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第43話『Q.絵本に出てくる魔物といえば?』

「うおォォォォォオオ!」


 勢いよく侵入した第五階層の階層主がいるであろう部屋。大きなその部屋は体育館ほどあった。人が作り出したということもあり、形は綺麗な円形をしている。奥に見えるのが次の階層への階段だろう。しかし俺の勝どきは敵に届いているようには感じられなかった。見渡す限り空気。俺の勝どきは壁にぶつかり帰ってくるばかりだ。


「何もいない?」


 俺の後ろにいた生徒がそう言った時だった。部屋の中央に転がっていた岩が動いたのだ。

 決してホラー回ではないです。

 その石は次第に大きくなっているように見えた。目をこすりもう一度石を見る。

 やはり石は大きくなっていた。と言うか、すでに岩……いやもーそんな感じではないな。巨大な岩の塊だが五メートルは超えている。


「これはぁ……ほんとに勝てるのかな?」


 岩からは太く力強い腕が四本生えて来ている。ようやく巨大化を終えたその岩は四本の腕で器用に立ち上がると正面についた大きな一つ目を見開く。そして二本の腕を上へと振り上げ強く地面に叩きつけた。その拳が叩きつけられた地面は、揺れとともに大きな爆音を俺たちへと轟かせている。

 しかし俺たちも一方的に威嚇されているわけにもいかない。俺は再び特攻を仕掛けるべく右手に握りしめた剣を高々と上げ、大きな勝どきとともに走り出した。


「怯むな! 行くぞォォォォォオオ!」


 気持ちが乗って来たのか、気合いの入った声とともに俺の後ろを同グループの生徒たちが付いてくる。空気を震わす轟音とともにこちらへと伸びてくる一本の岩の腕。俺たちはそれを旋回するように避けると、叩き込まれた鉄拳により上がる土煙を背に胴体の下を走り抜けた。まずは敵の背後へと入り込み、無造作にその背中を攻撃する。そうすることで意識をこちらへと向け、後続のグループに背後を託すと言うのが俺たちの最初の役目だ。

 岩の魔物はどう言う理屈か腕の位置を変えることなく目のついた胴体だけが縦回転をし、こちらへと向き直る。


「うわきっしょ」


「トールそれはどう言う意味だ?」


「あぁもー俺の故郷の方言だよ。それより攻撃が来るぞ! 全員散らばって攻撃し続けろ!」


「了解!」


 俺たちは順調に役目を果たしていた。





 ■■■





 トールが巨大化する岩へと走り出した。私たちもしっかりと役割を果たさなくてはいけない。


「それにしても、この魔物どこかで見た覚えが……」


「ユナはあの魔物を知っているの?」


 隣に立ち突撃のタイミングを見計らっているのは同じクラスの生徒。普段はそんなに話すことはないけれど、今はレイドを組んでいると言うこともあり積極的にコミュニケーションを取っている。

 私はその魔物を見つめたまま返答をする。


「えぇ。でもどこで見たかが思い出せなくて。いえ、あれは確か小さい頃の絵本に……あっ!」


 そうだあれは『グランドガントレス』と言う岩の魔物だったはずだ。絵本に出てくるそれは大勢の騎士を相手にその巨体を転がすことで踏み潰し回っていた。となると、この包囲作戦は通用しないかもしれない。


「早く伝えなくちゃ」


 私は後ろで待機しているテューの元へと走った。





 ■■■





 岩の巨大化を見て僕は一つの可能性を考えていた。岩の魔物は初めてだが、以前に球体の魔物と対峙したことがある。あの時は魔物の自身の体をボールのように跳ねさせたり、転がしたりすることで動きが加速すると言う能力にひどく苦戦させられたものだ。今回は大きさがその魔物よりも数十倍は大きいし、腕が四本も生えている。何より岩だ。飛び跳ねたりはしないと思うのだが……。

 そこまで考えた時前の方から息を切らしながら走り寄ってくるユナの姿を見た。


「テューみんなに伝えて! あの魔物の名前は『グランドガントレス』。奥の手に腕を収納して転がる攻撃を持っているの」


「やっぱりか……」


「えぇ。だから包囲作戦は逆効果よ。作戦の変更を急いで」


「分かった。トールにはもー少しだけ持ちこたえるように伝えてくれ!」


「分かったわ」


 さて、どうしたものか。自身の体を転がすことで敵を吹き飛ばす攻撃。飛ばされるだけならいいがあの巨体に潰されれば僕たちの体など粉々になり潰れてしまうだろう。一番いいのは回転できないように何か仕掛けを施すことだが……。


「くそっ。時間がない」


 今もトールは先陣を切りあんな危険な魔物に食らいついている。総数十人そこらのグループでいつまでも持ちこたえられるとは考えられない。トールの魔法があればなんとかなるかもしれない。だがトールのMPは常人のそれをはるかに下回る。それをあてには出来ない。


「僕がトールのように魔法が使えたら……」


 俺のMPなら十分にこの戦いの間魔法を使い続けることができる。しかし肝心の魔法が僕は使えない。宝の持ち腐れだ。

 奥歯を強く噛み締めた時、僕は昔戦った球体の魔物をどうやって倒したのかを思い出した。


「そうだ。あの手があるじゃないか!」


 俺は自身の経験を信じ、レイドメンバーへと指示を出し始めた。

とおるA「チュデルキ……おっと危ない。ゴブリン? ハゲ親父かなぁ」

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