第55話『Q.トラップと言えば?』
柵を越えて畑へと侵入したゴブリン達。しかしそこには俺が提案し仕掛けた罠があった。柵の先に仕掛けられていたのは草をかぶせて見えなくさせていた棘。時間がなくて深くは掘れなかったが、Tピットと呼ばれるそのトラップは縄文時代から使われている優秀な罠だ。柵を飛び越えるために勢いよくジャンプしたゴブリン達は自身の体重によって仕掛けられた棘へと突き刺さっていく。その度に静かな夜に一つまた一つとゴブリンの断末魔が鳴り響いていた。
しかし、ようやく後続のゴブリン達も異変に気付いたのか、柵を飛び越えるのではなく倒して侵入しようと剣や斧を振るっている。しかしそこにも俺は罠を仕掛けていた。柵の手前にも同じく掘っていた落とし穴。発動のトリガーは柵だ。破壊されることによって地面を支えていた床が落ち獲物を串刺しにする。ゴブリンの第二波はこれによって駆逐された。残るゴブリンは矢を打っていた数十匹のゴブリンのみ。
俺たちは物陰から勢いよく飛び出すと、動揺して身動きが取れないゴブリンを片っ端から倒していった。
「いやぁトールお前凄いな! これが冒険者としての初陣なんて信じられないよ」
「あっはは。まぁダンジョンにも行ったことはあるからね」
「それでこんな作戦思いつくのか。確かに学校に通っているだけはあるみたいだな」
「ありがと。さて、次はガイの番だぜ!」
襲撃してきた全てのゴブリンを倒し終えた俺たち。しかしガイの言っていた報酬はまだ手に入れていない。恐らくこのクエストにはまだ先があるのだ。それに感づいていた俺はガイに指揮を任せるといったのだが、どうやら気付いてくれたようだ。
「ん? なんだ気付いてたのか。俺が言ってたがっつり稼ぐ方法」
「まぁ途中からだけどな」
「ゴブリンが落としていった金属あっただろ?」
「それがどうかしたのか?」
俺は昼間にガイがあたりだと言っていた事を思い出す。確かにそう言ったのは金属を落としていったという話を聞いた直後だった気がする。しかし金属がどうしたというのだろうか。ゴブリンならそんなものいくらでも持っていそうだが……。
「ゴブリンにも階級があってな、こうやって攻めてくるゴブリンは大抵下っ端なんだ」
「なるほど。そいつらが金属を持ち歩いてるってことは――」
「親玉はたんまり持ってるってわけよ!」
つまりガイはこのままゴブリンの寝ぐら。つまり基地を襲撃するといっているのだ。クエストの内容は襲撃してくるゴブリンを退治する事。つまり今回の条件はすでに満たしている。この程度のクエストなら人数を集めればどのランク帯の冒険者でもクリアが可能なためこのクエストの対象は全ランク。しかしここから先は違う。ゴブリンの基地の撲滅。敵の襲撃に備え自陣で迎え撃つのと違い、襲撃には相当なリスクが掛かる。恐らく対象ランクも相当高くなるはずだ。となると気になる事は一つ。
「なあ、ガイは何ランクなんだ?」
「俺か? 俺は――」
なぜか緊張している俺はその言葉続きにゴクリと息を飲む。
「一応Aだぜ」
やはり相当できる冒険者だったようだ。そもそもこんな夜に寝ぐらを襲撃するなんて言い出すためには相当な自身が必要だ。ましてやガイが持ち歩いているのは大剣だ。ゴブリンの住処といえば洞窟がほとんど。大剣を振るには狭すぎる。恐らくサブの武器があるのだろうが、それでもメインの武器を封じられた状態での闘いには相当なストレスがかかる。よっぽどの自信がない限りは踏み込めないはずだ。その点Aランク冒険者というのには納得がいく。そしてそんな男がHランクでしかも今回が初の仕事である俺とパーティを組んでいると言うのはどうも不思議な話だ。
「やっぱ凄いんだな」
「一応ソオラム三十のAランク冒険者の一人なんだぜ!」
Aランク冒険者って三十人しかいないのか。って言うか上は一体どこまであるんだ? もしかしてAが最高ランクなのだろうか。聞いてみよう。
「Aランクが最高なのか?」
「まさか。S、SS、SSSまであるぜ! まぁ実際存在するのはSまででその上の二つは到達したやつは一人もいないけどな」
なるほど。じゃあ俺はそのSSS冒険者でも目指そうかな。多分騎士団隊長クラスにでもなれば行けるだろう。
「Sランクは何人いるんだ?」
「二人だ」
「まじか」
「あの二人は別格だな。互いに高め合ってどんどんと先に行っちまう」
最高のライバルというやつか。なんかいいなそういうの。
「じゃあガイもSランク目指してるのか?」
「まあな。もーちょいで昇格条件満たせるんだ。その前の気晴らしに悪さするゴブリンの一団を一掃してやろうと思ってな!」
気晴らしに殲滅されるゴブリンさん達、ドンマイです。次はこの人に狙われないようにしましょうね。次、無いんですけど。
そんな話をしながら向かっているのはもちろん今回の襲撃をしてきたゴブリン一団の基地。つい先ほど襲撃するために使った道に付いた足跡を辿り、俺たちは難なくその場所を特定した。
目の前には五メートルほどの岩山。そこには小さな穴があり、どうやらそこからゴブリン達は出入りをしているようだ。
「さて、じゃあ行きますか」
俺たちは息を殺してその洞窟へと侵入した。
とおるA「めんどくさいから掘ってないのに落とし穴ある感出して友達にそこ通ってもらう」





