第37話『Q.死亡フラグの立て方は?』
「みんな! 囲まれてちゃやられる。壁を背に戦うんだ!」
この部屋に入った時点で入り口は封鎖されてしまった。奥の出口に行こうにもむしろそっちの方がメタルアントが大量にいて行けそうにない。俺たちはメタルアントの攻撃をかいくぐりなんとか壁のある場所までたどり着いた。あとは横に移動して入り口へと戻るだけなのだが……
「だめだ。数が多すぎる」
「クラス一位がなに泣き言言ってるのよ! 私より強いんだから私よりたくさん倒してもらわないと困るんだからね!」
「はいはい。で? 次はどうしたらいいの?」
なんだかんだ言って俺たちはメタルアントの群れを相手に未だ致命傷負わされていなかった。それもこれも率先してメタルアントに攻撃を当てに行っているテューとティナのおかげだ。しかしどうやら二人の手数も足りなくなってきたようで、テューが俺に指示を煽ってきている。
お前の方が頭いいだろうに……参謀なら作戦立ててくださいよ。
「取り敢えず横に移動しながら入り口を目指そう。ここからじゃ遠くて強引にも突破できそうにない」
「そうね。私もそれがいいと思うわ」
これにはユナも同意のようだ。俺たちは壁と仲間を背に目の前の敵に集中した。
「行けるよ!」
ポールの合図で俺たちは少しずつ横に移動する。戦闘に慣れていないポールの役目は戦況を見て入り口に向かって移動するタイミングを支持することだ。あと、みんなのカバーもして貰っている。
今もテューに集中していたメタルアントの数匹を県で突き飛ばしている。
ヘイトを買っているのはやはりテューとティナのようだ。明らかに二人に対するメタルアントの量が多い。そのおかげもあり俺は未だ無傷なのだが……テューはそろそろ限界がきているように見える。
そして、自体は最悪の展開を迎える。
大きな地響きがなったと思えば、こちらへと向けられる強大な敵意。煙の中から姿を見せたのは――
「まさか、ジャイアントメタルアント!?」
絶望感に満ちた表情でその名を口にしたポール。名前と見た目から察するに、このメタルアントたちのボスというところだろう。
大きな顎をガチガチと当てて音を鳴らして威嚇する様子から、巣を荒らされたことへの怒りが伝わってくる。もう逃がしてはくれないだろう。
動き出したジャイアントメタルアントは他のメタルアントほど素早い動きではない。だが、威力が桁違いだった。
「変われ!」
ジャイアントメタルアントの一撃で剣を弾き飛ばされてしまったテュー。俺はすかさず間に入ると、無理矢理にメタルアントの注意を引こうと剣を横いっぱいに振ってやった。
「トールのステータスじゃすぐに死ぬ! 無茶だ!」
そんな心配をするテューに俺は笑って返すのだ。
「まぁ見てなって! ステータスなんて気合と根性の前には些細な違いにすぎないことを俺が証明してやるからよ!」
周りを見ればティナもユナもボロボロだった。やはり俺の攻撃力じゃ大したヘイトは変えていなかったようだ。
俺は情けない自分への感情を乗せ、地面にめがけて取って置きを放った。
「ライトニングボルト!!」
薄暗いダンジョン内で魔法がバチバチと光を放つと、驚いたメタルアントが一斉に数歩後ずさった。ジャイアントメタルアントは一瞬動きを止めただけだ。
「かかって来いやクソアントども! 俺が相手にやってヤラァ!」
叫ぶと、メタルアントたちは標的を俺へと変更したのがわかった。どうやら剣より魔法の方がヘイトを買うようだ。俺は入り口と逆の方向へと移動し、みんなが脱出できるように注意をそらす。
「トール無茶よ!」
心配するティナの声が聞こえてくる。
「待ってトール」
ユナが俺に手を伸ばしている。照れるじゃねえか。
ついでに男子どもの声も聞こえてくるな。
今の状態明らかに死へと向かっている。確かに俺のステータスじゃどうにもならないかもしれない。でもみんなを逃がすことくらいは出来るはずだ。
「俺が注意を引いているうちに早く!」
「くそ、死ぬんじゃねえぞ! すぐ救援を呼んできてやるから!」
そう言ってテューは入り口から出て行った。ティナも抵抗するユナを引っ張りながら入り口から出て行くのが見えた。ポールも目に涙を浮かべながら巣を出て行く。
「さて、これ明らかに死亡フラグ立ってるけど……どーしようかねぇ」
俺はボソボソと文句を吐きながらジャイアントメタルアントへと飛びかかった。
とおるA「俺、この戦いが終わったから告白するんだ!」





