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23 終わりの少年4

「おい、こんなところで何をしている。」


 突然声を掛けられて神林は、その声の主が

すぐに判ったこともあって飛び跳ねるくらい

驚いた。榊原だったのだ。


「さっ、榊原の兄貴、いや、兄貴から頼まれ

ていた女を見つけて拉致ったんで、今から兄

貴の所に連れて行こうとしていたトコです。」


「本当か?そうは見えないが。まあいい、そ

れより彼女には手を出してないだろうな。も

し出していたなら、お前さんの命一つでは償

えないぞ。」


「それはもう、大切にお連れしました。ただ

連れの男は抵抗したので少し痛めつけてしま

いましたが。」


「嘘よ。」


 彩木瞳が口をはさんだ。チンピラの神林よ

り幹部の榊原の方が話が分かるんじゃないか

と思ったからだ。


「何を言い出すんだ。お前には手を出してな

いだろうが。」


「そこじゃないわ。その男はあなたを出し抜

こうとしていたのよ。」


「出し抜く?」


「だっ、黙れ。」


「黙るのはお前だ、神林。お嬢ちゃん、説明

してくれるかい。」

 

「話すわ、話すからその子を開放すると約束

して。でないと私は付いても行かないし話も

しないわよ。」


 自分でも不思議なくらい怯えることもなく

関東弘心会幹部である榊原という男と対等に

話を進めようとしている。


「わかったよ、お嬢ちゃん、ただその子を開

放するかどうかは私だけの判断では無理なん

だよ。それと開放するかどうかは話を聞いて

からしか決められないな。あんたとの関係も

ちゃんと確認しないとね。」


 榊原と言う男は、一見高級官僚のような風

体で、とても反社組織の幹部には見えない。

ただ、眼光が半端なく鋭いので、それだけ見

ても堅気ではないと判ってしまう。口調と穏

やかだが芯の強さが滲み出ていた。


「それより、あの男たち、こそこそと逃げ出

すみたいよ。」


「ああ、判っている。でも外には出られない

と思うよ。何か色々と外に集まってきている

ようだからね。」


「集まってきている?」


「そうだよ。お嬢ちゃんを追っていた連中が、

どうもここに集結しているようだ。誰の仕業

かは知らないけれど誰かが情報をリークした

ようでね。目的はここを混乱させてお嬢ちゃ

んを連れ出そう、ってところかな。」




「早瀬課長、全部バレてるみたいですよ。」


「ああ、あの榊原って男は切れる男だし、公

安五課の西園寺も来ているだろうからな。だ

がそれでいいんだ、色んな組織や人間が入り

混じった方が私たちの仕事がやりやすくなる

からな。まあ、どさくさに紛れて死ぬなよ、

本山。」


「縁起でもない、死にませんよ。」


「もう少し現場の混乱を見守るぞ。」


「判りました。」


 内閣情報室の二人の存在は、榊原や西園寺

にも把握されているようだったが、本人たち

は意に介していないようだった。


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