津谷景子の二日目 その11
お腹も大満足したので私たちはお店を出ると、今度は明さんに私の買い物に付き合ってもらう。
そう言えば当初の目的は私のバッグを買うことだったけど、すっかり忘れていた。
明さんのおかげで九十万ほどのお金が手に入ったけど、迷いに迷って、前と同じバッグを買った。
良い水玉模様のバッグが他になかったからね。
水玉のバッグは私のこだわりの一つ。
私の憧れのナタリー・ポートマンが持っているのを見て、格好いいと思ったからってだけなんだけどね。
私たちはしたいことも終わったので帰ることにした。
デートと考えれば帰るにはまだまだ空が明るいけれど、よくよく考えると明さんは私を守ってくれているんだよね。
昨日襲われたけど、何だかあれは夢だったような気がして、ほとんど実感がない自分がいる。
人ってどんなに警戒していても死ぬときは死ぬから、私はあまり深く考えない。
だから私は気軽にしているけど、明さんはちゃんと周りを警戒しているみたいで、疲れていた。朝も早かったから眠そうだしね。
コインロッカーで荷物を取り出すと、明さんは袋の幅で脇が閉まらなくなっていた。
まるでボディービルダーのポージングの一つみたい。
スーツは郵送にしてもらったのにね。
その姿を改めてみると、ちょっと調子に乗って買わせすぎたかなと私は反省した。
でも楽しかったので後悔はしていないけどね。
私は反省の意も込めて明さんの袋を三個持つ。
それでも明さんはバーゲンで欲張りすぎた奥さんより荷物が多かった。
「まるで服屋さんになった気分だ。仕入れは十分やね」
明さんがそう言って笑顔になる。
「ほんと、よく買いましたね」
「いやいや! 勧めたんケイさんやん」
「そう言われると思ってました」
私は笑いながら言った。
「ところで今日はいくら使ったんですか?」
「財布に二万しか残ってなかったから、九十五万くらいかな」
「え? そんなに使ったんですか」
「だから勧めたのケイさんやろ」
「そうですけど、何にそんなに使いましたっけ?」
「オーダーメイドのスーツが三十万で、スーツに合わせた靴も十万近くしてたやん」
「ああ、そう言えば」
こんな会話を電車でしていたら、あっという間に吉祥寺に着いていた。
楽しい会話をしていると新宿から吉祥寺の電車なんて、あってないようなものだね。




