第30話『Q.MPってどうやって回復させるの?』
「もぐもぐ……お昼は意外と暇ですね」
本日のメニュー、パスタとスープ。シンプルだが美味しい。本日はグルメリポート回では無く魔法研究回なので以下略。
……え? だめ? 頼むよ。俺の脳内解説を文字に起こしてる人がめんどくさいって言ってるんだよ。いいよね? ……よし。
「そう言えば今日は魔法の研究するって言ってたな。どうだ? 順調か?」
ダグラスさんが早くも食事を終えて、背もたれに寄りかかりながら話題を振る。回答者はとおるさんです。宜しくお願いします。
「はい……と言いたいところですけど、MP切れで研究が行き止まっちゃいまして……」
情けないという風に頭を書きながら話す俺に、エリシアさんは質問を重ねてきた。
「MPが無くなったということは、魔法が使えたということですか?」
「はい。先生に教えてもらった初級魔法と、もう一つもっと簡単な魔法を試してみました」
両手を胸の前で揃えて「あらまあそれはすごい」と言いそうな表情のエリシアさん。違うな。これは見せて! という合図だ。
「あ、MP回復したらお見せしますね」
「是非お願いします」
「楽しみにしてるぜ」
苦笑しながら魔法の披露を約束する俺。オルロッツ夫婦は俺が困っているのに気づいていないのか、はたまた魔法に興味がありすぎるのか分からないが、それはそれは良い笑顔だった。
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さて、食事によるMP回復はあったのか。確認していこうと思う。
冒険者カードに魔力を注ぐ……事が出来ない。つまりMPは回復していないということか。
ステータスを表示するために注ぐMPは1。ヒーリング、アイスボルト、ファイアボルト、ライトニングボルトを一回ずつ。それとザップ一発。恐らくだが、初級魔法四つはMP消費2で、ザップは1なのだろう。そう考えれば最大10ある俺のMPが丁度空になる。
「では、検証がてら昼寝でもしますかね」
独り言を小さく吐きながら、俺はベットへと体を運ぶ。
MPが無くなったと何と無くだが疲労感が増すんだよな。
俺はベットと布団に挟まれ、布団の適度な重みが体をマッサージするような感覚にとらわれながら、浅い眠りに入っていった。
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カタンッ――。
「はっ!!」
決して誰かに起こされたわけではない。今聞こえた音は外を歩く人が荷物を落とした音だ。何を思って飛び起きたのかというと、その音が台所の音と思い、夜まで寝過ごしてしまったのかと勘違いしたのだ。
部屋に取り付けられた時計の針は午後三時を指している。二時間ちょっと寝たようだな。
俺はベットから降り、床にあぐらをかいて座ると、ポケットから冒険者カードを取り出す。
「さて、問題のMPはどうかな……」
俺は恐る恐る冒険者カードをなぞり、魔力を注ぐ。ステータス画面は――無事表示された。
よし! 成功だ。
表示されたステータスには、
MP[9/10]と記されている。つまり全回復だ。俺は睡眠をとることでMPを回復できるという事実を知った。
しかし、これは戦闘ではなんの役にも立たないな。まさか戦場の真っ只中で寝るわけにもいかないし……いや、むしろバレない? ――な訳ないね。
さてさて、おふざけもここまで。いよいよスマホの充電に取り掛かる。っと、その前に、アレやっとこうぜ。ニヒヒ。
「隊長! 我々はこれより、特別任務『スマートフォンの充電』に取り掛かります! ……そうか。くれぐれも安全第一でな。……やさしきお言葉、誠にありがとうございます。必ずや成功させて見せますゆえ、どうか最後まで見守っていてください。いくぞー! えい!」
……はい。くだらない茶番にお付き合いいただき、それこそ誠にありがとうございました。この茶番劇は、四トリーと、ご覧のアホの提供でお送りしました。
「ライトニングボルト!」
いきなり賢者モードに入り、数秒前の行為が恥ずかしくなるあるあるを脳裏からかき消さんとばかりに放つ、覚えたての魔法。
ここでもう一度おさらいしよう。魔法に大切なのはイメージ。使用者のイメージの違いで、同じ魔法でも、その性質を大きく変える。らしい。
俺が今イメージしているのは攻撃用のライトニングボルトでは無く、スマホの充電のためのライトニングボルト……なんだかライトニングボルトに申し訳なくなってきた。しかしながらそれは仕方のないことなのだ。
話を続けよう。イメージせよ。細く長い電気。基本的にスマホの充電に使用する電力は大体10.5W。一時間半かかるらしいが、それ以上の電力を注ぐと発火する恐れがある。つまり、なるべく少しづつ、そして長い間ライトニングボルトを流し込まなければならないのだ。
「――お! ついた! ついたついた!」
子供のようにはしゃぐ俺。……いつも通りですね。しかしそんな喜びもつかの間、感情はすぐに一変する。正直なまらだるい。頭使うけど疲れるし、それしかやることないし、ひたすらスマホとにらめっこ……。
にらめっこを始めて三十分。ついにMPが切れた。一度のライトニングボルトで、七から八分間電力を流すことに成功していたが、またしてもクソ雑魚ステータスにフル充電までの道を阻まれてしまった。
「今四時ちょっと前か……流石にもう一体寝たら今度は夜ねれなくなるよな」
時計を見つめ、MP消費が厳しいことを悟ると、俺は久しぶりの電源の入ったスマホに飛びついた。もちろん最初に開くのは写真! 異世界なんて珍しい光景、撮っておかない手はない。だが使い過ぎは禁物だ。なんせバッテリーは三分の一を示している。必要最低限の時間で珍しい物だけを写すと、即座に電源をオフに。そしてポケットへと運ぶ。
そろそろお夕飯の支度の時間だ。明日不在の分、今日は少し多めに働かなくちゃな。
俺はゆっくりと立ち上がると、部屋から出て自分の仕事に加えエリシアさんの分の仕事もやらせて貰った。
そうこうしているうちに夕食の時間がやってき、お昼に約束した魔法の披露は、残り1のMPを使い『ザップ』を見せることで二人とも満足をしてくれた。
そしてあっという間に時間は流れ、就寝の時間。明日はいよいよテュー達と異世界観光。俺は遠足前日の小学生のように心を躍らせながら、布団の中へと潜り込んだ。ムクムクっと顔を出し、目を閉じる。
――明日はいい日になりますように。
心の中でそう唱え、俺は意識を手放すのだった。
とおるA「マッスルポイントは回復などさせない。ただ鍛えるのみ!!」





