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第40話『Q.戦国武将で好きな人は?』

 合宿二日目。

 俺たちは昨日の反省を踏まえ、第四階層で集団戦の練習をしている。クラスの最強四人プラス村一番の少年のパーティは個々が強すぎたせいであまり連携が取れていなかった。取ってはいたが、それは取っているつもりにしかなっていなかったのだ。だから非常事態になるとボロが出る。ここは実力を見せびらかすところではない。どうやら俺たちは一度魔物を退治したことがある経験から調子に乗ってしまっていた様だ。


「さて、次はどんな陣形を試す?」


 パーティの指揮を担うのはテュー。戦争での経験を活かし、臨機応変に指示を出すことができるのはやはり俺ではなくテューの方だった。


「そうだな……鶴翼っていう陣形があるんだ」


 俺は地球にいた頃、勉強で唯一興味を持った戦国時代で使われていたという陣形を提案する。俺の役割はこうしたアイディアを出す役目だ。言わばテューの補佐だな。戦闘ではテューの近くで戦況を見ながら皆んなのフォローをすると言ったところだ。


「どんな陣形なの?」


「V字型に構えて、敵をVの間に誘い込むんだ。誘い込まれたが最後、V字を閉じて蜂の巣にするって言う狙いがある陣形だよ」


 俺の解説を熱心に聞くのはティナ。最高の攻撃力を持つティナはやはり前衛で敵の注意を引くと言うのがセオリーだ。さっきまでもそう言った感じで陣形を取っていた。


「ってことはウチの他にも前衛が必要になるのかな?」


「いや、この陣形は真ん中が持ちこたえられるかがポイントとなるんだ。だからティナは二列目だな」


 鶴翼は敵を囲むまで中衛が持ちこたえなくてはならない。その為そこには敵の攻撃に持ちこたえられるだけの防御力があるものを置かなければならないのだ。


「大将がテューと考えると、もう1人は俺かな」


「なら前衛は私とポールね」


 ユナとポールはその俊敏さを活かすため基本的にはティナの後ろからフォローするという形を取っている。またそれはどの位置にいても柔軟に活躍できると言うことで、次に行う陣形では敵を囲うと言う動きを素早く行わなければならない前衛を任せることとなった。


「じゃあ僕はまた一番後ろなんだね」


「あぁ一応囮みたいな役目でもあるから目立ってくれよ!」


「はいよ。目立つのは得意だから任せて!」


「確認するぞ。V字の最後尾はテュー。目立って敵をおびき寄せる囮だ」


「やっぱり囮なんだね」


「囮だけど、それは大将だからだ。ちゃんと指示頼むな!」


「はいよ」


「二列目のティナと俺はテューよりの少し外側に陣取り陣形に侵入してきた敵を食い止める」


「了解!」


「最後に最前列のユナとポール。俺たちが食い止めている間に敵の退路を断って背後から攻撃してくれ」


「分かったわ」


「オーケー」


「最前列が目立つと敵がテューに寄ってこない。なるべく幅をとってテューから離れていてくれ」


 こうして俺たちは新しい陣形『鶴翼』を試すこととなった。





 ■■■





「やあぁ!」


 背後から剣を突き刺された蜘蛛型の魔物が煙となり消えていく。そこには魔石と反響する声だけが残っていた。


「ナイスユナレア!」


「テューもいい囮だったわ」


「あんまり嬉しくないなぁ……」


 今の俺たちはそんな会話ができるほどに余裕があった。決して個々が暴れまわっている結果ではない。しっかりとした陣形を取り、テューが的確な指示を出すことによって生まれた余裕だ。


「今ならいけるんじゃないか?」


 ポールが言っているのは昨日俺たちが尻尾を巻いて逃げ出したメタルアントの巣のことだ。しかしそれに対する俺の答えはノーだ。どうやらそれはテューも同じのようで、間を開けることなく否定している。


「厳しいと思う。あれは陣形云々というより数の問題だ。陣形のことでいうならあれを突破するためには五人で組める陣形では不可能ということだよ」


「まぁそんなに焦らなくてもいいじゃん? 五階層突破にあそこの攻略は含まれてないしさ!」


 しょんぼりとした様子のポールに俺は優しく声をかける。ポールも考えを改めたようで俺の言葉を聞いて一つ頷くと張り切った様子で体を伸ばし始めた。


「さて、あの巣は行かないにしろそろそろ五階層に入っても良さそうだね」


 その言葉に従い、俺たちは再び魔の五階層へと足を踏み入れた。魔力が濃くなるこの感じ。昨日のことなのにどこか懐かしく、そして恐怖を感じる。

 俺たちは深呼吸をし覚悟を決めると、前へと一歩を踏み出した。

とおるA「黒田官兵衛。略してクロカン!(とおるの所属していた部活名)

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