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第53話『Q.夏休みの課題といえば?』

 日の光が俺たちの頭上で喧しくもギラギラと輝いている。今日はやけに暑い日だ。

 この世界には日本のような四季はない。だがその代わりとしてある程度の気温が保たれており、我ら人族にとっては過ごしやすい気温が一年中続いている。と授業で習った。しかし今日は暑い。異常な暑さだ。王都の人々もあまりの暑さに精神がやられているように見える。

 そう言えば冒険者カードに人族って書いてあったけど、俺まだケモミミ族にあったことないぞ!? これは一体どう言うことか。あとエルフにもあったことない。おかしい。俺の異世界ライフはやはり何かおかしい。


 俺がどうしてこんなことを考えているのか、何故こんな暑い日に本気を出した太陽見たいな光源の元を歩いているのか。それは今が夏休みだからだ。サマーバケイションなのだ!

 俺が体を溶かしながら向かっているのはギルド。この世界の夏休みには課題などと言うめんどくさいものは存在しない。生徒の自主性に期待し、任せているのだろう。もちろん俺だって騎士を目指すものとして地球での生活のように部屋でゲームばっかりしているわけにはいかない。

 という事で、登録したっきり放ったらかしだった冒険者としての職務を遂行しようとこうしてギルドへと依頼を受注しに足を運んでいるわけだ。


「失礼しまーす」


 ギルドへと到着した俺は初めてきた時とは一皮も二皮も向けていることをアピールするように堂々と入室した。ギルド内の視線が一斉にこちらへと向く。

 あ、またやったわ。この世界で失礼しますは言わないんだった。


「ようトール! 久々だな四ヶ月ぶりか?」


「おはようガイ! 覚えててくれたのか」


 背中に大剣を担いだ短髪赤毛の男の名はガイ・トロック。俺に文字の基本を教えてくれた恩人だ。


「その格好、騎士学校に入学してたのか」


「そうなんだよ。忙しくてギルドに全然顔出せなくてな」


 騎士学校はこの国ではとても重要なプロジェクトだったようで、冒険者からの注目も高い。ガイも俺の制服を見て一発で言い当ててきた。


「初めてあった時も似たような服装だったが、どうやら本当の学生になったようだな」


「おかげさまで」


「文字はちゃんと書けるようになったのか?」


「あぁ。毎晩練習してるからな! 課題を完璧に書き写せるくらいには書けるようになったぜ!」


「課題? 学校行くとそんなのが出るのか」


 そうか。この世界のって言うか、冒険者は学生としての経験がないから課題って言ってもよく分からないのか。


「まぁクエストみたいなものだよ」


「なるほどな……ってそれ写していいのか?」


「ちゃんとやり直したから大丈夫だ!」


 そう。俺はあれからしっかりと陣形について勉強した。どうやらこの世界の戦争で使う陣形は西欧の陣形に似ているようだった。そっちの方はあんまり詳しくないから色々と勉強になった。日本には盾の文化があまり無かったからああ言う形にはならなかったんだろうな。まぁそれはおいおい語るとして――


「ガイは今日は何のクエスト受けるんだ?」


「今日は手頃なゴブリン退治だ」


 なるほどゴブリンか。ファンタジー世界の雑魚モンスター代表だな。俺もそれくらいならいけるかもしれないか。でもガイは結構やり手な気がするがなんでゴブリン退治なんだ?


「昨日まで大物相手にしてたから疲れちゃってよ、気分転換に雑魚を狩り倒すのよ!」


 ニカっと笑うガイはどこまでも冒険を楽しむ冒険者の鏡のようだった。

 俺もこんなかっこいい冒険者になりたいものだな。


「そのゴブリン退治って俺でも受注出来るものなのか?」


「出来るぞ。全ランク対象だからな。もしかしてやる気か?」


「やってみようかなって思ってたり……これか」


 俺は依頼の養子に目を通した。


 依頼

 村に沸くゴブリンを退治してください。

 ゴブリンが村を荒らしていきます。

 毎晩のように畑や牧場を荒らすため柵やトラップで対抗してみましたが、あまり効果が見られません。

 どなたかお助けください。


 報酬

 五千ゼント


 なるほど宿一泊分か。

 でもこの報酬じゃ大人数でクリアした時に足りなくないか? ソロ冒険者なんてそんなに多くないだろう。仮に三人の小規模パーティだったとしても山分けで大体千七百ゼントだ。一泊分も稼げないんじゃ受けてくれる人いなさそうだが……。疑問に思ったらすぐに聞け! 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥ってね!


「報酬少なくないか?」


「まぁ村から出るお金なんてこんなもんだよ。ましてやゴブリンに荒らされて生活もままならない状態だしな」


「でも受けるんだ」


「ああ。がっつり稼ぐ方法があるからな」


「ふーん……」


 なんか気になるな……。ガイは俺の恩人だし、手伝うのも悪くないかもしれない。がっつり稼げるなら一人増えたところで報酬に問題はないだろうからな。


「俺も一緒にやっても平気か?」


「大歓迎だ! 俺はソロだからちょうど仲間が欲しかったところなんだよ」


 おぉ。ガイはソロだったのか。

 俺は背中にある大剣一本で魔物を相手にするガイの姿を想像して一人興奮していた。いったいどんな戦い方をするんだろうか。


「じゃあ俺も受注してくるな!」


 こうして俺とガイのパーティが結成された。

とおるA「苦手科目はやらずに放置。得意科目は油断して最終日になってから頑張るが間に合わず! つまりどれも間に合わず!」

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