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第36話『Q.仕事がないときに注意することは?』

「それではこれよりキャンプのために必要なものを配る。各自持って行き、拠点を設置すること」


 先生の指示を受けた俺たちは迅速な準備を行い、数分後には拠点を設置し終えダンジョンへと入る準備を整えていた。

 今回のダンジョン攻略は五人一組で行われる。もちろん俺たち四人は同じパーティなのだが――


「よ、宜しくお願いします!」


「宜しくな! ポール!」


 クラス最強の四人と同じパーティという事に尻込みしているのだろうか、おどおどした様子でこちらへやって来たのは丸ボウズ君ことポール君だった。





 ■■■





「でもダンジョン攻略なんて、なんだか冒険者みたいね」


 そう言いながらグイグイと前進して行くのは我らが最高の攻撃力の持ち主ティナだ。女の子を前衛にするのはどうなのかというのも考えはしたのだが、ティナ本人が前衛をかって出たためこうして先頭を行ってもらっている。


「そうだね。実は私もちょっとワクワクしてたの」


「僕もダンジョンは久しぶりなんだよねぇ〜強力な仲間がいて心強いよ」


 ティナのすぐ後ろにつけているのはユナとテュー。素早い動きと的確な状況判断ができる二人が前衛のカバーをする役割だ。

 っていうかテューはダンジョン経験者だったのか。


「敵が来た時の指示は任せたよぉ〜」


「はいはい。頑張るよ」


 テューの気の抜けた言葉に軽く返事をする俺の役割は観察だ。前の三人ほど戦闘力の高くない俺は決闘やシャドウウルフとの戦いで見せた観察眼を活かすべきだという意見の元、三人の後ろで周囲の警戒に当たっている。そして新メンバーのポールはそんな俺たちが感心して前進できるように後方を見張る役目を担っている。地元一の高速の剣で俺たちの背中は守られているし、安心だな! ……多分。


 そうして進んでいき三十分が経過した頃、俺たちは授業で習った魔物との戦闘を数回繰り返していた。弱点を予習し、実技の授業で対処や連携の訓練を行っていたおかげもあり、俺たちは難なく第一階層を突破。第二階層へと足を踏み入れるも、あっという間に攻略し終え第三階層へと到達していた。


「ポールゥ〜なんか俺たちやることないね」


「そうだね。たしかに前衛の三人が強すぎて僕たちの出番はなさそうだ」


 グイグイ進んでいくティナは得意の剣撃で現れた魔物をモノの数秒で消滅させていた。少し苦戦する敵が出てきても後ろの二人が光の速度でカバーに入るため俺たちのやることはドロップした魔石を集めることくらいだった。


「お前ら喋ってないでちゃんと警戒しててくれよぉ〜」


「うぇーい」


 俺はテューからの警告にいつものごとく適当に返す。なんだか俺の返事についてそんな返事聞いたことがないなど言っているように聞こえた気がしたが聞こえてないふりをしておこう。

 そうして到達したのは第四階層。ここまで来ると道は少しばかり入り組んでいる部分が出てきているようだ。本当にたまにだが、分かれ道から現れた魔物が背後から攻撃をしてきたりしたのだが、さすがは地元一の剣と自称するだけはある。一突きで魔物を倒してみせた。俺のやることはますますなくなるばかりだ。

 危なげなく迎えた第五階層。だがここまでなんの苦戦もなくやってきた俺たちだったからこそ、ここで大きなミスを犯してしまう。


「おい、数が多すぎないか?」


「やばいわね」


 第五階層に降りた時に感じたのは魔力の濃度の変化だ。明らかに一段階濃くなっている。それはつまり魔物の強さがこれまでより一段階上がったということだ。更に第五階層は他の階層と比べて明らかに道が入り組んでいる。歩いた距離からもこの階層だけ格段に広いことが伝わってきていた。

 俺たちは少し休憩しようと、ちょうど見えてきたひらけた場所へと入ったのだが、どうやらそこはメタルアントの縄張りだったようで、俺たちは今数十匹のメタルアントに囲まれている。

 ここまで順調すぎたことで見落としていた。ダンジョンのひらけた場所にはこういうことが多いことは俺は知っていたはずなのに……。

 じりじりと距離を詰めて来るメタルアントの群れ。四方八方を囲まれた俺たちはまさに絶体絶命というにふさわしい状況だ。


「泣き言言ってても仕方ないわ! 一匹ずつ倒していきましょう!」


 少し慌てた様子を見せるテューとティナに喝を入れたのはユナだ。ユナは意外とこういうピンチの時にこそいつもよりも気合が入る。精神面ではこの中で一番強いのかもしれない。

 覚悟を決めるパーティメンバーの目を見て、俺もまた地球で得たものを思い出していた。





 ■■■





 やばい。やばいやばいやばい。足が震える。こんな経験は初めて。どうしたらいいの……? 私より強い二人ですら動揺を隠せていないこんな状態で、私に、こんな臆病な私に何ができるのだろう……。

 多分私はこのパーティの中で一番こう言った予期せぬ事態に弱い。自覚があるからこそ、私の脚はガクガクと震えていた。しかし助けを求めるように振り返った時、私の心は平常心を取り戻した。

 目に移ったのはトールの諦めない瞳。私より弱いのに、彼はこんな絶望的な状況でも諦める様子は一切なかった。その瞳はまっすぐに勝利だけを見ているようで……私より弱い彼は、やっぱり私の王子様だった。


「泣き言言ってても仕方ないわ! 一匹ずつ倒していきましょう!」


 その言葉はみんなにかけた言葉であり、私自身にかけた言葉でもあった。

 そうだ。まだ諦めるわけにはいかない。ここを乗り越えて、私は誰もが認める騎士になるのだから。

 私たちは決死の覚悟でメタルアントとの交戦を開始した。

とおるA「余計な仕事を押し付けられないように景色になること!」

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