津谷景子の二日目 その12
吉祥寺駅からサンロード商店街を通っていく。
歩き慣れたこの商店街は平日だろうとお構いなしに人で賑わっている。
土日になると早歩きも難しくなるほど人でごった返したりする。
木曜の今日は大丈夫だけど、夏休みのためか若者が多いね。
私たちはゆっくりと商店街を抜けて、まず明さんの家に向かうことにした。
荷物がありすぎるので、一度荷物を置いてから私の家まで送ってもらうことにしたのだ。
私と明さんの家はそんなに離れてなかった。
距離にして歩いて五分くらい。
でも明さんの家は武蔵野市で私は練馬区になる。
最寄り駅が同じ吉祥寺でも、道路を少しずれると区が変わってしまったりするんだよね。
武蔵野市の方がゴミの収集にうるさいらしいから私は練馬区でラッキーだったのかもしれない。
明さんは二階建てアパートの二階に住んでいた。
綺麗でも汚くもない、どこにでもありそうなアパートだった。
部屋の中に荷物を運ぶ明さんを玄関の前で待つ。
中を少しだけ覗くと、何となく予想していたけどあまり何もない部屋だった。
冷蔵庫と本棚とテレビだけが見える。
畳の部屋なのでベッドもない。
キッチンとバストイレがあるワンルームみたいだ。
荷物がなくなってすっきりした明さんとともに、今度は私のマンションに向かう。
昨日襲われた自動販売機の前まで来ると、さすがの私も少し周りを警戒した。
でもまだ日も暮れてないので景色は平和そのもの。
犬の散歩をする少年や買い物袋を下げたお姉さんが歩いていた。
「じゃあ、明日も同じ時間に迎えに来るから」
「はい」と私は返事した。
そのとき、私はとても喜んでいる自分を発見していた。
迎えに来てもらえるのって、何だか嬉しい。
そう思いながら私は明さんの背中を見送った。
私は部屋に入ると、まずシャワーを浴びた。
やっぱり夏は帰ったらまずシャワーだよね。
うがいと手洗いと汗を流すのを同時に済ませて、さっぱりしてから部屋着に着替えた。
それから買ってきたバッグを箱から出して、明日の準備をする。
何か入れ忘れたものはないかなと部屋を見回すと、テーブルの端に目が行く。
昨日、暴漢に半分に切られたお守りが置いてあった。




