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津谷景子の一日目 その11

それから私は怪我がないかお風呂でもう一度確認した。

幸いなことに、転んだときの擦り傷も出来ていなかった。

ゆっくりと湯船に浸かり、明日からのことを考えてみた。


 私を襲った覆面の男の身長は170センチほどだった気がする。

黒いジャージ姿で白いランニングシューズを履いていた。

男と断定していいのか、体格を思い出してみた。

けっこうがっしりとした体つきだったので、女性であの体系の人はまずいないだろう。

薫子もがっしりとした体系だが、やっぱり男女では差が出る。

私を襲ったのは男で間違いないなと思った。


 お風呂から出て、少しくつろいでいると電話が鳴った。

携帯電話を見ると薫子と表示されている。

犯人の体格と勝手に比較してごめんねと思いながら、私は電話に出た。「もしもし」と応答をする。


「明さんとはどうだったの? 気になったから電話しちゃった」


 薫子の声はとても楽しそうだ。

完全に恋話が聞けるものだと思ってそうである。

私は明さんと会ってからの話を事細かく説明した。

明さんが予知能力を持っていることも、ナイフで襲われたことも全部話した。


「ちょっとケイちゃん、まさか明さんの言うこと信じてるんじゃないわよね」


 薫子のちょっと不機嫌な声に私は少したじろいだ。


「え? 私は信じてるけど」


「駄目よ。何言ってるのよ。それって完全にあなたと仲良くなろうとして嘘ついてるに決まってるじゃない。予知能力なんてあるわけないでしょう」


「え? でも実際に私襲われたよ?」


「だから、それに私は怒ってるのよ。明さんが知り合いに頼んで、ケイちゃんを襲わせたに決まってるじゃない。それを格好良く自分で助けて、恩に着せようだなんて最低な方法よ」


 薫子の怒りのボルテージがどんどん上がっているのがわかった。

薫子は怒ると怖い。

うそか本当か、薫子は学生の頃、痴漢してきた人の人差し指をへし折ってから警察に突き出したことがあるらしい。

指を押さえて苦悶の表情で警察に捕まる男を見て、犯人が泣いていないので中指も折っておけば良かったかなと思ったそうだ。


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