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前編

佐藤。S女子高校2年生A組12番。下の名前は佐藤が嫌っているようなので伏せさせてもらう。

佐藤はありふれた苗字だが、彼女のクラスには彼女以外佐藤はいないので、まあ構わないだろう。


さて、5月の中旬、高校生であるところの佐藤が、今日も真面目に学校に来てみれば、そこに見えるは中にゴミが詰められている佐藤の机である。

佐藤は、自分の机にゴミを詰める趣味があったかな、と少し考えて、それを否定した。

いくらなんでも自分の机にはゴミは詰めないわ、ゴミはゴミ箱に捨てるもの、と。

であれば、と佐藤は考える。

これは小説で読んだことがある、いわゆる、いじめ、というやつだな、と。

辺りを見回せば大半の生徒が目をそらしている中で、知性の足りなさそうな顔つきの生徒が幾名か、にやにやと笑いながら佐藤を見つめていた。

定番だなあ、と佐藤は他人事のように感じながら、表情も変えず、にやついた生徒の一人に近づいていく。

この女生徒をA子と呼ぶことにしよう。

A子は何かを期待するような表情をしてこちらを見ていた。

佐藤はそれを横目にA子の机を掴み、自分の机のところへ持って行く。

突然のことに唖然としていたA子が文句を言おうとした頃には、A子の机はもう佐藤の席の隣にあった。

A子が猛然として何か言うのを聞き流して、佐藤は机の中身を入れ替えようとする。

当然、A子は佐藤の腕をひっつかんで何やら抵抗するわけだが、佐藤はさして気にするでもなく作業を続行する。

作業する佐藤、抵抗するA子とでなにやらぐちゃぐちゃとなっていると、ついに担任が教室に到着した。どうやらHRの時間になったらしい。

「君たち、何をしている。早くやめなさい」

担任はこう言うと、佐藤の席まで近づいてくる。

「私の席にゴミを入れようとしてくるんです、先生、早く止めてください!」

A子はそう言って担任を見る。

佐藤は担任を見るでもなく黙々と中身を入れ替えようとする。

「やめなさい、佐藤さん。どういう事情か、あとで詳しく聞かせてもらいますからね」

担任はそう言うと、佐藤の作業を停止させようとする。

佐藤はそれでも作業をやめようとしなかったが、ついにA子の机が元の場所まで戻されてしまったため、やめざるを得なくなった。

その日の授業が終わると、佐藤は担任に呼び出された。

「なんであんなことをしたのか、教えてくれるね?」

「勿論です。A子さんとその取り巻きが私の机にゴミを詰めてくださったのでそれをお返ししただけです。私のものではなくA子さんのものなのですからA子さんにお返しするのは当然ですよね?」

「それは…」

担任は言い澱む。

おや、と佐藤は思う。

いじめがあると発覚するのを恐れる教師、というのはこれまた定番なのでは、と。

そのような人間の話を聞いておく必要があるのか?いや、ないな。佐藤はそう判断すると、

「今日は忙しいのでこれで失礼させて頂きます。それではさようなら」

とだけ言って、後ろから何か言う担任の言葉を聞き流してすたすたと下校した。

これが佐藤の日常であった。





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