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Cafe Shelly

Cafe Shelly 胸の中の想い

作者: 日向ひなた

 雨。せっかくのお休みの日だというのに、ついてないな。ゴールデンウィークをはずしてせっかく有休を取ったはいいけれど、特に何か予定をしていたわけでもないし。友達を誘うにしても休みがずれているから結局一人。ふぅ、こんなことなら幸恵たちと一緒の時期に休みを取ればよかった。私は窓の外を恨めしそうに見つめながら、ようやく起こした体にむち打って朝食を取ることにした。

 あの会社に入ってから何年目になっただろう。気がつけばもう二十九才。三十まであと一年しかない。小さい頃は二十五才で結婚ができるものだと思っていた。けれどその年齢の時には仕事がおもしろくて仕方がなかった。いや、今もおもしろい。けれど気づけば男友達をつくることもなく、ブライダルの仕事一つに打ち込んでいた。自分のブライダルなんて気にもしなかった。あと一年で三十になるという現実を目の当たりにして、少し気持ちが焦りだした。親からも最近になって「誰かいい人はいないのか?」とことある毎に聞かれるようになってきた。

 ふぅ、そんな人がいたら紹介して欲しいくらいだわ。別に三高を望んでいるわけではない。フィーリングさえ合えばとは思っているんだけどな。そう思いながら朝食の準備。トーストと目玉焼き、フルーツジュースにヨーグルト。これが私の定番の朝食メニュー。

「さてと…」

 トーストをかじりながらパソコンの電源を入れる。私の家にはテレビがない。新聞もとっていない。だからパソコンで今のニュースを見るのが毎朝の日課になっている。

「ふぅ~ん、そんなことがあったんだ」

 政治に国際、事件にスポーツ。私は新聞をめくる感覚でそこに書かれている記事に目を通した。このときふとある広告が目に入った。

「男女の出会いを応援します」

 あ、どうせ出会い系サイトなんだろう。一旦はそう思って別の記事を読もうとしたんだけど、なぜだかその広告が気になって。ついクリック。

「へぇ、ただの出会い系サイトかと思ったら、真面目に結婚を考えている人のためのものなんだ。ウェディングプランナーとしてはこういったのがあるってのも知っておかなきゃね」

 とあえて自分に言い聞かせるように口にした。が、本心は違う。自分がそこでいい相手に巡り会えないか、という思いが強かった。けれどそれを全面に出すことはプライドが許さない。また自分の心の奥の思いを隠してしまった。そう思いつつも、そのサイトの隅々に目を通していた。

「送信っと」

 気づいたら私はそのサイトに自分のプロフィールを登録していた。誰かいい人、見つかるかしら。いや違う、あくまでも市場調査のためにやっているんだって。誰か見ているわけでもないのに、自分の本音をそうやってまた隠そうとしている。このクセ、いけないのはわかっているんだけどついそう思ってしまう自分がいる。でもこのおかげで今まで仕事では大きなトラブルもなく過ごせたんだ。自分の思いだけを全面に出しちゃったら、とてもブライダルの仕事なんてできはしない。新郎新婦の思いを形にしてあげるのが私たちの仕事。なのにどうしてあの人達ってわがままなのかしら。そんなふうに感じることがよくある。けれど、そんなときにも「思い出づくりのため」と自分の気持ちを抑えて、ニコニコ顔で対応している。おかげでお客様のウケはいいんだけど。にしても、この雨はいつやむのかしら。

 私は朝食の片づけを終え、またインターネットとにらめっこを始めた。気がつくと昼前。ふとメールをチェックすると…え、なに、これ? 登録したサイトから十通近くのメールが私に送られてきている。恐る恐る、そして期待をしながら中味を見る。その内容を見て私は愕然とした。

『さっそくですがお会いできませんか』

このくらいだったらまだマシ。中には

『お金ならあります』

とあきらかに援助交際を匂わせるものもある。やっぱりサイトなんてこんなもんか。そう思いながらこのサイトからきたメールを削除しようと思った。このとき、一番最後にきたメールを間違えてクリック。内容が表示された。

『はじめまして。私は自動車整備士をやっている者です。現在三十四才で、将来は自分でカーショップを開くことを目指して日々仕事に励んでいます』

 ほう、なかなか真面目な書き出しじゃない。他のメールにはない、真剣に結婚相手を捜している匂いがする。私は思わずこのメールに引き込まれた。結構長文で、詳しくプロフィールがのっている。そしてメールの最後がとても気になった。

『できれば一緒に私の行きつけの喫茶店でコーヒーを飲みに行きませんか? そこのコーヒーをぜひごちそうさせてもらいたいと思っています。私はこのコーヒーのおかげで人生が楽になり、そして上を目指すことに目覚めました。この想いをあなたと一緒に体験できればと思っています』

 コーヒーで人生が楽に? どういうことなんだろう。気がつくとこの人にメールの返事をする私がいた。

 雨はまだ降り続いている。とりあえずCDを聴きながら本でも読むか。けれど目線がどうしてもパソコンに向いてしまう。さっき送ったメールの返事を待っている自分がいることには気づいてる。けれどそんなの気にしてないってカッコつけて別のことに意識を向けている自分もいる。まったく、素直じゃないんだから、私。

 お気に入りのアーティストのアルバムをセット。そして先日買った話題小説を手にする。読みたいと思っていた本だけれど、なかなかゆっくりと時間がとれなかった。よし、と気合いを入れて本に向かうけれど、思ったように頭に入ってこない。

「えぇい、もうやんなっちゃう!」

 五ページくらい読み進めたところで私は本を閉じた。

「わかってる、わかってるって。あなたこれが気になるんでしょ」

 誰もいないのに、まるで誰かに言い聞かせているようなセリフ。そして私はパソコンに向かって、メールを開いた。新着が三通。うち一通はダイレクトメール。もう一通は先ほどのサイトから別の人のメール。そしてもう一通は…

「あ、きてる」

 思わずにんまりと笑顔になる私。相手は先ほどメールの返事をした相手の大介さん。

「どれどれ…」

 期待をしながらメールをクリック。メールの内容はこうだった。

『今日、仕事の休みを取って独りで過ごしています。もしよかったら一緒に喫茶店に行ってみませんか。きっと大きな驚きと発見がありますよ』

 どういうことだろう? このメールの文章にとても興味が湧いた。雨だから外に出るのはちょっとおっくう。けれどこのまま家にいてもつまらない。サイトで出会っていきなり会うのもちょっと気がひける。悩んだ挙げ句に出した答え。それは…

『どんな驚きと発見があるのか、興味があります。ぜひその喫茶店を紹介してください』

 うん、私はあくまでもその喫茶店に興味があって誘いに乗るんだ。大介さんに会うためじゃない。そう自分に言い聞かせた。何に付けてもそう。何らかの建前をつけないと私は行動を起こそうとしない。それが本当の理由ではないことは自分でもわかっているのに。そう思いながらも楽しげに出かける準備をしている自分がそこにいた。

 ほどなくしてメールの返事が。

「どれどれ…二時にホテルセントワールのロビーで待ち合わせか。なかなか洒落たところを選んだわね。でもあそこのブライダルは派手だけど無駄が多いのよね」

 職業柄そんなところに目がいってしまう。それが私らしさでもあるのだが。

 二時五分前。私はホテルセントワールのロビーに到着。雨はそれほどひどくはないが、油断をすると足元が汚れてしまう。それが嫌で結局家からタクシーを使ってしまった。今日はうすピンクで花柄のワンピース。これは私のお気に入りでもある。ホテルの自動ドアを抜けるとすぐにひとりの男性が近寄ってきた。

「由貴子さん…ですか?」

 恐る恐る私に声をかけてくる。

「はい、そうです」

「あ、初めまして、近藤大介といいます。今回は私の要望に応えていただきありがとうございます」

 目の前の男性は、体格はがっちりとした体育会系。スーツ姿ではあるが、普段はあまり着慣れていないのかどこかアンバランス。自動車の整備士をやっているというから、この姿よりもつなぎ姿の方が似合っているんだろうな。

「あ、あの…オレって女性に対して口べたなので…それで…えっと…」

 赤い顔をして、かなり緊張しているんだな。それでいて一生懸命私に気を遣おうとしているのがわかる。

「そんなに緊張しないでください。ところでメールで書いていた喫茶店ってどこにあるんですか?」

「あ、はい。じゃぁ今から一緒に行きましょう」

 そう言って大介さんは私をエスコートしてタクシーに乗り込んだ。

「あ、あの…」

「はい?」

「い、いえ、なんでもないです」

 タクシーの中ではこんな感じで、大介さんが何か話しかけようとしてもそこから先に進まない状態。私から話しかけてもよかったんだけれど、そうなると女性から誘ったみたいに見られて。タクシーの運転手にそう見られるのが嫌で、私はひたすら大介さんからの語りかけを待っていた。結局まともな会話もないままタクシーはとある路地の手前で止まった。

「ここから少しだけ歩くのですが…」

 大介さんは申し訳なさそうにそう言った。

「大丈夫ですよ」

 本音は雨の中歩きたくはなかった。けれど通りを一目見たときにその気持ちはどこかへ飛んで行ってしまった。パステルカラーのブロックで敷き詰められた路面。両脇にはブロックでできた花壇。そこには雨に打たれながらも色とりどりの花が咲いている。通りは雑貨屋やブティックが並んでいるが、ちょっとおしゃれに見える。

「へぇ、こんな通りがあったんだ」

 私は思わずそう口にした。

「はい、こんなにステキな通りを由貴子さんにも見てもらいたくて」

 大介さんはこのときばかりはハッキリとした口調で、にこやかにそう言った。

「この通りの中程にその喫茶店があるんですよ」

 私は通り沿いのお店を眺めながらゆっくりと歩いた。今度一人でゆっくり来てみよう。

「ここです。ここの二階です」

 大介さんが指差した先には喫茶店らしき看板が掲げてあった。

「CafeShelly…」

「カフェ・シェリーっていうんです。オレ、ここのマスターとマイちゃんにかなり助けられて。とにかく中へ入りましょう」

 大介さんはにこやかに、そして軽やかに階段を駆け上がっていった。よほどこの喫茶店が好きなんだな。私もつられて軽い足取りで階段を上がっていった。

「いらっしゃいませ」

 店に入ると、渋くて低い男性の声と、かわいらしい女性の声が同時に聞こえてきた。

「マスター、今日はよろしくお願いします」

「大介くん、丸テーブルの席をとっておいたよ」

 見ると丸テーブルの三人掛けの席の上に「予約席」と書かれてある札が置いてあった。お店の中はそんなには広くないが、ゆったりとしている。窓際には半円状のテーブルにイスが四つ。カウンターは四人掛け。今日はカウンターに二人、窓際に二人のお客さんがいる。

「予約されたんですか?」

「えぇ、由貴子さんとここに来れると思ったらうれしくて。ついマスターに電話したら席を取っておいてくれるって」

「あ、ありがとうございます」

 大介さん、かなり気合いが入ってるな。それにしてもこんな小さな喫茶店でわざわざ予約なんて。

「いらっしゃいませ」

 きれいな女の子が水を運んでくれた。あれ、この子どっかで見たことあるな…

「マイちゃん、シェリー・ブレンドを二つね」

「はい、かしこまりました」

 女の子はそこでくるっと向きを変えて歩いていった。その姿を見て思い出した。

「あ、あの…」

 私は思わずマイちゃんと呼ばれたその子に声をかけていた。

「あ、はい」

「あなた、どこかでモデルやってませんでした?」

「あはっ、どうしてそれ知ってるんですか? 前に何度かウェディングのモデルやってたことがあったんですよ」

 どおりで見たことあるわけだ。

「へぇ、マイちゃんってモデルやってたこともあったんだ」

「うん。結婚してすぐくらいに知り合いから声かけられてね。アルバイト感覚でやってたことあるんだ」

「え、あなた結婚してるの?」

 とてもそんなふうには見えなかった。

「マイちゃんはね、マスターと夫婦なんだ。オレがあこがれとしている理想の夫婦像って感じです」

「えっ、だってマスターってかなり年上じゃないの?」

「でもあの二人見てても年の差を感じないんですよ」

 大介さんの言う通り、確かにマスターとマイさんを見ていると自然に振る舞っている。単なるマスターと従業員ではない、それを越えた信頼関係と意思の疎通がうかがえる。私もこんな理想的な結婚生活がしてみたいな。

 ふと大介さんを見ると、二人をうらやましそうに眺めていた。このとき、私の頭の中ではなぜか大介さんと一緒に暮らしている姿が思い浮かべられていた。

 あ、いけない。私はおもわず頭の中の姿を打ち消した。そうじゃない、今日はあくまでもこの喫茶店でどんな驚きと発見があるのか、それを体験しに来たんだから。

「はい、お待たせしました。シェリー・ブレンドです」

 マイさんがコーヒーを運んできてくれた。

「おっ、きたきた。由貴子さん、まずはこのコーヒーを味わって下さいよ」

 なんだろう。このコーヒーが何か変わっているのだろうか。疑問に想いながらも言われた通りコーヒーを口にした。

「どうですか、由貴子さん。どんな味がしましたか?」

「どんなって…普通のコーヒーですけど」

「えぇっ!?」

 大介さんは私の感想を聞いてとても驚いている。

「そ、そんなはずは…もう一口飲んでみて下さいよ」

「は、はぁ…」

 私は大介さんに言われる通りもう一口飲んでみた。

「あの…やっぱりコーヒーの味なんですけど。強いて言えば、かなり強くコーヒーの味がしました」

「えぇっ…ま、マスター!」

 大介さんはマスターに助けを乞うような声でそう叫んだ。

「ん、大介くん、どうしたんだ?」

 カウンターからマスターが飛び出してきた。マイさんも一緒だ。

「ゆ…由貴子さんにシェリー・ブレンドの魔法が効かないんですよぉ~」

 シェリー・ブレンドの魔法? さっきから一体なんのことなんだろう。

「ほう、魔法が効かないか。えっと由貴子さんだったね。どんな味がしたのですか?」

「あ、はい。普通にコーヒーの味がしましたけれど。それが何か?」

「なるほどね、コーヒーの味がしたか。大介くん、安心していいよ。シェリー・ブレンドの魔法、由貴子さんにもしっかりと効いているようだ」

「え、ど、どういうことですか?」

「あの…さっきから言っているシェリー・ブレンドの魔法って何なのですか?」

 私は大介さんやマスターの会話についていけずにそう質問した。

「あ、はい。シェリー・ブレンドは飲む人のそのときの状況で味が変わるんですよ。その人が今一番欲しいと思っているものの味がするんです」

 大介さんがそう答えた。まさか、そんなことあるわけない。

「でも私はコーヒーの味しかしませんでしたよ」

 私がそう言うと、マスターはにこりと笑ってこう答えてくれた。

「由貴子さん、そのコーヒーの味って今まで味わった以上に強くありませんでしたか?」

 そう言われるとそんな気がする。濃いわけではないのだが、コーヒーの香りや味わいがとても強く感じられた。それを思い出してこっくりとうなずくと

「由貴子さん、失礼ですがひょっとしたらあなたはいつも自分の思ったことを素直に認めず、なにか別の理由を付けて行動することが多いのではないですか?」

 そうマスターに言われてドキッとした。どうしてそんなことがわかるの?

「マスター、それってどういう意味なのですが?」

 いやっ、大介さんそんなこと聞かないで。心の奥でそう叫んでいる私がいた。そしてそれを素直に口に出せない私もいた。マスターはそれを察してくれたのだろうか。大介さんの質問にすぐに答えるのではなく、じっと私の方を向いていた。そして一言。

「由貴子さん、もう一度シェリー・ブレンドを飲んでみてごらん」

 私はマスターの言われる通りにした。

「えっ、うそっ!?」

 さっきと味が違う。

「今度は味が変わったんじゃないかな?」

 マスターの言う通りだった。

「え、えぇ、確かに。さっきはコーヒーって味しかしなかったんだけど、今は素直に飲めるの。味自体はコーヒーなんだけど、体の中にススーって入っていく感じがする。とても飲みやすいわ」

 この味をなんて表現すればいいのかわからない。

「大介くん、これをどう解釈するかな?」

「え、これを、ですか。最初はコーヒーって味が強かったんですよね。それが今は素直に身体に入っていくような味がしている。ってことは、素直になりたい自分がいるってことですか?」

 素直になりたい自分がいる。その言葉を聞いてちょっと胸が痛かった。正直今私が一番気にしていることだ。何かにつけて行動するために自分に別の理由を付けるクセがある。他の人から聞かれても笑われないような理由を。今まで誰からもそんなこと聞かれたことないのに。今日も大介さんに会うのは、あくまでもこのコーヒーを味合わせてくれるから来たことにしている。でも本音は違う。大介さんという人に興味が湧いたからだ。自分で素直にその理由に納得すればいいのに。

「でも、最初にコーヒーの味しかしなかったというのはどういうことですか?」

 こんなことを頭で考えていたら、大介さんがそう質問を投げかけていた。

「そういえばマスターはシェリー・ブレンドの魔法が効いているって言ってくれましたよね。そして私に、いつも自分の思ったことを素直に認めず、なにか別の理由を付けて行動することが多い、とも。どうしてそんなことがわかるのですか?」

「実はね、前にも同じようなお客さんがいたんですよ。このときはさすがに私も焦りましたね。けれど冷静に考えればすぐにわかりました。素直にコーヒーの味しかしない、ということは、今は素直さを求めているんだってことなんです。そのことをそのときのお客さんに伝えたら、こう話してくれましたよ。今思っていることを素直に口に出せずに、いつも違う理由を考えて人に言おうとしている自分がいるんだって。言ってしまった後で、どうして自分はこうなんだろうって思ってしまっていたそうです」

「なるほど。それで私もそうじゃないかって思われたのですね…」

 何もかもこのシェリー・ブレンドにかかればお見通しってわけか。大介さんはこんな私を、心に裏表のあるヤツだと思ったに違いない。そう思ったら急に恥ずかしさと情けなさで何も言えなくなってしまった。

「いやぁ、由貴子さんって尊敬するなぁ」

 え!? 大介さん、どういうこと?

「ほう、大介くんはどうしてそう思ったのかな?」

私の思いをマスターが代弁してくれた。

「あ、いや。ほら、オレって思ったことがすぐ口に出ちゃうでしょ。そのせいでよく人を傷つけちゃったりするんですよね。だから周りからはもっと考えてから発言しろ、なんて言われちゃうもので」

 なるほど、大介さんってそういう性格の人なんだ。けれどそこに悪気がある感じではないな。私から見れば自分に素直でうらやましい。

「だから由貴子さんってスゴイって思ったんです。一つひとつ、自分の思いを正しいのかって考えてから行動している人なんだって思って」

「えっ、そんなことは…」

 大介さんにそういわれて急に恥ずかしくなった。そんなにすごいことをしているわけではないのに。なんとか話を切り替えようと思って、頭の中で話題を探す私。

「そ、そういえば私が二口目に味わった、あのススーって入っていく感じ。あれはどう解釈すればいいのですか?」

 あれ、何言ってんだろ。今の言葉は口から先に出てきた。

「それって、由貴子さんが自分の言葉にもっと素直になりたいって願望がさらに現れた結果じゃないかな」

 今まで黙って話を聞いていたウェイトレスのマイさんがそう言った。

「私ね、今の話を聞いてこう思ったの。由貴子さんっていままで人に負けたくない、人に認められたい。その一心でお仕事がんばってきたんじゃないかって。そのためには心の中で湧いてきた思いを胸の奥にひっこめて、周りの人が納得するようなことを言わなきゃいけなかったんじゃないかな。だからつい自分の思ったことに対して言い訳をするような事考えちゃうんじゃないかな」

 マイさんの言葉に私は何とも言えない感情が湧きだしてきた。そして気がついたら涙が。さらにその気持ちは抑えがきかなくなってきた。

「うぇっ、ひっく、うっ…」

 とうとう声を出して泣き出してしまった。なんで私泣いてるの? いけない、こんなところで泣いちゃ恥ずかしいじゃない。その思いとはうらはらに、心の奥からどんどん泣きたくなる気持ちが湧き出てくる。

「由貴子さん…」

 大介さんが心配そうに声をかけてくれている。大丈夫、そう言いたいのに声が出ない。

「由貴子さん、いいんですよ、もっと泣いても」

 マイさんがそばによって、私の背中を抱きかかえてくれた。

「うわぁーん、わぁ、うわーん」

 心のどこかで抑えていたものがあふれ出し、自分でも信じられないくらいの声を出して泣いてしまった。

「どうしたんですか?」

 突然私が泣き出したので、カウンター席にいた客が心配して尋ねてきたようだ。その声は私にも聞こえていたのだけれど、泣きやまなきゃいけないと思っていたのだけれど、どうしても涙が止まらない。このとき後から聞いたのだけれど、マイさんが私をしっかりと抱きかかえている様子を見て、お店にいたお客さんは納得したようだ。なぜ納得したのか。その理由は…

「由貴子さん、大丈夫ですよ。今、由貴子さんは素直になりたいって想いがあふれ出て、それが一気に吹き出てきただけだから。だから全部あふれ出てしまうまで私がしっかり支えてあげるから」

 この言葉を聞いて、私は少しずつ心を取り戻した。

「あ、ありがとう…」

「さすが、プロのセラピストだ…」

 え、大介さん、今何て言ったの? マイさんってプロのセラピストなの? どうりで安心できると思った。これも後から聞いたのだけれど、ちょうどその時にお店にいたお客さんはみんな常連さんだったとか。だからマイさんが私にセラピーをしているんだって思ったみたい。私の気持ちも落ち着き、ようやく顔を上げることができた。

「マイさん、ありがとう…そしてごめんなさい」

 これが精一杯の私の言葉だった。

「あやまらなくていいんですよ。むしろ私、今感謝しているんです。こうやってまた新しい人に出会えたって気持ちをもらえて」

 その言葉にとても救われた。顔を上げると、マイさん、マスター、そして大介さんのやさしい笑顔に取り囲まれていることに気づいた。ふぅ、っと大きく深呼吸。

「ごめんなさい、突然泣き出したりして。ホント、ご迷惑をおかけしました。けれど、心の中がとてもスッキリしました。私、今までとても意地を張っていたんだなって気づかされました」

「意地を張っていたって、どういうことなんですか?」

 大介さんが心配そうな顔で私にそう尋ねた。

「マイさんが言ってくれた通りなんです。私、ウェディングプランナーとして早く一人前に見られたくて。とにかくがむしゃらにがんばってきました。おかげさまでお客様からの評判は高くなったんですけど、その反面同僚や先輩からの風当たりが強くて。けれど、すべてはお客様のため。ここで愚痴をこぼしてはいられない。言いたいことを飲み込んで、表面上は波風を立てずに穏やかに進めてきました。おかげさまで主任にも昇進したし、ブライダルショーとかの大きな仕事も任されるようになりました。けれど、けれど…」

 私はここでまた言葉が詰まった。ふたたび涙がこみ上げてきたのだ。

「けれど、周りのみんなはそれができたことを当たり前にしか見てくれない。だれもそれを褒めてはくれない。そうですよね、由貴子さん」

 私が言いたかったことをマスターが続けてくれた。まさにその通りである。

「だから由貴子さんはいいたいことをずっと我慢しなければいけなくなった。周りに認められるためには、周りの人に反感をかうような言葉を言ってはいけないから。そうじゃありませんか?」

 今度はマイさんが私の心の中を代弁してくれた。

「由貴子さん…そんなにつらいことがあったんですね…」

 見ると大介さんが今にも泣きそうな顔で私を見つめていた。ここにいるみんなの顔を見ていたら、なぜだか心の中にあったかたまりがほぐれていくような気がした。

「みなさん、ありがとうございます」

 私は深々と頭を下げて感謝の言葉を伝えた。

「由貴子さん、ちょっと冷めているけどシェリー・ブレンドを飲んでみてごらん」

 マスターの言われる通りにする私。シェリー・ブレンドを口に含んだ瞬間、今度はまた今までとは大きく違う衝撃が身体を走った。

「えっ、なに、この味…」

 私は驚いてその場で硬直してしまった。

「由貴子さん、どうしたんですか?」

「あ、いえ…ちょっとビックリして。口に入れた瞬間、何かがはじけるような、いえ、爆発するような感覚がしたんです。でもその後にすーっとするような清涼感というか、爽快感というか…」

 そう言いながら、今もその爽快感のようなすーっとする感じが続いている。それとともに私の心の中もスッキリしてきた感じが。

「どうやらずっとつかえていた何かが取り除かれた。そんな気がしませんか?」

 マスターの言う通りだ。さっきマイさんに抱きかかえられて涙を流したところで、そしてその後マスターやマイさんが私の気持ちを代弁してくれたところで何かが取り除かれて楽になった。そんな感じがしてきた。そのことを伝えたら、今度は大介さんが顔を真っ赤にしながらこんなことを言ってくれた。

「あ、あの…その…お、オレでよかったら、由貴子さんの心の中の本音を聴いてあげたいです。そして…そして…えっと…その…」

 大介さんはどぎまぎしながらさらに何か言葉をつなげようとしているのだが、なかなか口に出せない。

「ほら、いつものストレートな大介さんはどこにいったの?」

 マイさんがちょっとイジワルっぽく大介さんをけしかけている。

「お…オレとつきあってくださいっ!」

 マイさんにけしかけられた大介さんは、深々と頭を下げて私に両手を差し出した。

「えっ…あ、あの…」

 突然の告白にどぎまぎしている私。大介さんと出会ってまだ一時間くらいしか経っていないのに。けれど、そう言われて悪い気はしない。いや、心の奥ではこれを望んでいる私がいる。このとき、もう一人の自分がこうささやいた。

「ここはとりあえずお友達からっていうのがセオリーよ。出会ったばかりの人とそんなにホイホイとつき合います、なんて言っちゃったら軽い女に見られるのがオチなんだから。あなたはプライドがあるんだから、そっちを大事にしなきゃ」

 そう、そうよね。けれど大介さんに惹かれるものもある。特に理由というものはない。なんとなくのフィーリング、直感だ。この人なら安心して私のことをまかせられるんじゃないかしら。そう思う私もいる。私の胸の中の想い。一体どちらが本当なんだろう。

 とまどいを見せる私に、マスターが指で合図をしている。マスターが指差しているのは、私のコーヒーカップ。そしてそれをくいっと飲むフリをしている。あ、そうか。シェリー・ブレンドに私の本音を聞いてみればいいんだ。

 私はマスターが指示してくれた通り、シェリー・ブレンドを口にしてみた。目を閉じ、シェリー・ブレンドが与えてくれるものを素直に受け取ってみる。そうか、やっぱりこれが私の本音なんだ。もう言い訳はしない。素直にこの胸の奥にある私の想いに従ってみよう。

「大介さん」

「あ、はい」

 私が声をかけるまで、大介さんはずっと頭を下げて両手を私に差し伸べたままのポーズをとっていた。その体勢のまま顔をあげて私を見つめる大介さん。私はその両手に自分の両手を重ねて、そして…

「あのね、シェリー・ブレンドが教えてくれたの。ホッとする人と一緒にいることが一番だって。心があたたかくて、一生懸命で、そんな人と一緒にいれば、私もきっと変わることができるって。だからね、だから…」

 私はここで言葉が詰まった。けれどこの先の言葉を言わなければ、私自身の心の壁が取り払われることはない。けれどなかなか言葉が出てこない。自分の心の中を素直に表に出すって、こんなに難しいものだったんだ。

 このとき、背中にあたたかいものを感じた。その瞬間、私は安心感に包まれた。そのあたたかいもの、それはマイさんの手のひら。私の背中にマイさんが手を当ててくれていた。そのあたたかさに背中を、いや心を押された気がした。

「よろしくおねがいします」

 口の方が先にそう言った。言ってしまってから、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。

 パチパチパチ

 カウンターに座っていたお客さんの一人が拍手を始めた。その拍手につられて他のお客さんも、そしてマイさんやマスターも拍手を始めた。

「え、あ、ありがとうございます」

 私は照れながらも、心の中がとてもスッキリとしていることに気づいた。あぁ、そうか、胸の奥にある想いをちゃんと言葉にして出すって、こんな気持ちなのか。今までは自分の胸の中の想いにうそをついていたから、何かスッキリしないところがあった。ひょっとしたら、私は釈然としないなにかを持ちながら行動をしていたから、それが周りに伝わって風当たりが強かったんじゃないかな。ふとそういうことを思ってしまった。いや、きっとそうに違いない。その証拠に、自分の胸の中の想いを正直に伝えたら、逆にこんなにたくさんの人に祝福されたじゃない。

「ゆ、ゆきこざぁ~ん」

 ふと大介さんを見ると、涙で顔をくしゃくしゃにしている。

「お…オレ…うれしいっす。ありがとうございますっ」

 大介さんってホント自分に素直で優しい人だ。

「由貴子さん、大介くんのこと頼んだよ。大介くんは不器用な人間だけど、素直で優しいやつだ。これは私が保証するよ」

 マスターがそう言ってくれた。

「はい、私も同じように不器用です。けれど自分の心に素直になること、そしてそれを口に出すこと。その大切さを今日ここで学ぶことができました。それを教えてくれたのは大介さんです。本当にありがとう」

「そうか、そうだよね。私たちってどうしても自分を守ろうとして自分の心とは裏腹なことを口にしたり、行動したりするものだよ。それが悪いとは言わない。けれど、そんな行動ばかりとっていると、自分自身を見失ってしまう事になってしまうんだよ。自分にうそをつきながら生きていくのって、結構つらいよね」

 以前の私だったら、マスターの言ったこの言葉を素直には受け取らなかっただろう。きっと「そうは言っても自分にうそをつかなければいけないことはある」って反発したはず。けれど今は違う。それが言い訳であることは明らか。自分にうそをついてまで自分を押し殺しても、結局は自分だけでなく周りにもいい影響は与えない。それどころか周りを傷つけることもある。そのことがなんとなくではあるがわかった気がする。

 そのあと、大介さんと私は自分のことをいろいろと話し出した。順番が逆のような気がするけれど、これはこれでいいんじゃないかなって思っている。今は自分の気持ちに素直になって行動してみよう。だから今の私の行動を無理矢理正当化するような理由はつけなくていい。大介さんの前では素の自分をさらけ出してみよう。そう思ったら次第に気持ちが軽くなり、最後は大きな声で笑ったりすることができる自分がそこにいた。

「マスター、マイちゃん、今日はありがとうございました。これもシェリー・ブレンドで自分の人生を変えようって思ったおかげですよ」

「え、大介さんはシェリー・ブレンドでそんなことがあったの?」

「あ、う、うん」

 大介さんは私の言葉に少し照れながらそう答えた。

「あはっ、大介さんあのときは大変だったもんねぇ」

「ま、マイさん、それは言わないでくださいよ」

「なになに? 言わないでって聞いちゃったら、ますます聞きたくなるじゃない」

 私はちょっとイジワルっぽく大介さんに迫ってみた。

「大介くん、何も恥ずかしい事じゃないよ。それに今の由貴子さんならその事実をちゃんと受け止めてくれるよ」

「え、そ、そうですか…まぁマスターがそう言うなら…」

「ねぇ、大介さんはシェリー・ブレンドでどんな体験をしたの?」

「あ、うん。オレね、実は一ヶ月前はちょっとうつ気味だったんだ。半年くらい前に仕事でお客さんに迷惑かけちゃって。そしたら、自分って何なんだろうって考え出しちゃって。そんなとき、友達にこのお店に連れてこられたんだよ」

「あのときの大介さん、とっても沈んでて元気なかったもんね」

「えぇ、マイさんの言う通り今思えば自分でもおかしいのはわかってました。けれど元気がどうしても出なかったんですよ。そして友達からとにかく飲めと言われてシェリー・ブレンドを飲んだんです。そしたら…」

「そしたら?」

「一口目は心の奥からぐんぐんとみなぎるほどの力を感じたんです。そのことを話したら、それが本来のおまえの姿だって友達に言われましたよ。そして二口目は興奮するほどの何かを感じたんです。何でもいいから行動しないと。だんだんそう感じてきました」

 行動。なるほど、徐々に今の大介さんの姿に変化していくのが見えてきた。

「それからどうなったの?」

「えぇ、このことをマスターやマイさんも交えて話をしてたら、あることに気づいたんです」

「あること? それって何?」

「え、そ、それは…」

 大介さんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

「あ、あの…そ、それは…えっと…」

 思ったことを何でも口にする大介さんが急にどもりはじめた。

「さすがの大介くんもちょっと恥ずかしいよなぁ。けれど、そのおかげで今があるんだろう?」

「え、あ、はい。確かにマスターの言う通りなんですけど…。あ、あのですね、そのときにオレが気づいたことはですね、ゆ…由貴子さんのような彼女が欲しいってことなんです。あちゃ、言っちゃった」

 体の大きな大介さんが、小さく縮こまっているのがなんだかかわいく見えた。

「大介さん、恥ずかしい事じゃないと思うよ。だって、私だって彼氏が、そして結婚相手が欲しいってずっと思っていたんだから。だからあのサイトにも登録したし、すぐに大介さんからのメールに応じたんだし、そして大介さんからの誘いにも応じたの。お互いにそうなりたいと思っている者同士が、今こうやって出会っている。何の不思議もないと思うわ」

 言ってビックリした。これって本当に私の言葉なの? 今までだったら、心の中でそう思っていても別の理由を瞬時に考えて、本音でない答えをしていたはず。けれど、言ってみてとてもスッキリした気分になっている。

「由貴子さん、いまとってもすがすがしい顔してるね」

「え、そう?」

 マイさんにそう言われて、私はなんだかうれしくなった。

「心の中がスッキリすると、それは表情にも出てくるものなんだよ。そういう人は、周りから何を言われても常に笑顔でいられるんだ。これが自分の考えなんだって、自信を持っている人ほど魅力的に見えるものなんだよ。今の由貴子さんがまさにそうなっているように見えるよ」

 マスターの言葉に私も自信を持つことができた。そうか、だから初対面の大介さんになんとなく惹かれるところがあったのか。

 大介さんは最初から自分の心を開いて私に見せてくれていた。そしてそうなりたい私は、大介さんのそう言ったところを魅力として感じていたのかな。

「大介さん、今日はこのカフェ・シェリーを紹介してくれてありがとう。おかげさまで私の人生、変わっていきそうです。もちろんいい方向に」

「いやぁ、オレはとにかく知り合った人をここに連れてきたかっただけです。けれどこんなに魅力的な人と出会えたのも、そしておつきあいできるのも何かの縁です。オレ、がんばりますからよろしくお願いします」

「大介くん、がんばらなくていいんだよ」

とマスターの声。

「がんばらなくていいってどういうことですか?」

「大介くん、あまりにもがんばってしまうと、どこかに無理を生じてしまいがちになるものなんだよ。努力は必要。けれど、力みすぎて無理をしてしまうことだってある。大切なのは楽しむこと。どうしたら自分が楽しくなるか、そして目の前にいる人をどうやったら楽しませることができるのか。そこを考えてみようよ」

 なるほど、マスターの言葉には納得。思えば私は目の前にいる人を楽しませることは考えてきた。けれど自分が楽しくなること、なんていうのはおざなりにしてきた。それが自分の胸の中の想いを閉じこめてきた原因かもしれない。

 こうしてカフェ・シェリーでの楽しいひとときもあっという間に過ぎていった。

「マスター、マイさん、今日はありがとうございました。またゆっくりとシェリー・ブレンドを味わいに来ますね」

「えぇ、いつでも来て下さいね」

 マイさんはにっこりと笑って私たちを見送ってくれた。

カラン、コロン、カラン

 お店の入り口のカウベルが心地よい響きを心に聞かせてくれた。その音が私にはウェディングベルのようにも聞こえた。そのとき私は、無意識に大介さんの腕をしっかりとつかまてえいた。

「えっ、ゆ、由貴子さん!?」

 突然腕にしがみついたので、大介さんは慌ててる。

「だめ?」

 私はちょっとイジワルっぽく大介さんに聞いてみた。

「だ、ダメじゃないですっ。むしろ光栄ですっ」

 大介さんは緊張しながらも、今度は私をグッと引き寄せてくれた。そしてゆっくりと階段を下りる私と大介さん。このとき頭の中では、バージンロードを二人で歩いていく姿が展開されていた。

「あ、雨やんでるね」

「そうっすね。わぁ、由貴子さん見て!」

 大介さんが指差す方向。そこには真っ赤になった夕焼けが。カフェ・シェリーに来る前までは雨空だったのが、今ではすっかり晴れている。まるで私の心の中をそのまま映したような天気。そして目の前の夕日は、これからの私と大介さんの燃え上がっていく気持ちを反映させるような気がした。

 そして…

「おめでとう!」

 あれから三ヶ月後、私は白いドレスに身を包み多くの人に囲まれてその声をたくさんもらっている。私の隣にはタキシードに身を包んだ大介さん。自分の胸の中の想いを素直に表に出した結果が、今ここにある。今なら胸を張ってみんなに心からこう言える。

「私、今とても幸せです」

 これがカフェ・シェリーで人生を変えた私の物語。


<胸の中の想い 完>

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