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天間明の一日目 その9

無理だとわかると、ケイが心配になり、明はケイの元に戻った。


「大丈夫、怪我はない?」


「私は大丈夫みたい。バッグだけ切られちゃったけど」


 そのバッグを見て明はぞっとした。鍵なんてケイを無事に届けてから取ればよかったのだ。

自分の軽率な行動に腹が立った。


「ほんま。ごめんな。とっさに突き飛ばすことしか出来へんかったわ」


 そう言いながら明は自己嫌悪に包まれていく。

予知をしていたのにも係わらず、ケイを危ない目に合わせてしまった。


「あの走って喉が渇いただろうし、お茶でも買って来ましょうか?」


 マンションの前まで来ると、ケイはまだ息を荒くしている明の様子を見たのかそう言ってきた。


「いや、明日早いから寝坊しないように家に帰って寝るわ。また明日な」


「はい、それじゃあ、また明日。今日はありがとうございました」


 そう言ってケイは頭を下げてお礼を言ってくれた。

それを見て、明は帰ることにする。

帰り道、明は軽くため息を付いていた。


ケイを危ない目に遭わせてしまった。

もっと安全な方法はなかったのか、また考えてしまう。

でも予知なんてものをケイがどこまで信じているかわからない。

心の底から信じているのなら、どこか違う場所に今日は泊まってもらうと言う選択肢もあったかも知れない。

それか自分とケイの信頼関係がもっと深いものならば、違う選択肢もあったかもしれない。

二人が恋人であれば違う方法もあったはずだ。


 そんなことを考えると、明はまたドキドキと鼓動が早まるのを感じていた。

 

こういう気持ちをなんて言うのだっけと明は考えてみた。

そして、脳の片隅で埃を被っていた言葉を思い出す。知っていても滅多に使うことのない言葉だ。


「ときめきかなあ」


 明はつぶやくと、二十六歳の男性には似合わない言葉だなと思い笑ってしまった。


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