天間明の一日目 その2
明は顔を洗うと、乾燥機に入っているTシャツを取り出し、部屋着から着替えて、黒いサマージャケットを羽織って外に出た。
まぶしい夏の日差しがアスファルトを照りつけていた。数は多くないがセミの鳴き声が聞こえる。
今日はどうするべきか少し考え、明はまずヨガライクに行くことにした。
時間が少し早いので、松屋で朝食を取ってから、井の頭公園へ行き、ベンチに座って、また考えた。
ナイフを持った犯人からケイを守る方法。
完全に戻ったかはわからない予知能力。
予知と共に失った交通事故の日の記憶はまだ思い出せずにいる。
完全かはわからないが、ずっと追い求めていた予知の力を取り戻した。
でも何故だろう? 何の感情も出てこなかった。
本当に自分は予知の力を取り戻したかったのか、それすらも明はわからなくなる。
時間が九時二十分になったので、ヨガライクに向かうことにした。ゆっくり歩けばレッスンの三十分前に着くはずだ。
明は少し鼓動を早めて、ヨガライクのガラス扉の前に立った。
臨時休業の張り紙はされていない。中を覗くと、受付にケイは座っていた。
ホッと胸をなでおろす。今日ケイが殺される予知ではあったが、まだそれほど正確に自分の予知を理解できたとは思っていない。
もしかしたら、もうケイが殺されていないだろうかと心配だったのだ。
二十年ぶりに車を運転するペーパードライバーのように、予知の力をまだ操りきれていない感覚があった。
「おはようございます。今日も一番乗りですね」
そう言うケイの笑顔がまぶしい。
ケイの美しさを明はとても不思議に思っていた。写真で見るとそこまで目立たない派手さのない顔だ。
目が特別に大きいわけでもないし」、鼻も決して高いとは言えない。
整形手術で美人にしてくれと言っても、間違いなくケイのような顔にはしてくれないと思う。
でもケイは近くで見れば見るほど、美人だなと思える顔をしていた。
生命の美しさがそこにはある。そんな魅力のある顔なのだ。
そんなケイの笑顔を見るだけでドキドキした。
恋する中学生かいな、と思いつつも明は胸の鼓動を抑えられなかった。
この笑顔を守りきれるか不安で緊張しているのだなと思うことにする。




