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第4話『Q.迷子になったらどうしますか?』

 散歩を始めて十五分経っただろうか。予想していなかったわけではないが、まさか本当にやるなんて……。


「…………迷った」


 ここはどこだ。なんでここはこんなに入り組んでるんだ。――まじヤベェ。帰れないんだが。

 さきほどまで街を宝石箱のように照らしていた満月も、大きな雲に隠れてしまっている。辺りが一層暗くなり、今自分がどの辺りにいるのかが分からない。まるで別の街のようだ。

 俺はキョロキョロ周りを見ながら、柱の先に大き目のろうそくが付いた、数少ない街灯を頼りに暗い夜道を歩いていた。この辺りは中心街から少し離れているようで、人が見当たらない。誰かに道を聞きたいんだけどなぁ……。


「……うぜ? な?」


 おや? たまごの様子が……? じゃなくて、進行方向の右斜め前、街灯の光すらほとんど差し込まない路地から人の声が聞こえる。人だ! これで帰れる! 俺は路地まで足速に行き、ひょこっと顔を出しながら話しかけた。


「あの〜すみません。道を聞きたいのですがぁぁぁ……あ?」


「あぁ? なんだてめぇ!」


「見たらわかんだろ! 取り込み中だ。どっか行きな!」


 そこに居たのは三人の不良野郎と一人の女の子だった。ひょろ長のモヒカン頭が一人、チビで丸顔が一人、俺よりもひと回り大きな刺青を頭に入れた大男が一人。女の子の顔は暗くて表情はよく見えないが……どうやら女の子は、この不良サントリオに絡まれているようだ。これがラノベ主人公なら必ず女の子を助けるだろう。ーーさぁ! 勇気を出せ! 俺!


「嫌がってるじゃないか! その子をはなせ!」


 震える足を一発叩き抑えると、俺は不良と女の子の間に割って入った。

 やべぇ言っちまったよ。この後どーすんだよ……。どう考えても三対一で勝てるわけないじゃん。ラノベの主人公って何でこう無謀な事するかねぇ。しかし、ここは雰囲気だけでも強そうにしておかなければ! ――ひるむんじゃねぇぞ!

 治るどころか、増す一方の恐怖心を無理矢理に押さえつけそこに堂々と佇む俺に、ひょろ長モヒカンが胸ぐらをつかむ勢いで迫って来た。


「あ? んだてめぇ! ……制服? てめぇ何処の国のものだ」


「お、俺はこっからずっと南の方から来たものだが、それがどうしたんだ?」


 国なんて……日本とは言えないし、こっちの国とか知らないし、とりあえず来た方向言っとけばいいかな。俺は一瞬戸惑ったが、嘘偽りなくその問いに答える。


「南? まさかコイツ――」


「なんだよ? なんかあんのか?」


 南と聞き、先ほどまで拳一つないほどに接近し威嚇していたひょろ長モヒカンが、急にうろたえる。他の二人は以前俺を威嚇しているが、果たしてどうなることやら。


「南っつったらソオラムと敵対してる隣国だよ。あそこんとこの育てる騎士学生は残虐で有名なんだ」


「つっても学生だろ?三対一なら――」


 ひょろ長モヒカンの話を聞いてなおも動じない丸顔チビ。

 ひょろ長モヒカンの言い分では、どうやら俺は隣国のやばい学生だと思われているようだ。これは利用しないではない。でもどうやって利用しようか……とりあえず一人攻撃して来そうだからスマホのライトで威嚇でもしようかな。

 俺はポケットからスマホを取り出し、カメラのシャッターライトで威嚇する。


「なっなんだ!?」


 パシャ! っという、この世界では聞いたことのないであろう機械音がパチパチっとした光と共に、暗く静かな路地に響き、放たれる。先程まで余裕そうにしていた丸顔チビが、光と音に驚きうろたえる。

 おぉ! いい感じにビビってくれてる。遅れるように、残りの二人の顔色が一変する。警戒して、俺から距離を取る不良三人。すると、丸顔チビが、何かに気づいたように話し出した。


「光を放つ武器……思い出した。コイツ、ライトソードだ!」


「嘘だろ? ライトソードって言ったら去年三位のやつじゃねぇかよ」


 大男を除く、チンピラニ人がさらに一歩後ずさる。大男も、ライトソードなる者は知っているらしく、先ほどよりも俺を強く警戒しているようだ。なんだかもうちょい押せば逃げて行きそうな感じだな。――ちょっと仕掛けてみるか。


 俺は適当に詠唱ぽく言葉を唱えながらスマホの画面を操作し、言い切ると同時に爆音でアラームを鳴らし、その後今度はライトモードで光を浴びせ続けた。光は暗い路地を矢の如く照らし、またアラーム音は壁と壁の間で反響し、不気味な音色を奏でている。


 光と言うよりかは、爆音のアラームに驚いたのだろう。途端に後ろのニ人は路地の向こうへと悲鳴をあげながら逃げて言った。あとはこの大男だけだが……一人くらいなら倒せるかな? 取り敢えず威嚇しながらどうするか考えよう。


「今のは攻撃性のない音と光の魔法だ。まぁ威力を上げれば音でお前を気絶させられるし、光でダメージも与えられる。範囲攻撃だから一人だろうが三人だろうが関係なかったんだが、他のニ人は逃げてしまったようだな。お前はどーする? まだやるか?」


 言いながら俺はゆっくりと大男に近づいていく。今にも逃げ出しそうだ。本当は俺が逃げ出したいんだけどね。そして――。


「ちっ、今回は見逃してやる。次は容赦しねぇからな!」


 いかにもなセリフを残し、その場から逃げて行く大男。

 最後の一人もどうやら追い払えたようだ。次は無いことを心の底から願うよ。

 にしてもずいぶん勘違いされてしまった。ただの日本のオタク男子が、異世界のなんかで三位だったライトソード様と間違われるとは……。スマホに感謝だな。

 ――っと、女の子大丈夫かな?

 俺は振り返り、恐怖で座り込んでしまっている女の子の元へと歩み寄った。

とおるA.「走り回って強引に知ってる道まで行きます」

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