表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ループ中の虐げられ令嬢だった私、今世は最強聖女なうえに溺愛モードみたいです(WEB版)  作者: 一分咲
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/70

26.『先見の聖女』とお茶会⑤

「もっと早く迎えに来いよ! 何年待たせんだよ!」


 私の目の前にいるのはライムグリーン色の綺麗な鳥だった。つぶらな瞳ととがった嘴。くるんとカールした尾がかわいらしい。

 

 けれど、めちゃくちゃ喋っている。


「あのガキ、どこいったんだよ! 見当たんねーじゃねーかよ!」


 そして、めちゃくちゃ口が悪い。精霊ってこんなのなの……。


 お屋敷内の屋根裏にライムちゃんが隠れているのを見つけた私たちは、皆が待つ庭へと戻った。私は案内された席について紅茶を口に運ぶ。けれど、緊張して手が震える。


「おまえカップをがっちゃんがっちゃん言わせてるな。慣れてないんだろう」

「……!」


 ライムちゃんはといえば、なぜか私の前でめちゃくちゃに喋っていた。精霊への憧れや畏怖の念がしゅんと萎んでいくので何とかしてほしい。


 ちなみに、トラヴィスは隣でお腹を抱えてめちゃくちゃに笑っている。ライムちゃんの喋りがツボだったらしい。さっきまでの『何が何でも聖女様を守る!』オーラは一体どこへ行ったのだろうか。


 話を戻そう。


 エイムズ伯爵夫人は、この口の悪い精霊との再会を感涙をもって迎えていた。


「ライム。まさかずっと屋根裏にいたなんて……気がつかなくて本当にごめんなさい」

「だから、コリーはどーしたんだよ。俺と10年前に喧嘩したあのガキ。俺のおやつをとりやがって」

「コリーは大きくなって家を出たのよ。3年前から国の騎士団での任についているわ」


 エイムズ伯爵夫人の言葉に、ライムちゃんの毒舌はぴたりと収まった。


「はー、そっか。人間はすぐにいなくなるな」

「……」


 なんだか、ライムちゃんが言っていることがわかる気がして私は寂しい気持ちになる。


 ライムちゃんの暴言をまとめると、彼は10年前にこの家の子ども・コリーとおやつをめぐって喧嘩したらしい。それでいじけて屋根裏へ逃げ込み、誰かが迎えに来るのを待っていたということだった。


 迎えに来てもらえたのは今日、10年後。精霊である彼にとっては、本当にちょっとお昼寝をしながら待っていたぐらいの感覚だったのだと思う。けれど、出てきて見ると喧嘩の相手はもういなくなっていた。


 精霊がずっと生き続けることも、私がループをしていることも。意思とは関係ないだけに、どちらも置いてきぼり感が強い。だからつい同志のような気持ちで見てしまう。


「辛気臭い顔のおまえ聖女か。信じられないほど膨大な聖属性の魔力がだだ漏れだぞ。何者だ?」


 やっぱりこんなの同志じゃない。


 意地っ張りで憎たらしい精霊様からの暴言に耐えつつカップをカタカタ言わせていると、エイムズ伯爵夫人が私の目の前までいらっしゃった。


 そして、深く跪いた。


「セレスティア様。これまでのことをお詫び申し上げます。許していただけるとは思っておりません。しかし、謝罪をお伝えすることだけはお許しいただけませんか」

「いえ、あの、そんな」


 きっと、継母が社交界に言いふらした悪評を止めきれなかったことを指しているのだろう。そして継母と異母妹への視線から推測するに、たぶん3割ぐらいはあの噂を信じていた気がする。


「聖女様のお力でこの家に希望を取り戻してくださったこと、感謝してもしきれませんわ」

「あの……頭をあげて、どうかお立ちになってください!」


 トラヴィスに助けを求める視線を送ってみたけれど、意外なことに彼はただ見守っているだけで。どうして、と困惑した私は、夫人の向こうに見えるクリスティーナと継母、そのほかの参加者たちの表情に気がついた。


 真っ赤になっているクリスティーナと継母、逆に蒼い顔をしている取り巻き。空気を読めていない雰囲気のマーティン様。そっか。わざとこの姿を見せているんだ。


 エイムズ伯爵夫人はそのままの姿勢で続ける。


「セレスティア様に対する誤解については……早急に私が責任をもって解かせていただきます。ですから、次のお茶会にもぜひいらっしゃってください」


 ……お茶会はいいです。

 

「コイツ、お茶会に呼んでも絶対こないぜ」


 あっています、ライムちゃん。


 その後、私の周りには人だかりができた。謝罪を伝える人々と、手のひらを返したように褒めちぎる奥様方。


 トラヴィスが間に入ってくれるのもまた魅力的だったらしい。彼は結局、一言も王族の名を語らないまま皆をぎゃふんと言わせてくれた。あ、この場合言わせたのは私なのかな。


 まぁいいわ、と思いながら帰り支度をしていると、がしっと肩を掴まれた。


「セレスティア。どうして手紙に返事をくれないんだ」


「マ……マーティン様」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版、角川ビーンズ文庫から発売中です!
eurjckvfgszea4wa9qwsbqwya1k5_iwe_yg_1cw_1dh6n.jpg
(画像クリックで公式サイトに飛びます)

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ