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19 始まりの少女8

19 始まりの少女8


「それで、よってたかってあなたたちは、私

を騙してどうしようと言うんですか?」


 当り前の話だった。いきなり宇宙的恐怖だ

の邪神だのファイヤースターターなんて言わ

れて信じられるはずがない。


「私を騙しても、たいしたお金にはなりませ

んよ。」


「まあ、そういう反応になるよね。僕たちも

何が何だが判らないんだから仕方ないと思う

けど少しだけ現実を受け入れてもらえると助

かるんだけど。」


 この中では一番まともそうな七野修太郎と

名乗った大学生に言われても、はいそうです

か、とは納得できない。


「意味の分からないことばかりを並べて、ど

うしたいんですか?もう放っておいてくださ

い。」


 そう言うなり彩木瞳は部室を飛び出してし

まった。修平と高弥がすぐに追いかけたが、

誰も追いつけなかった。二人とも遅い方では

ない筈だが、瞳の方がスピードも速く持久力

もありそうだった。


「しまった。また一から探さないと。」


「予想以上に速かったですね。すいません、

想定外でした。」


「いや、俺も追いつけると思った。あの速さ

は異常だ、ただの女子高生ではない、という

ことなんだろう。」


「で、どうします?」


「一旦さっきのところに戻って、もう少し情

報交換をしておくべきかな。」


「そうですね、私のネットワークに引っかか

らない話が多そうですし、あのヴルトゥーム

という者の話をもっと聞きたい気がします。」


 珍しく高弥が少し興奮しているようだ。付

き合ってきて初めて見る表情だった。



「なんとか撒けたわね。もう全力疾走させら

れるなんて、あの二人、相当速い。マジで追

いつかれそうだった。高校生の男子に追いつ

かれるなんて今まで一度もなかったのに。」


 瞳は瞳で二人の足の速さに舌を巻いていた。

今まで男性も含めて誰一人追いつけなかった

のに、本気になって逃げたのなんて記憶にな

いくらいだ。


「さて、どううしようか。」


 逃げ出したのは良いが、結局何処にも行く

当てがない事に変わりがなかった。


「大丈夫だった?足、速いね。」


 修平と高弥が追い付けなくて逃がしてしま

った瞳に追いついたものがいた。


「あ、あなたは確かうちの近くで殴られてい

た人。あなたこそ大丈夫だったの?」


 自分が追われているのに、その追っている

少年の心配をしている。


「俺は大丈夫。でもさっきまで意識がなかっ

たみたいだけど。」


「大変じゃない。病院は?」


「抜け出してきた。」


「なんでよ、安静にしておかないといけない

んじゃないの?」


「それはそうなんだろうな。でも居てもたっ

てもいられなかったんだ。」


「なんで?」


「なんでって、それは、う~ん、自分でもよ

く判んないや。」


「変なの。」


「それはそうと、俺が怖くないのか?」


「あ、そういえば、あなたたちに追いかけら

れていたんだった。」


「忘れてたのかよ。」


 瞳はその少年が不思議と怖くなかった。年

は同じくらいだろうか。


「修平さんを撒いてきたのか、あんた凄いね、

修平さんは万能なのに。」


「ああ、二人とも相当速いよね。でも、あな

たはもっと速いの?」


「いや、俺は修平さんや高弥さんに追いつけ

ないよ。」


「でも私に追いついたじゃない。」


「そうなんだよな。なぜだか身体が勝手に動

いたんだよ。」


「で、あなたのお仲間に連絡するの?」


「いや。なんでだろう。とてもそんな気にな

れない。あんたは自由にさせておかないとい

けない気がする。」


「変なの。」


「修平さんには世話になっているから協力し

たいのは勿論なんだけどな。」


 桜井亮太は自分でも訳が判らなかった。目

が覚めたら病院で、なんだか惹かれるように

ここに来た。修平たちを撒いて逃げる瞳を見

付けて追いかけた。最初は追いついたら修平

に連絡をするつもりだった。でも、それが出

来なかった。








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