表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ループ中の虐げられ令嬢だった私、今世は最強聖女なうえに溺愛モードみたいです(WEB版)  作者: 一分咲
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/70

30.早く魔石のアクセサリーを作った方がよさそうです

「あの……離れてくれないのですが、どうしたらいいと思いますか」

「アンタなに連れてんのよ!!!」


 食堂へ行くと、ちょうど遅めの朝食をとっていたらしいバージルに会えた。私が連れているフェンリルに驚愕している。


 バージルの隣には私の二回目のループでの相棒だったシンディーが座っていた。時間が遅いので二人のほかに人はいない。軽く頭を下げるとこちらにクールな視線をくれた。


「私にもこの子の正体がよくわからなくて……ですが、聖堂でお祈りをしたら、現れました」

「はー。それより前にまず、アンタ昨日湯浴みの後ちゃんと髪を乾かした? 毛先がごわごわなんだけど! こうなったら編み込むとかなんかいろいろあるでしょうに! 身だしなみの前に祈り優先とかほんとやめてくれない?」

「……」


 『聖女ですから』と言いたいのも、フェンリルを二の次にするバージルにつっこみたいのも我慢して、私はシンディーのほうに向き直る。


「お……おはようございます、シンディーさん」

「こんにちは。私はあなたに名乗ったでしょうか?」

「……皆さんに呼ばれているのを聞いて。すみません」


 あいかわらずの冷たさに身が縮こまる。シンディーはたぶん20歳ぐらい。きらきらしたブロンドのショートヘアが眩しい。珍しい女性の神官で、回復魔法が使える希少な存在だ。


 二回目のループではその能力を生かして『戦いの聖女』だった私とペアを組み、異世界から召喚された勇者たちと一緒に黒竜討伐に向かった。


 シンディーの、冷たいのに仕事はきちっとこなしてくれるところを私は尊敬していた。


 残念なことに、黒竜のところにたどり着く前に私とはぐれてしまったけれど。私はその先で裏切られて死んだ。シンディーは帰れたのかな。


 そんなことを考えているうちにシンディーは私の足元でしっぽを振っているフェンリル(仮)の顔をのぞき込む。


「……これはフェンリルですね。はじまりの聖女が従えていたという」

「アンタ相変わらず温度ないわね!? 普通なら腰を抜かすとこだわよ」

「フェンリル様。どうしてこちらにいらっしゃるのでしょうか」


『よばれたからきた』


 呼んだかな?


「こう仰ってはいますが、呼んでいないはずなのです」

「……え? 今この子何も言っていないわよ」

「え。聞こえないのですか。この、子どもみたいなかわいい声……」

「全然聞こえないわよ!」


 エイムズ伯爵家のライムちゃんは誰にでもわかる暴言をまき散らしていたけれど、このフェンリルに関してはそうではないらしい。


 声が私にしか聞こえないってどういうことなのだろう。首を傾げると、シンディーが教えてくれた。


「フェンリルは神の使いです。高位貴族を守る精霊の化身たちとは似て非なるもの。本人が認めた者にしか声を聞かせないのは当然のことかもしれません」

「なるほど……!」


 シンディーは私がこれまでに出会った神官の中でも群を抜いて知識が豊富だ。彼女の上を行くのはトラヴィスぐらい……と思い至って頭を振る。彼のことは今は忘れたい。


「大神官様のところに相談に参りましょう。過去、非常に優れた聖女は何人もいましたが、フェンリルを召喚したお方はいないと記録されています。ここは指示を仰ぐべきです」


 シンディーの助言にバージルも同意する。


「しかし、こうなると早くアクセサリーを作った方がいいわね!」

「あ、魔石のですね……!」

「4つの能力を調節するもののほかに、魔力量を抑えてくれるものも必要ね……。早くしないと大変よ。神獣ってアンタの膨大な聖属性の魔力を食べて育つんだから。この食堂に入れないぐらいに大きくなっちゃうこともあるわ」

「!」


 それは困ります。


 私の足元に大人しく座ってしっぽをふりふりしているフェンリルに目を向ける。目が合うと、にこっと笑ってくれた。なにこれかわいい。そのまままたごろんとお腹を見せてくれようとするので慌てて止めた。


 そういえば、二回目のループで行った黒竜討伐。フェンリルみたいな神獣を従えていたら、と思った場面があったなぁ。あのときもしフェンリルが一緒にいたら私は死なずに済んだのだろうか。


 回想していると背後に誰かが立った気配がした。急に聞こえた声に、昨日のやりとりが蘇って私はびくりとする。


「セレスティア。何を連れてるのかな?」

「い……犬です」


『いぬじゃないよ?』


 トラヴィスの顔を見たフェンリルは、ごろんとお腹を出したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版、角川ビーンズ文庫から発売中です!
eurjckvfgszea4wa9qwsbqwya1k5_iwe_yg_1cw_1dh6n.jpg
(画像クリックで公式サイトに飛びます)

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ