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17 始まりの少女6

「どうぞ。」


 戻ってきた結城高弥が差し出したものは帝

都大学の学生証だった。ちゃんと修平の顔写

真も入っている。認証コードもプリントされ

ているが、ちゃんと入館できるようになって

いるはずだ。


「仕事が早いな。」


「それだけが取り柄ですから。」


 ただの謙遜だった。優秀すぎるのも鼻につ

きそうだが高弥には微塵も感じない。


「彼女の位置は把握しているか?」


「勿論です。三人の帝都学生と一緒に旧校舎

に入っていったようです。」


 二人は帝都大学の校舎の中でも特に古びた

建物に入った。元々古い大学だが、さすがに

校舎はほとんどコンクリートに建て替わって

いるが、木造の校舎が一棟残っている、その

建物だった。


「どうします?」


「いきなり入っても追い出されるだけだろう

な。どうしたものか。中の様子はさすがに判

らないか。」


「そうですね、部室に監視カメラがあればな

んとかなるんですが。」


 古い校舎にそんな設備はなかった。ネット

回線があるだけましで、Wi-Fi環境もない

様子だ。


「校舎で使用されている部屋は少なそうです。

一通り回ってみますか。」


 他に方法がないので仕方なかった。四階ま

であるので手分けして探すことにした。


 すぐに四階を回っていた高弥から電話があ

った。


「クト?、なんだって?」


「クトゥルー神話研究会ですね。ラヴクラフ

トというアメリカの恐怖小説家が始めたシェ

アードワールドのようなものです。ネクロノ

ミコンとか聞いたことないですか?」


「サブカルか?あんまり興味はないな。それ

にしてもお前は何でも知ってるな。」


「何でも知っている訳じゃありませんよ、知

っていることだけです。あっ、こっちです。」


 部室の前で合流したが、中の様子は全く判

らなかった。聞き耳を立てても何も聞こえな

かった。


「何か御用ですか?」


 突然後ろから声を掛けられた。二人とも近

づいてきた女性に気が付かなかったのだ。


「あっ、いや。」


 そのフロアはどうもクトゥルー神話研究会

しかない様子だったので、この階に居る、と

言うことはこの部屋に用がある人だけなのだ。


 誤魔化し様が無いので二人は暗コンタクト

を取って正直に話すことにした。


「今、ここに来ている女性に用があって来た

んです。」


「来ている女性?あなたたちは誰なの?女性

って誰のことを言っているの?」


「俺は遠藤修平こっちは結城高弥。二人とも

高校生だ。用があるのは彩木瞳っていう高校

生を捜しているんです。」


「あなたたちも?」


「ああ、やっぱりあんたたちも彼女を捜して

たんだな。」


「そうね、確かに捜していたわ。そして今、

この部屋に居るのも確かね。それで?」


「それで?」


「それであなたたちはどうしようとしている

の?彼女をどうするつもり?」


「それはあんたたちにも聞きたい。あの子を

どうするつもりなんだ?」


 お互いがお互いのことを探りつつ話をして

いるので、全く先に進みそうになかった。






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