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25 二階層

 二階層の魔物は打撃に強いスライムとたまにオークが出現する。

 オークはHPが高く、このゲームで初めて苦戦をする魔物だ。救済措置なのか初級ダンジョンということもあってか、オークが出現する場合は常に単体でしか現れない。


 そう、ゲームであれば必ず一匹だけで出現する。だが、この場に置いてそれはありえなさそうだ。

 断定は出来ないが、索敵の反応からして単体で行動をしている魔物がいない。

 せめて魔力の大小が把握できればいいのだが……それをどうにか改良をできるといいのだけど。


「それにしても、不思議だよね。一つ降りただけで、壁の色が変わっている」


 ハルトは壁を触りながらそんな事を気にしていた。

 実際に見るとやはり不思議なのだろう。俺にとってはこういうものだったから、特に気にも止めなかった。

 ダンジョンの壁なんて画面越しにある背景でしか無い。それに、ダンジョンで暮らしていたこともあってか、今更気になるようなこともない。


「そうね。最近言われているのは、ダンジョン自体が一種の魔物。そして、その中は全くの別次元であり、ダンジョンの壁は大魔法を使っても壊れないらしいわよ」


「はい。私もそれについては聞いたことがあります。ただ、全てに共通しているのがコアを破壊すれば、ダンジョンが消えてなくなり、中にいた人は外へと投げ出される。その事を踏まえて、ダンジョンは魔物であると」


 なるほど、そういう解釈なのか。

 ダンジョンが魔物とは面白い例えだが、コアを破壊した時のステータスが上昇するという話はないようだな。ミーアの言うようにダンジョンが光りだして気がつけば外にいたな。

 この設定もゲームだと当たり前の話だ。


 ダンジョンで一番気にするのなら、何処の場所も壁が薄っすらと光を放っている。そのため、松明や魔法で明かりをつけなくても、ある程度の距離なら何も持っていなくてもこうして平然と見ることができる。

 壁が光っているにも関わらず、奥へ続く道は、ある程度の距離を境に真っ暗になって先を見ることが出来ない。


 ミーアが言っていた、大きな空洞が森になっているダンジョンなら知っている。それだけではなく、迷路だったり岩肌だったり、氷漬けになっているものと多種多様にある。

 だけどそれは、フィールドのないゲームにおいて、壁が変化していても場面が変わったと言うだけで違和感も感じない。

 現実的に考えてそんなのはありえないのだろうけど……俺の中ではゲームの設定だからで話が終わってしまう。


 考えれば考えるほどこのダンジョンという物はかなり厄介だよな。魔物は溢れると人を襲う。だから、対処の一つとしてダンジョンを発見し探索をして、魔物と戦う。

 しかし全てに対処することは至難であり、人知れずダンジョンが出現していれば必ず魔物の暴走が始まる。

 最悪な環境だな……人間側が不利でしか無い。


「なら、ダンジョンは魔物を生み出す魔物、といったところか?」


「その可能性はあると思います」


 ならダンジョンを作り出しているのがラスボスなのか?

 あれはそういう類じゃない気もするが……しかし、ダンジョンが魔物なんて話はなかったから、ゲームの設定が何処まで変わっているのかもわからない。


 だとしても、俺がミーアを殺すことになってしまうあの惨状だけはなんとしても回避しないといけない。違った結末があるのかもしれないが……俺はその方法を知らない。

 そのために三年という時間を使って一人でレベルを上げた。だけど現実はそう簡単なものでは無くなっている。


 ゲームだから出来ていたことは、現実では通用しないことが多く、ミーアかここに居る誰かが死ぬことだってありえる。

 深い仲ではないにしても、ミーアでなかったとしてもそれでいいという話でもない。

 一番に考えるのは……俺が一人だけで挑むというのが最善にしか思えない。


「リア、二階層だと魔物も変わるけど、どうするつもりなの?」


「今日は様子見だから、階段の近くで一回戦闘すれば戻るつもり。倒せたとしても、戻るつもりよ。それでいいよね?」


 以外にも冷静な判断だと思った。実力を知るにはいい機会だと思う。

 倒せたからと言って、進まないと言い切るのは随分と慎重な行動だな。その言葉は幼い頃の俺に言ってやりたいものだぞ……バレると吊るし上げられそうだから。家族にもあのことは言ってもいない。


「分かりました」


「はい」


「俺は別に構わない。学食に行ける時間ができるしな」


 そう言うと、皆は少し困ったかのような苦笑を浮かべていた。

 やれやれ、分かっていないな。学食なんていいものがあるからいけないんだよ。

 いつでも食べられるように料理が並べられ、しかも制限がないんだぞ?


「少しは食べる量を減らしたほうが良いわよ」


「余計なお世話だ」


 近場を回るのか……初日から来る学生はさっきのと、奥にいるのは数からして王子達か?

 苦戦はしていないようだし、数による戦力があるからなんとかなっているのだろう。

 他にはいないようだな。あのラティファも来ていないようだな。


 パメラを仲間に出来たのなら、あいつも仲間には……さすがにできないよな。悪役令嬢ポジションな訳だし、さっきの奴みたいな性格の可能性もある。

 もし、あんなのがパーティーにいたら、それだけで厄介なことになりかねない。


 パメラもそうだけど、ゲームの性格がすべて反映されているわけではないみたいだ。

 ミーアは、アレスを前にしてもおどおどしてかなりの奥手だった。それなのに、今はかなり積極的に俺に対してアプローチをしかけている。

 そんな事を考えていると、俺は一つ重要なことを思い出していた。


「はぁ。なあ、今思ったんだけどさ」


「どうかなさいましたか?」


「俺ってさっき何も食ってないんだけど、どう思うよ?」


 腹を擦り、空腹感は小腹が空くを通り越していた。

 さっきの休憩の際に俺は準備をしていたのだが、俺だけ食べていないことに気がついた。

 こいつ等の事ばかり優先させてしまい、食事の準備をして、食べさせて、片付ける。気がつけば何も食べていないとか、そんなつもりで用意していたわけじゃないのによ……腹減ってそろそろ音を立てそうだった。


「し、知らないわよ。アンタが勝手にくれたんでしょ?」


「申し訳ございません。アレス様」


「ごめんなさい」


「さっきから、神妙な顔をしていると思ったら、そんな事考えていたの? ほんと馬鹿じゃないの?」


 まあ、少しは緊張も解けたか?

 携帯食の干し肉を口に入れる。レフリアが欲しそうに見えたから、差し出したらなぜか怒られた。

 レフリアは怒ってはいるけど、ハルトは困ったような顔をしてレフリアを宥めていた。

 あまりこいつ等といる時に、深く考えるのは止めておこう。


「いたよ。あれはオーク?」


「そうみたいね。二匹だし都合がいいわ。皆行くわよ」


 やっぱり単体ということにはならないのか。オークの体格は、ハルトの体格よりも大きく棍棒の攻撃をかなり警戒しているな。

 ハルトが切り込むものの、その剣では深い傷をつけることは出来なかった。


 もう一体には、左右から女性陣が攻撃する。オークは翻弄されいるので、ターゲットを上手く定められていない。

 上手く立ち回れてはいるものの、レフリアと比べると二人はまだ弱いな。パメラの事は知らないが、ミーアは元々魔法型だからな。


 使っている武器から考えると、当然パメラのほうが強いだろう。序盤はレフリアが強いのは知っていたが、こんなにも差が出るものか?

 初日よりかは動ける程度。これで一ヶ月を使ったところで二人がどれだけ強くなるんだ?


「一体は俺に任せろ。防ぐぐらいなんとかやってやる」


 俺はハルトの前に立ち、オークの攻撃を受け止めた。


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