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28 大団円3

「その本はこの宇宙の創世記のようなもので

した。如何にしてこの宇宙が成り立ち、そし

て現在に至り、やがて終焉を迎えるのか。そ

の全てが網羅されている本のよようでした。


 いったい誰が書いたものかは不明ですが、

宇宙の創生に関わりのある存在、もしくはそ

の存在自体に関わりのある存在が書いたもの

ではないかと思います。」


 遠藤修平にはあまり興味がない話題だった

が話の流れが少女のことになるまで待たなけ

ればいけないようだ。そのとき修平はあるこ

とに気が付いた。火野将兵を見ていなかった

から気が付いたのだ。


 確か七野修太郎といった青年の頭の少し上

になんだかふわふわと浮いている存在があっ

た。形ははっきりしないが何かの存在は確か

にある。そして、その後ろに深淵よりも深い

闇の暗黒が浮遊していた。特にその存在が何

かをしようとしているようには見えなかった

が注意するに越したことはない。ふわふわと

浮いている存在は彼らが『ヴル』と呼んでい

存在のようだ。それが何者なのかは修平には

判らなかった。


 そしてもう一つ。火野の斜め後ろにも何か

黒い靄のような存在が徐々に現れだした。七

野の後ろの深淵よりはもっと多様な黒の色彩

だった。黒は黒なのだが、黒一色とも言い切

れない、流動性のある黒、だ。


 どちらの存在についても、話を聞いている

筈の綾野と名乗った人は気が付いているよう

だ。修平と二人だけ、いや、火野も気が付い

ていた。


「そろそろお見えになると思っていました、

お久しぶりです、神父。」


 火野の後ろに徐々に現れた黒は少しずつ人

間の形に成っていった。


「久しいの。お前の方は息災であったか。も

って頑張って彼の者の封印を解くよう精進す

るがいい。」


「判っております、神父。あなたの思惑も十

分にね。」


 綾野も割って入って来た。


「ナイ神父、やはり来られましたか。そこの

七野君の後ろには貴方の主も来ておられるよ

うですし、きっと来られると思っていました

よ。」


「おお、我が主の眼の者よ。そこに我が主が

居られるのは知っておる。ヴルトゥームがい

ることもな。」


「これで現在の状況をある程度把握している

人々が集まった、ということでいいですか。」


「そうだな、さっさと話を進めるがよい。我

は今回は特に用はないが話を聞くためだけに

来たのだ、お前たちの邪魔をする気はないの

でな。」


「そうですね、判りました。では続けさせて

いただきます。」


 修平は登場人物の多さに辟易していたし、

その一人一人の立ち位置もよく判ってはいな

かったが口を挟めるような状況ではないこと

だけは理解していた。いつの間にか隣に立つ

結城高弥も、珍しく為す術がない、という感

じだったし内情や公安の大人たちも、ただた

だ沈黙しているだけだった。

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