を使えるとはいえ、ダンジョンでは基本的に使えない状況だ。

 決定打の低い二人に比べ、ハルトとコンビをこなせるあたり軍配は上がる。

 それに二人が早く魔物を倒せるのなら、ミーアの危険性も下がるだろう。


「思っていたより軽いな、これが良いと思う。それとレイピアはなるべく良いのが欲しい、特にレイピアは」


「そう急かすなよ……ミスリルで作られたこのエストックなんかどうだ?」


「ミスリルか……今の四つでいくらになる?」


 価格が元々高いから、予定していた金額は途方も無いだろうが、この出費は必要なものだ。

 俺が抜けたら、今のパーティーではミーアが危険になる可能性が高い。

 レフリアがリーダーのままなら、早計な行動は取らないだろう。

 グルーザイドから出回っている刀か……それにしても刀なんて誰が使っているんだ?


 ゲームでもアイテムとして見たこともない……別のキャラを使ったとして進めていくダンジョンに違いも、売っている装備も変わるはずはないと思う。

 だとしたらこれは未知のアイテムも存在しているということだろうか?


 そう思って店内を見渡しても、やっぱり杖はない。僧侶の定番というかフレイルやメイスならあるけどなんでそうなったのだろう……ハルトにウォーハンマーとかでも面白そうだな。

 ムキムキになったあいつがタンクトップで……無い無い、想像したくもないな。


「まあ、ざっと三百九十万ルーリだ」


 かなりぶっ飛んだ金額だな。

 必要な金額はこれでいいとして、後は魔物の換金について調べる必要があるな。


「わかった、いろいろとありがとうな。できるだけ早く買いに来るよ」


「気にすんな。こっちだって売れるとは思っちゃいねぇよ」


 後はダンジョンに籠もるしか無い。

 ここだとミーカトのダンジョンだな。中はリザードマンの巣窟だったか?

 そんなに強い相手でもないだろうし、今から行っても問題はないよな。


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