21 終わりの少年2
「どうだ、そろそろ話す気になったか?」
凄んでいるのはどこから見ても反社のチン
ピラだった。胸元を大きく広げたシャツに臙
脂色のスーツなんて間違い様がない。
「話すも何も知らないものはどうしようもな
い。」
「さっきから、そればっかりだな。それじゃ
あ何か、お前は俺が求めている情報を何も知
らない、と言うんだな。」
「さっきから、そう言っているだろ。」
「そっちのお嬢ちゃんも、同じことを言うん
だな。」
「そうよ、だから、彼を開放してあげて。」
「お嬢ちゃんには手を出すな、と言われてい
るから何もしないが、この坊主は関係ないか
ら、どうするかは俺の気持ち次第だぜ?」
「そんな。でもあななたちも私を追いかけて
いたのなら、理由も知らないで追いかけてい
たの?」
「そんなことは、お前に関係ないだろう。俺
はな、こんなところで燻っている気はないん
だ。だから榊原の兄貴からお前を捜して拉致
るように言われたとき、理由を教えて貰えな
かったからこそ、お前を拉致出来たら先に兄
貴を超えて先方に直接交渉するつもりなんだ
よ。だから、なんで兄貴がお前を捜している
のか、どうしても知る必要があるって訳だ、
理解したか?」
「榊原って人を裏切る気なの?先方ってどこ
の誰よ。」
「先方ってのはな、まあ、教えてやろう、実
は兄貴は関東弘心会の幹部なんだが、ある公
の組織の偉いさんと繋がっているんだ、今回
はその筋からの依頼ってことだ。」
「その組織とあなたは直接取引きする気、と
いうことね、でも榊原って人に知られたら大
変なんじゃないの?」
「そんなことはお前に言われるまでもない。
だから理由が知りたいんだよ。その俺が知り
たい理由をお前たちは知らない、という。俺
はそれを受け入れないといけないのか?」
「だって本当に知らないんですもの。」
「俺だって知らない。嘘じゃない。」
「そうかぁ、俺の役に立つことが出来ない、
ということなんだな。だったら、その坊主に
は用はないな。」
「そうよ、だから開放してって言ってるでし
ょ。」
「用はないが、お前を脅すには役立つよな。」
鈍く笑う神林だった。