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第26話『Q.初めての一人称は?』

「僕は、六歳の時にベ・ロットリー公国に細作……つまりスパイとして送られたんだ」


 僕の一人称があまとうやみんなの様に俺では無く僕な理由。それはスパイとして敵に警戒されないためだ。男子は皆何故俺と言うのだろうか……それは、僕と言うより俺と言ったほうが強くてかっこよさそうだからだ。まぁ実際には関係ないのだが、事実この世界にいる多くの男子は自分の事を俺と言う。

 しかしそれは逆に言うと、自分を僕と言う事で他の自分を俺と呼ぶ人間よりも弱々しさ、若しくは可愛さを出すことができる。別にぶりっ子と言うわけではない。スパイとして、必要なことだったのだ。

 最初は男子として、僕も俺と言いたいと思っていたし、僕と言うと無能な貴族の息子みたいで嫌だった。でも今では何の違和感もなく自分の事を僕と呼べる。慣れとは恐ろしいものだ。


 僕からの衝撃の告白に、事情を知らないティティとあまとうはどう反応していいかわからない。と言った風に困惑した表情をしている。僕は構わず話を進めた。


「向こうでは主に敵の動きの監視、情報収集をしていた。六年前かな十一歳の時だった。公国側に動きが出てきたんだ。得られた情報は少なかったが、そこから推理し僕の最適と思える作戦を立てて王国に手紙を送ったんだ」


 まるで別の世界の話でも聞いているかの様に眉間にしわを寄せて難しそうな顔で僕を見ながら話を聞いているティティとあまとう。だがこの話は実際の出来事。作り話でもなんでもない。

 ちょっと重い空気になりつつあるし、後でジョークでも入れてみようかな。


 その後も僕は向こう(公国)に送られてからこちら(王国)へ戻るまでの約十年間について話した。

 自分の過去について話した事など今までになかった俺にとって、今日のこの出来事は大きな変化だと思っている。まだ会って一週間と立ってはいないが、生まれて初めて出来た信頼できる仲間(友達)に話すことが出来て良かったと思っている。きっかけをくれたユナ様には感謝しなければな。

 ちなみに、話の最初はいつも通り冗談やおふざけ交じりで話していたが、余りにも笑ってくれないので途中でやめた。


 一通り話を終え、呆気にとられた二人の意識を戻すためにパチンッと手を一つ叩く。

 すると、我に返ったあまとうがようやく口を開いた。


「つ、つまり、最初は敵国から仕入れた情報お元に作った策があまりにも的確だったから『細作の策士』だったけと、その五年後の去年の対戦では、戦場でも予想以上の活躍をしたから『細作の参謀』になったと……」


 その通りだ。よく聞いておられた。さすがは我が相棒だ。俺はうんうんと二回首を縦に振る。


「そのようですね」


「テュー。そのイントネーションは某サッカー選手に怒られるからやめなさい」


 さっかー? せんしゅ? またあまとうは訳のわからない事を言っている。

 窓の外を見ると、雨はすっかり止んで眩しい日の光が差し込んでくる。本当に止みやがった。あまとうはなんですぐ止むってわかったんだろう?


「さ、雨も上がったみたいだし、そろそろ帰りましょ!」


 僕たち四人にしては暗い空気がそこにはあったが、ユナが笑顔でそう言うと、夜が明けて朝日が昇ってきたかのようにそこの空気は明るくなった。やっぱこう言うところでカリスマ性が出るよな。流石は次期――。





 ■■■






「じゃあ、また明日な!」


「また明日ー」


「バイちゃ」


「バイちゃ」


 雨雲が通り過ぎ、眩しい日の光が水たまりに反射して地面をキラキラと輝かせている。

校門を抜け、僕たちは丁度それぞれの家へ帰ろうとしているところだ。

 あまとうとユナレアは相変わらず意味の分からん挨拶だ。でもなんでだろ。なんかすごく楽しそうだ。僕も今度言ってみようか……。


 ユナレアとティティと別れた後はいつものようにあまとうと二人で呑気な男子トークだ。水たまりを勢いよく踏み付けて、子供のようにバシャン! とさせながら歩くあまとう。


「そう言えばさ、なんでみんなは知らないお前の二つ名、ユナは知ってたんだ?」


 あ、それ考えるの忘れてた。なんで誤魔化そうか……まぁ適当でいいか。

 俺はあんまりよく知らないと言わんばかりに、わざと微妙に考え込んでから答える。


「んーなんでだろうな、たまたまその場に出くわしたとか?」


「たまたま戦争のど真ん中にいるアホがどこにいるんだよ」


「ですよねー」


 ちっ。ダメか。ならば……あ、いいの思い付いた。


「適当に二つ名あるんじゃねって思って言ってみただけじゃ――」


「んなわけねぇだろ。どんな偶然だよ」


 何故だぁ。俺の渾身の誤魔化しが効かないだと……奴は心が読めるようだ。否、嘘が見抜けるようだ。


「まぁいいじゃないか。それよりさ、どうだった決勝戦! 僕は強いだろー?」


「あぁそうだな。ムカつくまでに強かった」


 こんな自慢したりするのはあまとうとティティだけなのだ。他の人にやってもただのうざい奴だからな。あまとうになら大丈夫。ツンデレさんだからね。


 その後も楽しくお喋りをしながら十分程歩いたところで俺たちは別れた。


「さて、今日は何して遊ぼうかな」


 俺はそう独り言を言いながら、残りの帰り道を歩き始めた――。

とおるA.「とーってよく言ってたかな。とーね! 今日テストで100点とったんだよ! って。でもここで困った方があってさ、友達のとーちゃんとよく間違えて返事してた。はい。どうでも良いですね」

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