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第35話『Q.お気に入りのダジャレは?』

 瞼越しに眩しい光を浴びていることがわかる。暖かな日の光に起こされるように俺はベッドから起き上がった。

 合宿の告知から一週間。ついに訪れたその日はまさに合宿日和というべき晴天だった。


「さて、準備を始めますか」


 俺はいつも通り部屋の掃除から始めお店の仕事を手短に終わらせると、昨日から準備していた合宿用の荷物をまとめ宿を後にした。





 ■■■





「おはようあまとう。バナナは持ってきたかい?」


「いつまでそのネタ使うんだよ」


「いつまででも」


「そんなバナナ……」


 集合時間の十五分前。俺たちは待ちに待った合宿に想いを馳せながら、校門の手前に整列をしている。

 俺が到着して最初に話しかけて来るのはいつも通りテューだった。この世界にないものをよくここまで覚えていられるものだと、今俺は目の前のこいつに感心しているところだ。その意を込めてダジャレで返してやったのだが……盗み聞きしていた周りの生徒も含め、何故かみんな笑いが堪えきれないというように肩を震わせている。


「あまとう。お前天才だわ」


 そう言ったテューの顔は本気だった。

 こいつら本気で今のダジャレに笑っているようだ。先人よ! これが異世界だ!

 そうこうしているうちに予定していた時間がやってくると、俺たちは先生の指示の元馬車へと乗り込んだ。


「そういえばあまとうステータス上がってたか?」


「あぁそういえばまだ見てなかったわ」


「え?なになになんの話ししてるの?」


 馬車は八人一組になり乗車することとなった。もちろん俺たち四人は同じ馬車だ。テューに聞かれるまで忘れていた俺はポケットから冒険者カードを取り出す。ティナは興味津々という様子で俺の冒険者カードを凝視しているのだが――


「ティナ冒険者カード知らないんだね」


「ええ知らないわ。これが冒険者カードと言うのね」


 俺はカードの裏にあるポイントに指を当て魔力を注ぐ。するとウィンドウのようなものが出現し俺からはステータスが見えるようになる。周りの人にはただ青いウィンドウが出てきたようにしか見えないのだが、俺が二本の指を揃えてティナの方に振るとそのウィンドウはその方へと回転し、ティナの目の前で静止した。


「こ、これは何?」


「ステータスだよ。え?ティナステータス知らないの?」


「ステータスってのは冒険者特有の風習っていうか……騎士にはそう言うのあんま関わりないんだよ」


 この世界についてティナより知っていることがあったなんてと驚いている俺に事情を説明してくれたのはいつものごとくテューだった。こいつは本当になんでも知っていやがる。

 どうやらステータスは冒険者登録をしてカードを手に入れなければ見れないらしい。まぁ他にも少しだけ方法はあるらしいが、一般的には冒険者カードからしか確認できないんだとか。テューは冒険や強くなる過程を楽しむ冒険者の特徴が出ているものだと言っていた。ちなみに騎士はステータスなんぞより自分を常に磨きなさいと言う考え方らしい。

 その様子を見ているユナはあまり驚いた様子がない。どうやらユナは知っていたようだ。


「それにしても、なんて言うか……」


「ティティやめるんだ! その先を口にしたら――」


「どうしよもうなく低い数字ね」


「はい。ごもっともです」


 俺は肩を落としながらステータスを再確認する。


 天草とおる

 人族 男性

 lv.10 ランクH

 スキルなし

 HP[22/22] MP[11/12]

 STR/11 DEX/11

 VIT/10 AGI/8

 INT/2 MND/2

 LUK/5


 よかった。またステータス減ってたらどうしようかと思ったよ。相変わらずのクソステータスだけど、まぁそこは気合と根性でなんとかするしかないね!





 ■■■





 たどり着いたのは崖の真下。見上げれば果てしなく続く岸壁。目の前には洞窟の入り口。人工的に作られたとは考えにくい見た目なのは当然のこと。ここはダンジョンの入り口。つまり魔物たちの住処だ。

 ダンジョンは下へ行くほど魔力の濃度が高くなり、それを求めて魔物たちは下を目指す。しかし全ての魔物が下へと行けるわけではない。ある者は高すぎる魔力濃度に耐えかねて、またある者はそこを縄張りとする魔物に行く手を阻まれ、下へと続くことが叶わない。

 つまり下の階層に行けば行くほど魔物の強さが上がると言うこととなるのだ。

 馬車を降りた俺たちは、洞窟の中から漂う魔力に唾を飲み込むのだった。

とおるA「花と話す俺! 店頭で転倒する俺!」

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