津谷景子の二日目 その1
朝の五時の目覚ましで私は起きた。
素早く身支度を整えて、朝ヨガへ行く準備をする。
洗濯機に洗濯物を入れてボタンを押す。ご飯を食べてすぐにヨガをすると具合が悪くなることがあるので、朝食は取らない。
パジャマから白いワンピースに着替え、寝癖を整えて、デートだから日ごろより丁寧にお化粧をする。
コンタクトレンズをどうするか迷って、眼鏡を掛けることにした。
それから洗濯物を乾燥機と物干し竿に干して準備はOK。
六時になったので、部屋を出てマンションのオートロックの玄関から外を窺うと、明さんはもう外で待っていた。
明さんの服装は相変わらずで、シャツの色が緑に変わっているだけが昨日からの変化である。
同じ服を何枚か持っているのかな?
と思うほどの変化のなさだ。
洗濯はちゃんと出来ているのかなあ?
「おはようございます。待ちました?」
「いや、約束の時間通りだから待ってないよ。ケイさん眼鏡掛けるんや。眼悪いの?」
「はい。仕事のときはコンタクトなんですけど、あんまり好きじゃないんで、休日は大体眼鏡です」
私は何もないと輪郭がうっすらわかる程度しか見えないほど眼が悪い。
裸眼だと道に落ちていた長い葉っぱをずっと蛇だと思って怖がっていたし、看板を人と間違えることもしばしばある。
ちょっと前もプールでコンタクトレンズをなくした帰りに、人とぶつかったりもした。
でも思うのだ。
人とぶつかる場合は相手も私をよく見ていなかったのだから、お互い様なのに、舌打ちをして去っていくなんてひどいと思わない?
まあ、コンタクトレンズをなくした私も悪いのだけれどね。
私と明さんは歩いて、吉祥寺の駅に行き、中央線の東京行き快速に乗った。
明さんは犯人を警戒してか、周りを見渡しながら移動している。
薫子に言わせればこれはすべて演技でありフィクションなんだろう。
襲われた本人である私は、こんなさわやかな朝に人を刺そうとする人なんているはずない、と決め付けて気楽にしていた。
私はのんきすぎるのだろうか?
でもドラマなんかでもすずめが鳴く朝に殺人は起きてないじゃない。
でしょう?




