18 始まりの少女7
「どうした加奈子。」
外でのやり取りに気が付いて男が一人出て
きた。
「ああ、修太郎、この人たちが部室の前に立
っていたから。」
「そうなんだ。で、君たちは?」
「この人たちも彼女を捜しているみたいなの
よ。」
「本当に?なんで捜してたんだ?」
「それは。よく判らないんだ。あんたたちは
どうなんだ?」
「いや、まあ、僕たちもはっきりと理由が判
っている訳じゃないんだけど。」
「やっぱりな。結局どういうことなんだろ。」
四人は当の本人の彩木瞳を交えて話を整理
してみることにした。
「そもそもの話をして前提を理解してもらわ
ないと駄目だろうね。」
そういうと七野修太郎は自らが高校生の時
から体験したことを話し始めた。遠藤修平や
結城高弥、もちろん彩木瞳にとっても、全く
付いて行けない話だった。
「信じてもらうほかないんだけどね。まあ、
アザトースに出てもらうわけには行かないか
ら、おい、お前の出番だぞ。」
修太郎がそういうと皆の前に突然少女が現
れた。
「ヴルトゥームだ。」
「なんだ、今どこから現れた?」
(おいらは、さっきからずっとここに居たさ。
あんたたちに見えなかっただけでよ。)
「それはいいが、なんで少女の姿なんだ?女
の子だったのか?」
(そんなのどっちでもいいよ。ただの気まぐ
れさ。)
「ヴルはヴルなりに突然現れるなら女の子の
姿の方がいいんじゃないかと気を使っている
のよ、判ってあげなさい。」
「加奈子は優しすぎるわ、こいつは放ってお
くとどこまでも付け上がるんだから。」
「理恵はヴルにきつ過ぎるんだよ、少しは優
しくしてあげないと。」
「だめだめ、こいつはただの悪戯好きなんだ
から。」
「ちょっとそのくらいで、お二人さん、彼ら
も驚いているから。これで少しは僕の話を信
じて貰えたかな。」
「それはいい。判った。世の中には俺たちが
思いもしなかったことがあって、脆い世界だ
と理解した。それで、彼女との話はどう繋が
っていくんだ?」
「そこは君たちの話の前提を同じように話し
てもらわないとね。」
そこからは、修平が今回の経緯を話し始め
た。瞳にはどちらの話も全くついて行けない
ような小説の中とか別世界の話としか思えな
かった。