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第50話『Q.初めてのおつかいはいつ?』

 教室へと向かった俺たちはまだホームルームまで少し余裕があったのでステータス値を確認することとした。


 天草とおる

 人族 男性

 lv.13 ランクH

 スキルなし

 HP[25/25] MP[-169/15]

 STR/12 DEX/12

 VIT/11 AGI/9

 INT/3 MND/3

 LUK/10


 うん。やはりMPがマイナス値を示している。どう見てもバグっている。っていうか-169は限界突破しすぎだ。

 そう言えばどっかの異世界転移ものでMP使い過ぎると体がだるくなるっていう設定があったなぁ。まぁ体がだるいんじゃなくてやる気が起きないんだけどね。

 どうやらこの世界ではMPは精神に関与しているようだ。また俺は一つ賢くなってしまった。あぁ天才とは罪よのぉ。それと名前ものなんていうスキルは無かったな。

 まぁそれはそうと今回はダンジョンの雑魚数十匹に加えジャイアントメタルアントとグランドガントレスも倒した。それにしては対してレベル上がってないんだよなぁ。しかもレベル3つ上がってるのに対してステータスは全部1つずつしか上がらないし……ほんとポンコツステータスだな。ん? あ、運が5上がってるぞ! 確かにダンジョン攻略は二度も死にそうになったからな。ついてなかった分溜まったのだろう。運ってそういう感じだっけ? なんか神様に弄ばれてる気がするんだが……。


「それではホームルームを始める」


 そうこうしているうちに先生が教壇の上に来ていた。

 今日の学校は午前中までだ。合宿の疲れを考え、午後の実技を含む授業は二日あけた明々後日かららしい。

 騎士たるもの常に鍛錬を怠るべからず。まぁ実技はないが自分で鍛錬しなさいってことでしょうね。俺は今日この言葉を授業でしっかりと学び取り、ピースへと帰ってから日課である自主トレをいつも以上に行った。

 俺の筋力はステータス値に比例する事なく着実に鍛え上げられていくのだった。





 ■■■





 鍛錬のため外出をしていた俺は、自主トレーニングを終えてピースへと戻った。するとそこには暇そうにしているダグラスさんの姿が。


「ようトール。相変わらず気の抜けた顔をしているが、そんな時は何か自分の好きなことをやるといいっていうぜ!」


「自分の好きなことですか……あ、ダグラスさん今暇ですよね」


「おう。よく分かったな。今俺は絶賛暇だ!」


 いやそんな事堂々と言われても。聞いたの俺だけどさ。


「何で暇なんですか冒険者なら冒険してきて下さいよ。……で、実際何で暇なんですか?」


「それがな、さっきまでエリシアの手伝いをしていたんだが、それが買い出しだったんだ」


 ああオチが見えてきた。恐らく――


「だがどうやら買ってくるものが違ったみたいで、『あんたはもーいいから大人しくしてて』と言われてしまったよ」


 やっぱりか。アレですね。初めての何とやらですね分かります。


「ちなみに何と何を間違えたんですか?」


「え? えっと豚トロと豚バラを……」


「え? それだけ?」


 あの心優しいエリシアさんがその程度で起こるはずがない。恐らく真相はこの答えの先にある。


「いえ、実は他にも……」


 やはりか。


「言ってみたまえ」


「これは何がダメなのかよく分かってないんだが……」


「いいから言ってみなさい」


「山芋を買ってきてくれと頼まれたんだが」


「ふむ」


「街の市場をどれだけ探しても山芋は見つからなかったんだ」


「なるほど」


「仕方なく豚バラを片手に帰ってきたのだが――」





 ■■■





「ただいま」


「ダグラスさんお帰りなさい。豚トロと山芋は買えたかしら?」


 俺がピースに戻った時エリシアはとてもいい笑顔だった。日頃はあまり手伝える時間が取れないためこういう時くらい任せてくれと意気込んだはいいが、俺はお使いを全うすることが出来なかった。だが決して適当に行ったわけではない。男として、冒険者としてここは堂々と振舞うべきだ。


「あぁ、豚肉はバッチリだ!」


 俺が買ってきた手提げバックをエリシアへと渡す。中身を確認しているエリシアに俺はあくまで堂々と事情を説明した。


「ただ山芋が何処にもなくてな……余計なものを買ってきてもいけないと思って山芋は諦めて帰ってきたよ」


「――ダグラスさん」


「なんだ?」


「コレは豚トロじゃなくて豚バラよ」


「え……」


 ま、まぁ誰にだって間違いはある。次気を付ければいいのさ。それにトロもバラも大して変わらないだろう。たぶん。


「山芋は、まぁ不作だったのかしらね。仕方ないわ。次からはトロかバラかをしっかり見て――」


「山芋はなかったけど長芋ならあったんだよな。全く品揃えの悪い市場だよ」


「――ダグラスさん。品揃えが悪いのはあなたの方よ。脳のね」


「えっと……それはどういう?」





 ■■■





「黙ってその長芋を買って来いってことだよ!」


 俺のツッコミでさらに頭の上のクエスチョンマークを増やすダグラスさん。


「だって売ってたのは山芋じゃなくて長芋だぞ?」


「だからその長芋が山芋なんだよ!!」


「…………」


 黙り込むダグラスさんを正面に、俺はエリシアさんの苦労を身をもって味わうのだった。

とおるA「我がスパルタマザーは我を二歳でスーパーに放置してくれたわい。まじ泣いた」

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